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召喚

作品内の名称はその場でグーグル先生にお願いしてるので、割と無意味です

呪文的なのも正直、適当に書きすぎて意味不明なところ多々です

うどんに入れる七味みたいなものと思ってください


ハイファンタジー要素入れるとか言い出したのどこのどいつだよ、まったく

エンデヴィア=ル=エネスティアは周りに気付かれぬように小さな溜息を漏らした。


彼女が居るのはレンドブルグ神教学院、天秤の間控え室。

舞踏会でも開けそうな広さを持ち、一見すると質素に見えながらも、その実、最高級の調度品で飾られ、手入れも行き届いた一室である。長時間座り続けてもあまり疲労を感じない質のいいソファーなど自室に持って帰りたいほどであった。周りに控える使用人も兵士も、最高の訓練と教育を受けた者ばかりが大陸中から集められているのだ。それこそ、エンデヴィアの母国においてこれほどの水準を満たす物も者も存在しないと断言してしまえるほどこの場は洗練されている。


おかげでエンデヴィアはその場に居るだけで気後れしてしまい、朝から夕時の今まで胃がキリキリと痛みを訴えかけてきていた。


傍に控える使用人も、扉を守る衛兵達も優秀であるが故に空気のように徹しているが、逆に彼らが優秀であればあるほどエンデヴィアの抱える劣等感はその空気から侮蔑や嘲りを感じ取り、彼女をさいなませるのだ。


なにせここは、この世界において唯一、中立地帯として定められたレミス教の総本山であり、百の王国に連なる王侯貴族が通う学院である。それと同時に、五十年に一度、この世界の枢軸とも呼べる『召喚戦争』の執り行われる舞台でもあるのだ。


そして、昨日、今日と、その召喚戦争の幕開けとなる前哨戦、召喚の儀式が行われている。

二日を掛け、朝一番より、選定百王家序列一階位から順に『天秤の間』へと赴き、そこでこの戦争の唯一の戦力となる異世界の優れたる者、『勇者』を召喚するのだ。より上位の者程、待ち時間は短く、この儀式から一早く開放されるのである。


そこで控え室を見渡してみれば、エンデヴィアを除き、この場に居るのは使用人と兵士だけであり、それはつまり――


「選定百王家序列百階位エネスティア王国、第七王女エンデヴィア=ル=エネスティア様! 儀式の準備が整いました。天秤の間へお入り下さいませ」


「――はい」


レンドブルグという世界において最も低い地位を持つ国であるということだ。

正確には各選定王家には、傘下となる公国がそれぞれに二、三ヶ国存在するのだが、エネスティア王国などは上位を占める選定王家の公国からすら塵芥のようにしか扱われない。

それだけこの世界において、この戦争により決定付けられる序列と言うものは絶対なのである。


「はあ」


そして、本日最後の召喚の儀式の要となるエンデヴィアは再び小さな溜息を零すと、朝から座り続けて重くなった腰を上げた。

序列百階位であろうと王女は王女、他人に心の機微を悟られてはならない。一国の代表として恥の無いように、この世界において定められた法を執り行う一員として、威厳に溢れた立ち振る舞いを意識する。


唯一の自慢とも言える蜂蜜色の髪を払い、若草色を基本にして地味にならない範囲で飾りを抑えたドレスを優雅に翻し、歩む。


自惚れなどではなく全ての視線が自分に寄せられているのを彼女は自覚した。ただし、その視線に好意的なものなど含まれてはいない。使用人も兵士も無感情なものだが、その裏にある彼等の嘲りの感情が見てとれるようだった。


(どうせ、場違いとでも思ってるんでしょうね。まあ、いいわよ。どうせ、……どうせ誰も何も期待なんてしてないんだから)


天秤の間へと続く大扉。そこに先ほど口上を述べた若い司祭が控えている。

彼も周りの人間と同じような視線を向けてくるが、それでも形式上は敬うべき神レミスの選定した王家の人間である。大仰な礼でエンデヴィアを奥へと見送ってくる。


結局、エンデヴィアは扉を潜り抜ける頃にはそんな空気に辟易してしまい、嘆息ともいうべき吐息をうかっり漏らしてしまうのであった。




       ▽▽▽




しゃなりしゃなりと、かつて教え込まれた姿勢の良い歩みで天秤の間へと続く薄暗い通路を進んでゆく。

そして幾らもしないで辿り着いたそこは、正に儀式場と呼ぶに相応しい光景であった。


壁も床も石造りで古めかしく、採光用の窓が無いために暗い。

その暗闇を照らす唯一の光源である蝋燭を載せた燭台が壁際に並べられ、室内をぼんやりと照らしていた。


その燭台の間に間に、この儀式を取り仕切るレミス教の大司教が立ち並び、正面には四人の枢機卿を従えた教皇、ルーデウス三世が佇んでいる。

教皇は絹で作られた真珠色の貫頭衣に身を包み、ガーネットと銀飾で粉飾された藍色の聖冠を戴いていた。御歳八十を越えながらも、未だ衰えた様子を見せず、背筋を伸ばし矍鑠とした姿は聖職の頂点に立つに相応しい峻厳な風格を持っている。


