帰宅 side夜白
住宅街の中の、ごく普通の一軒家。古くも新しくも、大きくも小さくもない。俺の住む蘭月家。
解錠したドアを引き、中へと入る。普段と変わらない行動だ。
「ただいま」
誰もいないのに、それを言うのも、普段と変わらない。
「お帰り。兄貴」
「えっ!?………」
だが、今日は違った。返事があった。予想もしなかった返事が。まぁ、有ろうが無かろうが、正直どうでもいいが。
「アキか……。部活は?」
「今日は、サボってきた」
兄として妹、暁のサボりを許してはおけない。
「サボってきたじゃないだろ。キャプテンだろが」
「キャプテンと言っても、必要とされてないけどね……」
アキが少し暗い表情になる。
「まぁ、いい。明日からは行けよ」
「わかってるよ。……でも、サボったのは………。」
そんな顔をされれば、責める気なんかなくなる。
「わかってるならいい。それより、その後なんか言ったか?」
聞くと、アキは顔を赤くして顔を左右に振るだけで答えた。
反応から察するに、絶対何か言っていた。まぁ深く追求はしないが。
「そそ、そんなことより、御弁当箱」
「ん?あぁ、ちょっと待て」話の転換が若干無理矢理な気がするが、あまり気にしないでいこう。
手に提げた鞄から弁当箱を取り出し、アキに手渡す。すると、
「どう、だった?……」
そう聞いてきて、じっと見つめられる。
「美味しかったぞ。流石、自慢の妹だ」
「そう。……よかった」
答えは半分嘘なのだが、アキは悪くないからな……。
「そんな事聞くなんて、珍しいな」
普段は、美味しいかどうかなんて聞かない。おそらく原因は……。
「昨日、すごく残ってたから。ダメだったかなって……」
「昨日は、色々あって食べられなかった。せっかく作ったのに、御免な」
「そうだったの?それならいいけどさ」
それで会話は終わり、俺は一階廊下奥の階段を使い二階へ行く。アキは、一階にあるリビングへと入ったようだ。
二階には、俺、アキ、両親の三つの個室がある。俺の部屋は、階段から一番遠い右奥の一室だ。
部屋に入り、最奥にあるベッドへと横たわる。疲れた。本当に疲れた。
◆◇◆◇
「兄貴。起きて」
「………。アキ?」
ぼやけた視界にアキが映る。
「俺、寝てたのか」
体を起こして時計を見ると五時半になっている。たしか、家に帰ってきたのが四時半頃だから、およそ一時間寝ていたことになる。
「まぁ、ストレス解消には睡眠もいいか」
「ストレス。……兄貴、やっぱり何かあったんだね」
アキが言ってくる。
「全部、話して」