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守るために side夜白

「姫百合さん!!」

教室のドアを開けると同時に叫ぶ。それに、全員がこちらに目を向ける。その中には当然彼女も含まれているわけで

「蘭月、君………」

潤んだ瞳が、屋上にいたときとは明らかに違う感情が、目にはいる。

そんな彼女を見て、急いで駆け寄って………いる途中に

「大丈夫だった?蘭月君」

「私達が教え込んでおいたからね」

あの声が道を塞ぐ。今日三度目のこいつら二人の発言は、もう無視できない。だから、全部終わらせてやろうと思う。

「ありがとう。ただ、少し言いたいこともあるし開けてもらえる?」

そして、姫百合さんの前まで来る。その目からは涙が溢れ出しそうになり、表情には驚きが現れる。

椅子に座る姫百合さんに顔高さを合わせ、彼女の耳元で囁く。

「ごめんね。姫百合さん……」

「どういう、意味……?」

溢れ出す涙。

「ごめんね」

それを見て、もう一度言ってから背を向ける。


◆◇◆◇


「蘭月君さ。彼女とかいるの?」

翌日の昼休み。今日の昼食は三人で食べている。昨日の二人組と三人でだ。

「いませんよ。いたこともありませんし」

「ふーん。結構かっこいいのにね」

一日とはいえ、かなり好感度は上がった。なら多分、大丈夫だろう

「それよりも、一つ相談があります。大切な相談が」

「大切な相談?」

「何かあるの?」

上手くいけばいいのだが。こいつらさえ何とかできれば、それで………。

「昨日のようなことは、あまりおすすめできませんから……」

「昨日のようなこと?」

「もしかして、姫百合燐火のこと?」

絶対に終わらせる。害の及ばぬように。

「はい。もし………、もし仮に教員の誰かに見られれば、確実にこちらが悪くなります」

「何で?」

「んーと、いじめてるように見えるってことかな?」

守るための約束。自分達のためには、こうするしかない。

「はい。ですので彼女とは、一切関わらないようにしてください」

「わかったよ。自分守るためには、無視が一番か」

「蘭月君、実は結構酷い人?」

「そんなこと、ありませんよ」

彼女達は、笑いだす。最低な下卑た笑いは、教室に鳴り響く。

「何で、なの………」

他の声がした。見れば――

充満する笑いを拒絶するように、耳に手をあてる少女が一人。

「蘭月、君………」

少女はこちらに気付いたようで、耳を塞ぎ続けながら名を呼んでくる。

「蘭月、君………」

呼び続けてくる。

「どうかしたの?」

「おーい、蘭月君?」

突然、別の声が聞こえた。いや、正確には耳に入っていなかった声だ。

「いえ、何でもありませんよ」

そう返して、元のように前を向く。逃げるように目を背ける。

それからすぐに、後ろから足音とドアの開く音がした。

そして彼女達は、また笑いだす。先程と同じ下卑た笑いで。

俺は、消えるような声で謝るしか出来なかった。ごめんと、そう謝る意外に何もしてあげられなかった。

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