魔術師と仲間
side イ・コージ
忙しいです…寝る暇も、まともにご飯を食べる時間もありません。
結界のマジックアイテムを作り終えた私を待っていたのは、ルーンランドに集まってる同盟国(お得意様)からの大量の期限付きの依頼でした。
剣に付与、鎧に付与、槍に付与、火の魔石、氷の魔石、雷の魔石…お陰で10竜の鱗を加工する暇なんてありません。
そんな中、研究室にキャロルとライラがやって来ました。
息を切らして額からは大量の汗が流れていてかなり急いで来てくれたのが分かります。
「パパ、これから同盟国の選抜隊とレクレールの戦いを遠視の魔石で放映するんだって」
いつの間にそんな事になってたんでしょう。
…私が研究室に軟禁されていた間なんですけどね。
「コージおじさん…色んな意味で大丈夫?」
ライラがひくのも仕方ないもしれません。
何しろ私は2週間はお風呂に入ってませんから、髪はボサボサ寝不足で目にはクマがくっきりと出ています。
「とりあえずポーションを飲んでおきますよ」
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キャロル達の話によるとレクレール軍は不眠不休で進軍しているらしく予想以上の速度でルーンランドに着くとの事。
それに焦った同盟国は転移の魔方陣を使って背後から勇者達に攻撃を加えて一気に方をつける事にしたそうです。
「不眠不休で進軍ですかー。なんでそんなに元気なんですかねー?コージにも分けて欲しいですー」
今回は国絡みの依頼ですからリアもハードスケジュールをしぶしぶ承認にしてくれています。
「レクレールのチャームは疲れも睡眠もとらせないぐらいに南エルフの人を支配してるんですよ。多分、倒れた人はそのまま打ち捨ててるでしょうね」
家族や恋人が倒れても分からないぐらいに支配されてる筈。
「でもそんなんだとまともに戦えないだろ?」
「ライラ、レクレールの勇者パーティや兵士は馬車で移動してるから疲れはないんですよ…正確には馬車じゃなくエルフが牽いてるからエルフ車なんでしょうけどね」
レクレールのチャームは研究すればするほど反吐が出そうになる物なんですから。
案の定、レクレールの戦いは最低最悪の物でした。
チャームに支配されてたサン・エルフの人達は生ける屍。
剣で斬られても槍で貫かれても魔法で焼かれてもひたすらに敵を倒そうとします。
「パパ、チャームでこんな酷い事が可能なの?」
「レクレールのチャームは光属性。目から入り直接脳に届きます。長い間浴び続ければ支配されてしまうんですよ」
勇者達の能力も強く、勇者のチャームは威力が凄く近くにいた同盟国の騎士や兵士を魅了してしまいました。
「リア、ポーションとエーテルを持ってきて下さい。それと明日の昼にこの人達を来てもらう手筈を整えてもらえますか?」
今度は奪わせません。
レクレールの連中には私の大切な仲間も守ってみせます。
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次の日、私の研究室に来てくれたのは恋人兼助手のリア・クローゼ。
義娘キャロル・リーチェ。
姪っ子のイ・ライラ。
弟のイ・ケメンと恋人のアリス・ウォーテリアさん。
エリーゼ・ロックオー先輩と旦那様のガドイン・ロックオーガ伯爵。
傭兵隊のジミー・カペー君とカペー君の恋人ソニア・ドルチェさん。
クリス・アレキサンドラ子爵と恋人のチェルシー・ポンさん。
「皆さんにこれを渡しておきます」
私が用意したのは10竜の鱗を加工したペンダント。
「まずはエリーゼ先輩これを受け取って下さい」
「コージ、なんだ?こんなふざけた魔力があるペンダントをどこで手に入れた?」
「それは魔の古代竜グリモワールの鱗を加工した物です。先輩に出会えたから、先輩が叱ってくれたから私は人を信じる事が出来たんです。そして先輩ならグリモワールの力を使えると信じています」
「次にガドインさん、これは光の古代竜グランツの鱗です。ガドインさんは光となり傭兵隊や騎士を導きルーンランドを守ってくれると信じています」
「任せとけ!!エリーゼと力を合わせてレクレールのチャームなんざ無効にしてやる」
「コージ、お前にはまだまだ指導が必要だから戦が終わったら覚悟しとけよ」
この2人は私を叱責しながら暖かく導いてくれた大切な人達。
「次はクリスさん、命の古代竜ゼーレの鱗です。優しくて命を大切にさているクリスさんにゼーレも力を貸してくれるでしょう。そしてチェルシーさんには空の古代竜チェローの鱗をお渡しします。お2人の見た目や地位も種族も越えた恋を知って私は希望を持てました」
「そしてカペー君には地の古代竜ボーデンの鱗をお渡しします。ソニアさんには風の古代竜ウィンディーアの鱗をお渡します。お2人のチャームすら破った恋を見たから私は勇気を持てました」
この4人は大切な友人で未来に繋ぐ大切な希望です。
「次はケメン、闇の古代竜ダークネスの鱗だ。お前なら闇に飲み込まれずに力を使えるだろう。今まで何も兄らしい事は出来なかったからこれを送るよ。そして義妹になるアリスさんには水の古代竜ゼーの鱗を渡します。貴方達2人は出会った時間は少ないですがしっかりした絆を築けてました。2人ならレクレールのチャームにも負けないと信じています」
「そしてライラには火の古代竜フランメリアの鱗を渡します。ライラの明るさは私に元気をくれました。その元気は落ち込むルーンランドの人達にも伝わると私は信じています」
この3人は私の大切な大切な家族なんですから。
「キャロルとリアにはビルクーロの鱗を渡しますね。2人ともビルさんと契約をしてますから加護は絶大です。キャロル貴女と出会えてパパは心の暖かさを知りました。貴女は私の大切な愛おしい娘、信じてます」
「パパ…絶対に死んじゃやだよ。私のパパはイ・コージだけなんだから」
キャロルは私の大切な娘、この子の笑顔に何度救われたでしょう。
「そしてリア、着いてきて下さいい。貴女がいないと駄目なんですよ」
「着いてくるなってー言っても着いていきますからねー。コージは私の大切な旦那様なんですからねー」
リアがいない人生なんてもう考えれないでしょう。
この大切な人達を守る為に私はレクレールと戦います。
戦うのは異端者審問隊倒すのはかつての親友アレキス・アポロード。