果たして彼はエンデヴィアの姿を認めると、その手に持った天秤を模す錫杖で床を打ち鳴らし、威厳に満ちた静かで低い声を発す。


「選定王家序列百階位エネスティア王国、第七王女エンデヴィア=ル=エネスティア。前へ」


「はい」


教皇の声に従うままエンデヴィアは広間の中央へと進み、そこで片膝をつくと頭を垂れる。

レミス教の教皇のみが選定王家と対等の身分を持ち、継承権を持つといえど今上陛下でもないエンデヴィアは彼より身分が低いことになるのだ。


「汝、天秤の守護、高潔なる審判の神レミスの定めし百の王の末裔か?」


「はい」


「汝、光の神、闇の神の心を慰撫し、奉ることに邁進するや?」


「はい」


「汝、異界より招きし我らが朋友の支え足り得るや?」


「――はい」


教皇からの問いに頭を垂れたまま答え、それを誓いとする。

決められた言葉ではあるが恐らく多くの選定者がここである種の感慨を抱くのであろう。エンデヴィアにとっては空しいだけであったが。


「宜しい。ならば前に進み、我らが神にその誓いを謳いあげ、この戦いの担い手を招き呼ぶのだ」


教皇はその言葉の終わりと同時に再び錫杖を打ち鳴らすと、自身はその場で振り返り進み、傍に控える枢機卿達が左右に別れ道を開く。

エンデヴィアもそこで立ち上がると教皇の後へと続いた。


そして、前に歩を進めた二人の前に現われたのはレミスの像と、人の身の丈はあろうという両天秤である。


審判の神レミスを模したという像は、片手に全てを量る天秤を持ち、もう一方の手に全ての者の行いを記したと言われる審判の書を持つ厳めしい男性の姿をとっている。これがレンドブルグでは広く知られている、神レミスの像である。


片や、そのレミス像の前に鎮座する巨大な両天秤。これこそがレミスがこの世界に残したとされる最後の奇跡、『全てを量るもの(アストライア)』。


この天秤が世界と世界を繋げ、選定者を指標とし、異世界より勇者を招き寄せるのだ。

その際に『全てを量るもの(アストライア)』は召喚された者の世界での行いを量り、『偉業(カルマ)』として数値化すると同時に、その傾きの分だけ勇者に力を与えるのである。


教皇は『全てを量るもの(アストライア)』の前で止まると横に避け、視線でエンデヴィアを促してくる。

彼女もそれに頷き応えると、『全てを量るもの(アストライア)』に近づき、片方の秤に載せられた短剣を持ち上げ、それを手のひらに浅く突き刺す。血液が付着したのを確かめると短剣を元の秤に戻し、目を瞑り、小さく息を吸う。


知らず緊張していたのだろう、いつもより早い動悸を鎮めようと吸った息を吐き出し、今傷つけたばかりの手のひらに残る痛痒が浮ついた心を現実に引き戻す。


『我、天秤の守護者レミスの選定を受けし者。我、高潔なる審判者レミスの思念を継ぐ者』


声に自身の魔力を込め、誓約の言葉を謳いあげることにより神へと奉じるのである。


エンデヴィアの声に呼応するようにして『全てを量るもの(アストライア)』が煌々とした青白い光を漏らし始めた。

この場に彼女の言葉が朗々と響き、一言一言に反応するかのように光が強まっていく。



『――八百万の神の心を鎮めし闘争の担い手よ、我が神の誓約に基づき、これを求めるならば応えよ。汝、光の眷属や? 汝、闇の眷属や?』


まだ口上の途中だと言うのに『全てを量るもの(アストライア)』はより輝きを増し、エンデヴィアがその閃光に瞼を閉じると、次の瞬間、目の前に夜空が広がった。


上下も左右も無く広がる宇宙。あまりの光景に彼女は息を呑み、辺りを見回してみるが、そこに自分以外の人間は存在せず、ただ輝きを失った両天秤のみが存在するのみである。


そしてもう一度、周りを見渡すとエンデヴィアは違和感に気付いた。

まるで自分を包むようにして広がる夜空。そこに浮かぶ星々に二つの種類があるのだ。

片方は太陽のように白く輝く星、片方は闇夜にありながらより漆黒に輝く星。


「これが、……これが他の世界の輝き」


王家に語り継がれる、召喚の儀式で体験する神秘。

この一つ一つの星が他世界を繋ぐものであり、勇者の力を示すものである。


よく見れば、各々の星は輝きや大きさが違い、同じに見えるものが存在しないのだ。大きさは手のひら程度からコイン程度まで。輝きはそれこそ、強く輝くもの、点滅を繰り返すもの、ぼんやりと輝くものと千差万別である。

