失う君に、何度でも 4
足が重い。
トラックを半周した時点から足が鉛のように重くなった。それでも動かし続けた。それなのにまだ終わらない。
横に並ばれた最後の直線。
まるでスローモーションのように、足がゆっくりと前へ踏み出される。自分の足ではないみたいでもどかしい。
ダメだ。抜かれる。
もっと。もっと速く。
動け。動け。動け。動け。動け。
あと少し。もう少し。
このまま。
動け。もっと前に。
足だけではない。全身が怠い。今すぐに倒れ込みたい。
ダメだ。まだ。
まだ。
踏み出した足から力が抜ける。
嘘、どうして。
あと少しで。
膝が折れる。片足が前に出ない。
ダメ。お願い。
地面が近づく。
無様でもいい。
それでも――
静香は倒れ込みながらゴールラインへ飛び込んだ。
*
悲鳴が上がった。
静香がゴールに倒れ込み、秋月はその横を走り抜けていく。
静寂。観客は息を呑む。誰もが祈っていただろう。
一番のフラッグを持った生徒が二人の方へ寄った。手には一番と書かれた紙がある。
その紙を渡されたのは――秋月だった。
隣にいた京子が悲鳴を噛み殺して飛び出した。その後を孝多が追う。
雅也は二人に目もくれず、ただ静香の姿を見つめていた。
周りの生徒に起こされ、立ち上がる。ふらふらの足取りで彼女は連れられていく。
両手で顔を覆う姿が痛々しく、雅也は顔を背けた。
彼女に渡された紙は二番だった。
一位じゃなかったら、きっぱり諦める。その約束が決まった瞬間だった。
誰よりも自分がその結果を望んでいたはずなのに、雅也はちっとも嬉しくなかった。手のひらに痛みが走る。いつのまにか強く握りしめていたようで、爪痕が赤く滲んだ。
深く息を吐き出して、椅子に座り込む。
次の組がピストルの音でスタートする。
知らない顔が目の前を通り過ぎていく。その光景をただ傍観していた。目に映っているのは彼らの勝負ではない。一つ、また一つと数を減らしていく。
それは心の準備のためのカウントダウンに過ぎない。
すべての組を見届けてから、雅也は重い腰を上げた。




