○○に転生したから××しました《チャラ男編》
ボーイズラブ注意報(^_^;)
僕、木崎優都は、乙女ゲームの攻略対象のチャラ男に転生しました。
因みに、記憶が戻ったのは、乙女遊戯学園の入学式を三日後に控えたゲーム開始三日前だった。
冗談じゃないよね。
なんで僕なの?
なんで、よりによって乙女ゲーム?
なんで、ギャルゲーじゃないの?
…いや、ギャルゲーの主人公に転生しても困るけどさ。
でも、前世に従姉に押し付けられて、たった一度やった
(やらされた)乙女ゲームに転生するって、
納得いかない。
複数の女の子侍らすとか無理。
そんな軟派な男に、僕はなれない!
女の子と笑顔で会話するなんてスキル、持ってない!
そもそも、前世、一匹狼を気取ってた(ボッチでコミュ障気味だった)僕を、チャラ男に転生させるなんて、
神様、喧嘩売ってるよね?
という分けで、逃げます。
お父さんお母さん御免なさい。無茶言ってすみません。
でも、無理です。
絶対に無理なんです。
僕に、乙女ゲームのチャラ男なんて、無理なんです。分かって下さい。
無理なんだから、逃げるしかないですよね?
転校は大袈裟かな?と思ったんですよ。
ただ、ここで一つ問題があります。
僕、攻略対象だけあって、イケメンなんですよ。
陽の光の加減で金色に輝く赤毛に、タレ目なせいで優しげに見える紫の瞳の優男。
本当に、無駄にイケメンです。
イケメンは嬉しいんですが、目立つんですよね。記憶が戻る前だって女の子に追われまくってウザいって思ってたのが、記憶が戻って更に女の子が苦手になったんです。
騒がれるのは苦手だし、仕方ないですね。
取り敢えず、変装します。
ネコ毛の髪質を逆手にとって、あえてボサボサ髪にしました。眼鏡で顔を隠しました。
これでチャラ男には見えません。でも、万が一ヒロインも転生者とかで、しつこく探されたりしたら面倒です。
と、用心した結果が全寮制の男子校に転校です。
「………………」
…敗因は、自力で通学できる距離に女子校か全寮制の男子校しかなかったことですね。
転校はスムーズに行きました。幸い母の兄が理事をしていたので、試験結果で特待生になれた事で説得できたし。勉強好きでよかった。
ただ、僕の我儘で転校するのに親に無駄に負担はかけられないからとか考えて、例え地元でも、男子校に季節外れの転校生として入るなんて、あの時の僕は、冷静なつもりで全く冷静じゃなかったんですね。
伯父が理事長をしている男子校に転校なんて、フラグ以外のなにものでもなかったのに。
「ドコ見てるの?」
過去の自分を見ていました。後悔の意味を噛み締めてましたが何か?
「余所見なんか、させないよ?」
そう言って男は、僕の頬に添えていた手を顎へ滑らす。
変装?やめてますが何か?
だって全寮制ですよ?寮の風呂でバレましたよ。寮に個室風呂なんてないんです。
変装のセイで無駄に注目集めましたよ。
懲りました。
「俺を見て」
副会長、顔を近づけないで下さい。
現実逃避してただけです。
僕を壁ぎわまで追い詰め、腕で囲っている男と視線が絡まる。
眼鏡の似合う穏和な副会長様、甘やかな中に情熱を秘めた目で、僕を見ないで下さい。
そんな事されたら、突き飛ばして逃げ出すしかないじゃないですか。
逃げ出した僕を見ながら、僕に触れた手に口付けとかしないで下さい。
「!」
廊下を曲がったところで、歩いていた人にぶつかった。
「あ、ごめんなさい」
「いや、俺も考え事して…、ってお前か」
「先輩」
ヤバい人に会ってしまった。離れようとしたら、手を掴まれた。
「探していたんだ。ちょっと来い」
そのまま空き教室まで連れていかれ、また、壁ドンされました。
「返事、聞かせてくれるよな?」
実は、先日告白されました。
勿論逃げました。
先輩は、ワイルド系のイケメンです。
「すみませ「イエスかハイ以外の返事は認めない」」
「………」
「で、返事は?」
「いえ、だから…」
「イエスだよな?」
「そんなワケないでしょ。離して下さい」
「嫌だと言ったら?」
仕方がないですね。
(ガツッ)
「ぐっ!?」
膝をつく先輩から、さっと距離をとります。
「ゴホッ」
「僕、男に興味ないので他をあたって下さい。
失礼します」
腹を抱えて蹲る先輩をおいて、教室を出ます。
教室から先輩の笑い声が聞こえます。怖いです。
その後も、安息の地を探す僕の前に立ちはだかる数多の男達…。この学園の名前は、王道学園。
そう、ここは変質者の巣窟。
校庭には白薔薇が咲き乱れ、学園は変態が溢れている。
乙女ゲームの攻略対象が嫌で逃げ出した僕は、知らないうちに、王道学園の(BLゲームの)主人公のフラグを建ててしまっていた。
神様は僕を怒らせたいらしい。
確かに乙女ゲームの攻略対象なんて嫌だよ?でも、男と恋愛なんてないから!
BLゲームの主人公ポジなんて冗談じゃない。攻略なんて絶対しないし、させないからね!
変態が支配する学園で、僕の孤独な戦いは続く。
『乙女ゲームの攻略対象のチャラ男に転生したから転校しました。
結果、王道学園で主人公ポジにされたので、蹴散らしてます。』
~おわり~
《予告編?》
「ふぅ…」
屋上に出て空を見上げる。
「優都。ここにいたのか」
「貴也」
彼は保村貴也。この王道学園で、数少ないまともな男子生徒で、僕の親友だ。
「僕は、転校したい」
「乙女遊戯学園に戻るのか?」
「………」
「諦めろ」
そう言った貴也の目にあるのは、深い憂い。
彼は僕の親友で、同種の悩みを持つ同志だった。
「どこか遠くに行きたいね…」
「ああ…」