巨妄 ―Daydream―
白昼夢の向こう側
届かない世界
煌めきの輪郭は
虚無に溶けて嘘をつく
錆びついた日曜日の
靴下の放物線が
やるせなさを愛撫して
無音のシネマは
君を讃えて穴だらけ
忘れられたハイヒールは
ずっと踏切に突き刺さって
鮮血を醸しているけれど
沈黙のエナメルは
妖艶なまでの光沢を保ち
今もまだ君を憶えている
そして僕も
まだ君を憶えている
誰もいない部屋
存在しない君
泣きつかれた僕
時計の音
この部屋にはもう
何も残ってないけれど
それでも僕は
君を憶えている