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幕間 リーチェ母娘

リクエストにあったキャロルとマリーのお話です

side キャロル


 エレガンスから帰って来てからパパ達はすごく忙しそう。

チェルシーから聞いた話だとレクレールと戦争が始まる可能性があるみたい。

そうなる前とパパ行きたい所がある。

「パパ、お願いがあるんだけど」



side イ・コージ


 対レクレールの思案をしていたらキャロルがおずおずと話し掛けてきました。


「キャロル、お願いってなんですか?」


「パパが忙しくなる前に一緒にママのお墓について来て欲しいの」


キャロルのママ、つまりマリーのお墓ですか。

私はまだマリーのお墓参りに行ってません。

それはマリーの死を認めたくないから

それはアレキスと幸せそうにしていたマリーを思い出したくないから

それはマリーが困っていたのに、何もしなかった自分を思い出すのが嫌だから


でも

「分かりました。私を連れて行って下さい」

レクレールと戦争になったら、もうルーンランドに帰って来れない可能性もありますし。


「パパ、ここがママのお墓だよ。…ママ、イ・コージさんが会いに来てくれたよ」

マリーのお墓は集団墓地の片隅の小さな小さなお墓でした。


(やっぱり、マリーはもういないんですね)


「キャロル、良かったらマリーのお話を聞かせてもらえますか」

胸にぽっかりと穴があいた感じがしました。



side キャロル


「ママは何時も忙しそうに朝から晩まで働いていたんだ。…私は寂しかったから何時もパパの絵姿を見て話し掛けていたんだよ」

今思えば私がパパの絵姿を見ている時、ママは複雑な顔をしていた。

ママの手は何時もカサカサで何時も疲れていて笑う事も少なかったんだ。

そんなママが楽しそうに話をしてくれたのはデュクセンに遊びに行った時のお話。

誰よりも優しくて、誰よりも努力家、でも不器用な性格で何時も損をしている男の子のお話。

そしてデュクセンのお話をする時は何時もこう言っていた。


「優しい人の優しさを当たり前だと思ってると、何時の間にか距離が出来てどうしようもなくなっちゃうの。ママには出来なかったけど、もしキャロルがそうなったら思い切って、その人の胸に飛び込んでみなさい。きっと優しく抱きしめてくれるから」

多分、あの時のママの目にはパパが映っていたと思う。


そしてあれは私が12才の時、今までの無理が祟ってママは倒れてしまった。

「キャロル、お母さんらしい事を何もしてあげられなくてごめんなさい。…もし、困った事があったらデュクセンにいるイ・コージさんを訪ねなさい。きっと力を貸してくれるから…ごめんねお兄ちゃん、ごめんね、私の可愛い大切なキャロル」

そう言い終えるとママは眠る様に息を引き取った。

幸い、私はマジックガールズのメンバーに選ばれていたから生活の心配はなかったんだ。

「…パパ…」


先からパパが静かだなって思ったら、大粒の涙をボロボロとこぼしている。

悪い冒険者と戦った時にも、魔物と戦った時にも涙を見せなかったパパが子供みたいに泣いていた。

涙を拭かずにママのお墓をじっと見つめて泣いている。

ねえ、ママ。

ママが会いたがっていた不器用で優しすぎる魔術師が会いに来てくれたよ。

ママの言っていた通り、パパは優しくて努力家で不器用。

でも何時でも私を優しく抱きしめてくれる。

心配性で時々子供みたいだけど素敵な素敵なパパだよ。



マリー・リーチェの日記より


 今日、ルーンランドの街でお兄ちゃんを見かけた。

でもお兄ちゃんの顔からは優しさが消えていた。

あの不器用な優しさを消したのは私だと思う。

私がスズランの花を好きだって言ったら、ボロボロになりながらも"素材を取るついでに取ってきただけです"って言いながらスズランのお花をくれたお兄ちゃん。

あの時、素直にお兄ちゃんを頼っていたら、キャロルに寂しい思いをさせずに済んだのかな。

でも、今日もお兄ちゃんを頼る事が出来なかった。

私はお兄ちゃんに拒絶されるのが怖かったのかも知れない。


その日記から数年後、彼女の墓にはスズランの花が飾れていた。

そして彼女の大切な娘は不器用な魔術師の優しさに包まれている。



幕間を募集します

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