孤独な魔法使い、その後
リクエストがあったイコージのその後です
魔法公国レクレールの公園のベンチに一組の親子が座っていた。
「お父さん、お父さんはお母さんになんてプロポーズをしたの?」
父親にませた質問をしたのは8才ぐらいの女の子。
「そうですね。お母さんにプロポーズしたのは、レクレールとの戦いから1ヶ月ぐらい経った頃でしたね」
そう言って父親イ・コージは懐かしむ様に思い出していた。
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災い転じて福となすと言う言葉があります。
しかし私の場合はその逆、福が転じて災いとなった感じです。
私はレクレールとの戦いの功績から、新しく創立された魔法研究所特別課の主任になりました。
特別課は、他国からの依頼や特別な依頼を個別で受け付けるのが役割です。
当然、魔石や素材は使い放題で研究者としては夢の様な環境なんですが。
「コージー、次の依頼が来たぞ。前の依頼も早く終わらせろよ」
「エリーゼ先輩、まだその前の依頼も終わってないんですけど」
私に話し掛けてきたのはエリーゼ特別課主任… エリーゼ先輩が私の上司になったんです!!
何でもレクレール異端者審問隊を倒した私を御せるのはエリーゼ・ロックオーガ伯爵夫人しかいないって事で選ばれたそうなんですが。
「だったら口を開かないで手を動かせ。それと近衛兵団の付与武装も忘れんなよ」
ちなみに近衛兵団は前ロックオーガ傭兵隊です
「はい…頑張ります」
私は心から訴えさせてもらいます。
私は魔法研究をさせておけば大人しい人畜無害なおじさんなんですよ、御せるのがエリーゼ先輩だけ?
ちゃんちやら可笑しいです、私はリアやキャロルにも頭が上がらないんですよ。
長年のサラリーマン生活で年下の上司にも逆らわない術も身に付けています。
「頑張るのは当たり前だろうが!!結果をだせ。近衛兵団のお披露目も近いんだからな…それで少しは、ピンクもじゃと進展したのか?」
「進展も何も依頼をこなすのが精一杯で、そんな余裕なんてありませんよ」
「はぁ?なんで俺がお前に仕事を多めに割り振ってるか分からねえのか?結婚には銭が必要なんだぜ。頑張って稼いで早く身をかためろ」
エリーゼ先輩はそう言うと私の肩をポンと叩きました…ありがたいんですが、私はまだプロポーズをしてないんですよ。
プロポーズ、それは私には縁がないと思っていた言葉。
リア、私のご飯を作ってください…今更ですよね。
リア、私の最後をみてくれますか…なんか介護目当てみたいたいですね。
無理です、私にロマンチックなプロポーズなんて無理です。
「パパ、私に相談ってなに?」
リアは若い娘、それなら同じ若い娘のキャロルに聞くのが一番。
「そのですね…若い娘はなんてプロポーズすれば喜ぶか知りたくなりまして」
「パパ!!ついにリアさんにプロポーズするの?難しく考えないで、自分の気持ちを伝えれば良いと思うよ。その方がリアさんも喜ぶと思うし」
私の気持ちですか…。
そして私はリアに気持ちを伝えたんですよね。
「リア、私のお嫁さんになってくれませんか。私はどんなマジックアイテムよりリアと幸せな家庭を作りたいんです」
リアは涙を一滴溢すとゆっくり頷いてくれました。
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ベンチで仲良く話をしている父娘に若い女性が微笑みながら声を掛ける。
「お父さん、チャイチャ。お待たせしまたー。お母さんのお腹には新しいー家族がいるそうですよー」
チャイチャと呼ばれた女の子は嬉しそうに母親に抱きつく。
孤独な魔法使いから優しい父親になったイ・コージはその大切な光景を優しく見つめていた。