つまり、この星の違いこそが勇者を選ぶ際の指針となるのだろう。


だが、エネスティア王国は序列百階位。

一度の召喚戦争で『全てを量るもの(アストライア)』が導く世界の数は百まで。

そう、既にこの場に輝く星々の九十九個は選ばれてしまっているのだ。必然、エンデヴィアの選ぶことが出来る相手はただ一つの余りものなのである。


彼女はそれから落ち着くために呼吸を整えると、この宇宙を見て回り始めた。

最初はこの光景に圧倒され気付かなかったが、星を見れば既に誰かと契約しているかは何となく分かるのである。

それを一つ一つ確かめ、自分の相手となる星を探す。


「別に最後の一人なんだから自動でやってくれてもいいのに。レミス様も微妙に不親切よね」


歩きながら目で確認し、愚痴を零す。神のお膝元ともいえる場で不敬な発言をする胆力を褒めるべきか呆れるべきか。


そして、幾ばくもしない内にエンデヴィアは一つの星を見つけ出した。


それは『全てを量るもの(アストライア)』が見せる宇宙の端、エンデヴィアの足元で小さく弱々しく漆黒に輝く星であった。

大きさはそれこそ小石程度、輝きなど無いに等しく、周りの星の光を受けてそれ照り返しているようだった。

掬いあげ、手にとって見れば、それは小ぶりなオニキスのようでもある。


「これじゃあ、選ばれなかったというよりも、見つけてもらえなかった、っていうほうが正しいわね」


エンデヴィアは手のひらにのせられた、その脆弱な星の姿を見て呆れたようにそう零す。

それでも彼女はその星を大切そうに握り込むと、呟いた。


「ま、貴方も私みたいな残りものと組まされるんだもんね。残りもの同士、仲良くしましょう」


そう微笑みかけ、『全てを量るもの(アストライア)』へと歩を向ける。

短剣の載せられた秤の上へとその小さな星を置く。


そのまま、残りの口上を述べるべく口を開く。


『闇に連なりし神々の子よ。我、汝と共に戦う者也。汝、我と苦難を共にする者也。――我等、両天秤の導きに従い命運を共にする者共也! 来たれ、神話の再演を紡ぐ者よ!!』


誓約の文言を全て唱えあげると『全てを量るもの(アストライア)』は輝きを取り戻し、再び眩い光が広がり、エンデヴィアは目を閉じた。

次に彼女が瞼を開いた時には元の天秤の間へと戻ってきており、変わったことと言えば目の前の『全てを量るもの(アストライア)』にあの漆黒の星が乗っていることだ。


だが次の瞬間、唐突に黒い靄が現われ、まるで人の形のように変化すると僅かの間を置いて、その霞が一気に晴れ渡る。

そしてそこから現われたのは一人の少年であった。


中肉中背で薄汚れた質の悪い衣服を身に纏い、黒髪は伸ばし放題のせいかその顔を覆い隠す程長い。

更にその両手には鉄枷が嵌められており、長い鎖によって繋がれている。

その姿はまるで罪人のようであった。


「え?」


召喚された勇者であろう者の姿にエンデヴィアは戸惑いを覚え、うろたえてしまう。

しかし、無情にも儀式はつつがなく進められようとするのであった。


近くに控えていた教皇が進み出てくる。


「『全てを量るもの(アストライア)』よ、この者の『偉業(カルマ)』を量りたまえ」


教皇が勇者としての格を量ろうとするが、……『全てを量るもの(アストライア)』は動かない。

暫し、無言の時間が続くが天秤は傾こうとせず、釣り合ったままである。


「……この者の『偉業(カルマ)』は0である」


そのまま、教皇によって無慈悲なる宣告がなされるのだった。


「ええぇっ!?」


遂に耐えられなかったのかエンデヴィアの悲痛な声が広間に響く、と同時に勇者(仮)が床に仰向けに倒れ込み、室内の視線が彼に向く。


「腹減った~、というかここどこだよ? ――あれ? ……そもそも誰だ、俺?」


そこに少年の爆弾発言が投下されるのであった。


「えええええええええええええええええええぇぇえええぇぇぇえぇぇええぇえぇぇえぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!?!?!?!!!?」


二度に渡るエンデヴィアの悲鳴。今度は高く長く響く。




――こうして選定王家序列百階位エネスティア王国、第七王女エンデヴィア=ル=エネスティアの召喚戦争は、『偉業(カルマ)』0、記憶喪失の薄汚い少年と共に幕を上げたのである。

パクリと罵られようと耐えてみせらあ!!


盾盾盾

盾俺盾

盾盾盾


アストライアさんのルビが目に痛い

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