幕間 ライラのオーディション
オーディションなのにきな臭い話になりました
side イ・コージ
ルーンランドに帰って来て数日が経ったある日の事です。
「コージおじさん!!これ見て、マジックガールズ4期生を募集だって。しかも人数は10人なんだってさ。俺でも合格出来るかな?」
マジックガールズ第4期生募集!!そう書かれた広告を持っているライラの目は輝きまくっていました。
このタイミングで、メンバー10人募集ですか…。
あまり良くはないんですけどけね、喜んでるライラには言えません。
「そうですか。それなら歌、ダンス、魔術をもっと頑張らないといけませんね」
マジックガールズの特徴は魔術が使えるアイドルだという事。
「任せとけって!!でもコージおじさん、俺に魔術を教えてっ、お願い!!」
ライラの任せとけは、どこに消えたんでしょうか。
「良いですよ。分からない事や上手く出来ない魔術があったら何時でも来て下さい」
「ありがとっ!!それじゃ俺ダンスの練習をしてくるっ!!」
「ケメンの店にお客様が来てるかもしれませんから、あまり大きな音はたてないで下さいよ」
「任せとけって!!」
そのままドタバタと2階に上がっていくライラ。
どうやらライラの任せとけは、信用度が低そうです。
でも考えれば考える程、溜め息が漏れてしまいます。
「コージ兄さん、溜め息を着くと幸せが逃げるよ」
そんな私に声を掛けてきたのは弟のケメン。
「そりゃ溜め息も出てしまいますよ。私に…」「兄さん、ケンカ売ってるの?まさか"私には逃げる幸せなんてありませんよ"なんて言うつもり?物凄い年下の美人の彼女がいる癖に?美少女にパパなんて慕われるてる癖に?」
ケメン、ストレスが溜まってるんでしょうか。
「違いますよ。マジックガールズの4期生の募集があるそうです。合格人数は10人だそうですよ」
「へー、それはライラが喜ぶんじゃないかな」
「ええ、喜んでましたし、張り切ってましたよ。だから余計に溜め息がでるんですよ。私にはライラを預かった責任があります。キトウセン兄さんはデュクセン1の親馬鹿ですから、あまり心配を掛けたくないですし」
ちなみに家に着いたらキトウセン兄さんから大量の手紙が先に来てました。
「責任って?まさかマジックガールズはいかがわしい接待とかをさせてるとか」
「ケメン、今ならフレイムジャベリンとアイスニードル、サンダーアックスの中から好きな魔術を選ばせてあげます。私の可愛いキャロルは汚れを知らない純粋な娘なんですよ、それをなんて目で見るんですか?汚らわしい!!」
そんな汚れた奴は兄がしっかりと魔術で浄化してあげます。
「なんで中級魔術が出てくるんだよ!!キトウセン兄さんが親馬鹿ならコージ兄さんは馬鹿親じゃないか」
馬鹿親、いえ正確にはキャロル馬鹿です!!
「まあ冗談を置いといて、今回のマジックガールズの募集は手放しでは喜べないんですよ。マジックガールズは国が関与しているアイドルです。そしてルーンランドは今レクレールとの戦に備えてるんですよ。考えられるのは良くて戦意高揚の為、最悪は特別魔術の為です」
マジックガールズが戦場で兵士の為に歌い、その流れでマジックガールズ全員が特別魔術の指揮要員をするの事も考えられます。
盛り上がった勢いのまま、大勢の兵士が魔力を提供するでしょうね。
「そんな…ライラに戦場なんて無理だっ!!あいつは優しい娘だ、絶対に耐えれないよ」
「戦場は1カ所じゃありません、何カ所もたらい回しにされる可能性があります。エーテルとポーションで強引に回復させてね」
「兄さんはライラやリーチェさんが戦場に行っても平気なの?」
「ある意味、兵士が守ってくれるから安全かもしれません。それに時間はまだあります…何しろ今のルーンランドには私達がいるじゃないですか」
イ兄弟がルーンランド、いえ、この戦の戦局を握ってみせます。
――――――――――
「マジックガールズ第4期生公開オーディション!!開催ですっ!!」
やたらと勢いの良い宣言で第4期生のオーディションが始まりました。
「コージ、わざわざ来るなんて義娘馬鹿の次は姪馬鹿か?」
「エリーゼ先輩。流石にこの時期のオーディションは気になりますよ。審査員を見たらますます心配になりましたし」
「マジックガールズの連中や芸能関係者に紛れて宮殿魔術師長、うちの旦那、それに所長もいるな。確かに随分ときな臭いメンバーだよな」
まるでアイドルオーディションと言うより兵士のオーディションです。
おじさんとしては合格して戦もないのが1番嬉しいんですけどね、そんな上手くはいかないでしょう。
………
「姪っ子が見事に合格したみたいだぜ。おじさんはどうするんだ?」
「私は研究所の所員ですよ。道具を作るだけです、レクレールの連中に一泡ふかせる様な強力な道具をね」
ライラの無邪気な笑顔もキャロルの優しい気持ちも私が守ってみせます。
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