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昨日の君に、さよなら  作者: WW
第3章
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失う君に、何度でも 4

 足が重い。

 トラックを半周した時点から足が鉛のように重くなった。それでも動かし続けた。それなのにまだ終わらない。


 横に並ばれた最後の直線。

まるでスローモーションのように、足がゆっくりと前へ踏み出される。自分の足ではないみたいでもどかしい。


 ダメだ。抜かれる。


 もっと。もっと速く。

 動け。動け。動け。動け。動け。


 あと少し。もう少し。

 このまま。

 動け。もっと前に。


 足だけではない。全身が怠い。今すぐに倒れ込みたい。


 ダメだ。まだ。

 まだ。


 踏み出した足から力が抜ける。


 嘘、どうして。


 あと少しで。

 膝が折れる。片足が前に出ない。


 ダメ。お願い。


 地面が近づく。

 無様でもいい。


 それでも――


 静香は倒れ込みながらゴールラインへ飛び込んだ。



 *



 悲鳴が上がった。


 静香がゴールに倒れ込み、秋月はその横を走り抜けていく。

 静寂。観客は息を呑む。誰もが祈っていただろう。

 一番のフラッグを持った生徒が二人の方へ寄った。手には一番と書かれた紙がある。


 その紙を渡されたのは――秋月だった。


 隣にいた京子が悲鳴を噛み殺して飛び出した。その後を孝多が追う。

 雅也は二人に目もくれず、ただ静香の姿を見つめていた。


 周りの生徒に起こされ、立ち上がる。ふらふらの足取りで彼女は連れられていく。

 両手で顔を覆う姿が痛々しく、雅也は顔を背けた。


 彼女に渡された紙は二番だった。


 一位じゃなかったら、きっぱり諦める。その約束が決まった瞬間だった。


 誰よりも自分がその結果を望んでいたはずなのに、雅也はちっとも嬉しくなかった。手のひらに痛みが走る。いつのまにか強く握りしめていたようで、爪痕が赤く滲んだ。

 深く息を吐き出して、椅子に座り込む。


 次の組がピストルの音でスタートする。

 知らない顔が目の前を通り過ぎていく。その光景をただ傍観していた。目に映っているのは彼らの勝負ではない。一つ、また一つと数を減らしていく。

 それは心の準備のためのカウントダウンに過ぎない。


 すべての組を見届けてから、雅也は重い腰を上げた。

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