○○に転生したから××しました《ライバル令嬢編》
ボーイズラブ(?)注意報&腐女子注意報(^_^;)
私、水崎麗奈は乙女ゲームの気位の高いお嬢様という、所謂ライバルキャラに転生したようです。気付いたのは小学校高学年。そろそろ中学受験に向けて受験勉強を本格的にやりましょうと、家庭教師に言われ出しだ頃でした。
女子校で進級するか、共学校を受験するか悩んでいた私は、将来を考え高校の資料まで取り寄せていました。そこで乙女遊戯学園の学校案内を見て記憶が戻りました。
私の担当するライバルキャラは、なかなか強かな女性でした。
一見、美と金に執着し、婚約者のいる身で数多の男を手玉にとっているように見えます。
実際ゲーム内でも、彼女をよく知らない保村貴也は誤解しまくってましたが、彼女の言動をきちんと見ていたら、どう誤解したら複数の男と関係持ってるように見えるのかと詰め寄りたく思うほどの気高い女性です。
本当にゲーム中の保村貴也の態度には憤ったものです。あの水崎麗奈がそんな安い女な筈がないでしょう?ヒロインだって気付いていたのに、あんな男が婚約者だなんて、と。
水崎麗奈はお色気担当のライバルキャラでしたが、彼女がその辺の男に体を許すとかありえません。
そもそも、水崎麗奈が保村貴也とヒロインが惹かれ始めた当初から相対するのは、内面の幼い婚約者を心配しての行動でしたし、
ラストで保村貴也に婚約破棄され、学園を追放の上に家を出たのだって、保村貴也とヒロインの本気を見定めたから身を引いたのです。
その後は描写がなかったので分かりませんが、前世の私は『水崎麗奈なら保村貴也なんか目じゃない男に見初められて女王様とかしてそうよね』なんて思っていました。
だって水崎麗奈は、強かで頭の良い美女ですもの。たかが家を出たくらいで身持ちを落とすなんてありえないと思ったのです。
実際、まだ幼女と呼ばれる私ですら、私の為なら何でもするという崇拝者じみた困った方が数人いるのです。
ましてや、高校生の水崎麗奈なら……ね。
何もない人生なんてつまらない。
でも、強制的にレールの上を走らされる人生なんて我慢ならない。
熟考の末、様子を見ることにしました。
……こんな展開ゲームにあったかしら?
今日、保村貴也様とお会いしました。
私を見るなり驚愕の表情で凍りついたように動かなくなる保村貴也様。
頭を抱え、膝をつく保村貴也様。
倒れた彼を氷室凍矢が抱き上げ…って何事ですの!?
これがあの俺様傲慢系婚約者?
イメージが重なりませんわ。
もしかして、転生者?
それにしても、これはどういう事でしょう。
保村貴也を看病する氷室凍矢を見ていると胸がふるえ頬に血が上ります。
叫び声を上げたいような、この衝動は何でしょう?
氷室凍矢といえは、ゲームでは保村貴也の取り巻きの1人で、登場当初は顔も名もないモブキャラでした。
ただし、保村貴也ルートでバッドエンドルートのみ何故かラスボスに進化する変わり種。
保村財閥を乗っ取る貴也の異母兄にして敵役。バッドエンド確定後、ルートの中盤でスチル付で名前がでてくる凍矢は、父親の命で保村貴也を監視していた。
公式に載せられたラフ画と生い立ちが反響を呼び、保村貴也との愛憎劇が腐女子の心に火をつけました。
沢山の薄い本が世に出され、後に発売された完成版では選択次第で主人公の恋愛無視で薔薇な世界が展開し、デバガメ根性を丸出しの主人公が二人を覗き見する腐腐腐ルートというBLっぽいエンドが追加された。
それを元に、腐女子による腐女子の為のゲームが作られたりしましたが、前世の私はそちら方面には興味がなく、完成版は購入さえしませんでした
思えば、今生は恵まれすぎた環境のせいか、感動に薄い生活をしていました。
正直なところ、退屈な人生に膿んでいました。
なので、ゲームのライバル令嬢としての波乱のある人生に心引かれてもいたのです。
後から思うと、これが私の人生の転機でした。
保村貴也様は、転生者でした。
人柄も申し分ないので、婚約しました。
そして、私達の節度ある交際が始まりました。
私達が共に過ごす時は、必ず護衛として傍近くに氷室凍矢が控えています。
令嬢である私には勿論護衛がついているし、自分も武道たしなむのでこれ以上の護衛は必要ないと言っても離れない氷室凍矢に、保村貴也様は苦笑い。
私はそんな二人と穏やかな時間を過ごしています。
こうして私は女子校の中等部へと進みました。
そして何事もなく月日は過ぎ、運命の高等部へ。
私は導かれるように、ある空き教室の前を通り掛かりました。
そして、第二の転機をむかえました。
その空き教室では、何故か数人の女生徒が窓に張り付くようにして外を見ているのです。
何故かはすぐ分かりました。
窓から隣の男子校がよく見えるのです。
「あれは、貴也様?」
少女達と同じように窓際に立ち、携帯用双眼鏡で男子校を覗くと、グランドを走る男子生徒の中に保村貴也の姿がありました。
「え?……あっ、貴女は王道学園の保村貴也様の婚約者の水崎麗奈様!?」
「ええ。皆様何をして…」
ちょうどその時、グランドを走り終わり汗を拭く保村貴也に、氷室凍矢が飲み物を差し出しました。
そして、甘い笑顔を浮かべた氷室凍矢が、飲み物を飲んで微笑む保村貴也に手を伸ばし…、
(トクン)
『きゃー!』
胸が高鳴るのと、少女達が小さく歓声を上げるのは同時でした。
ここは心に渇きを抱えた乙女達の集う場所。
私はここで癒しを見つけました。
この歓びを分かち合いたいと思った私は、学園に文芸部を立ち上げ、この空き教室を部室としました。
こうして、今日も心に渇き抱えた乙女達を癒すために、私は、双眼鏡片手に執筆活動に勤しむのです。
『転生したらライバル令嬢だったので、女子校に行きましたが、女子校は腐女子の園でした。結果、あっさり染まった私は、婚約者を題材に薄い本を書いてます。』
《おまけ》
「ふふふ。イケメンハーレムは私のものよ」
乙女ゲームのモブに転生した私は、今日という日を楽しみに生きてきた。
ここは庶民なヒロインが持ち前の明るさと優しさで御曹司たちを虜にしていく乙女ゲームの世界。
私の立場はヒロインの1クラスメイト。
でも、私はモブで終わるつもりはない。
折角攻略情報を把握してるんだもの。ここはゲームフルコンプの私がヒロインに成り変わるのがテンプレでしょ。目指すのは勿論、複数のイケメンにチヤホヤされる逆ハーレムルート。
こうして薔薇色の学園生活が始まる。
筈だったのに…。
「どうして誰もいないのよー!?」
そう、誰もいなかった。
同じクラスの筈のヒロインもメインヒーローも、ライバル令嬢も、隣のクラスのチャラ男も屋上にいる筈の不良先輩も、保健室のホストな先生も寡黙な担任もいなかった。
「どうなってるのよ!
ここは乙女ゲームの世界の筈なのに!!
私のハーレム生活はどうなるのよ!」
彼女は知らなかった。ゲーム関係者がヒロインからモブに至るまで全員記憶持ち転生者であった事を。
関わりを厭った彼等は、フラグをへし折り、またはへし曲げ引っこ抜き、乙女ゲームとは関係のない人生を歩んでいることを。
『乙女ゲームのモブに転生したので、ゲーム知識で成り変わりハーレムを築こうと思います。
結果、ゲーム関係者が全員逃亡していました。
…不要な発言をしてしまった私は、電波少女の名を欲しいままにしています。』
《おまけ2》
氷室凍矢にゲームの記憶はありません。ただ、保村貴也が異母弟である事を知っています。
怪しい行動が多いですが、本人はブラコンのつもりです。