イ・コージの決意
side イ・コージ
涙で前が見えないぐらいに悲しいです、やり切れなくて無念です、史上最大の悲劇です!!
ザイツさん達が倒したというジャイアントクレイゴレームの核は巨大な上にきちんと魂抜きをしていて、まさに魔術マニア垂涎の逸品なんですけれどエレガンスの貴族に横取りされてしまいました。
さらに死者の洞窟を前にしての帰還命令が出されてしいました。
こうなれば
「パーパー、どこに行くのかなー?」
「コージ、見逃しませんよー?」
1人で抜け出そうとする私をキャロルとリアが両脇からしっかりとホールドしてきます。
「だって死者の洞窟ですよ?それに洞窟からは物凄い力の反応が3つもあったんですよ」1つは上級精霊魔術ですし、残りの2つはそれを遥かに上回る物でした。
「はいはーい、研究者魂も良いですけどー私達が見てる前では危ない所にはいかせませんからねー」
「パパ、ご飯食べに行こ!」
後ろ髪が引かれる思いとは、この事でしょうか。
しかし2人の柔らかい物に挟まれては私の研究者魂でも抗えません。
そんな事をしながら宿屋に戻ると所長からお呼びだしが掛かりました。
「やっぱりレクレールが関わっていましたか」
所長の話によるとアーキ姫はチャームを掛けられてキヨ・ワーグを殺害しレクレールの勇者パーティーに魔石を献上したとの事。
チャームを掛けたのは精霊騎士のエペイストと言う男性、エペイストは亡くなっていくキヨ・ワーグの前でアーキ姫にキスをしてみせたそうです。
「そしてエペイストは魔石をレクーに献上して光の上級精霊と契約をしたらしいですよ」
「あの精霊魔術は光の精霊の物でしたか。それと今回の件には異端者審問隊が関わっていますね」
「ほう、何故そう思うんですか?」
「話を聞くとキヨ・ワーグは刺されて直ぐには亡くなっています。普通はナイフに刺されて直ぐには死にませんよ。まあ、相手が暗殺のプロとかなら違いますけどね、ちなみに異端者審問隊の武器には毒が塗られているんですよ」
アレキスがエレガンスに来たのは勇者達の手引きと毒の精製の為でしょうね。
「やはりそうですか。いえ、私の部下の1人がキヨ・ワーグの死体を見たんですけれども刺されていたのは腹部らしいんですよ」
「それでアーキ姫はどうしてるんですか?」
昔なら興味を持ちませんでしたが今や恋人も義娘もいる身。
「スリープで眠らされて母親や侍女が付き添っているそうです。それとレクレールは全員出国したそうですよ」
――――――――――
事が事だけに相談をしなきゃいけません。
私が報告したのはガドインさん、エリーゼ先輩夫妻とリア、キャロル、クリスさん、チェルシーさんに集まってもらいました。
あくまでキャロルにはアレキスの事は内緒ですけども。
「それでコージ、レクレールの奴等は何をやらかしたいんだ?」
ガドインさんにはガーグ王子からも報告があったそうです。
「恐らくは戦でしょうね。レクレールは資源も作物も乏しい国ですから。レクレールが魔石で力を付ければ他の精霊は手を出せませんから」
「でもイ・コージさん、戦争には準備が必要じゃないですか?いくら勇者パーティーが強力な精霊と契約しても勝てる戦場は限られますますよ」
流石はクリスさん、目の付け所が現実的です。
チェルシーさんの目の輝きが倍増してます。
「まだ私の考えは懸念にしか過ぎません。それを防ぐ為には皆さんの協力が必要です」
私は皆さんに予想を伝えました。
「よし、分かった。王には俺が報告を入れておく」
流石はガドイン・ロックオーガ伯爵様、お花畑騎士団に期待が出来ないだけに頼りになります。
「コージ、お前が考えてる試作品が出来たら俺の所に持って来い。うちの連中のガタイは良く分かってるから直ぐに実装を出来る様にしてやる」
付き合いが長いだけあってエリーゼ先輩は私の考えが分かるみたいです。
「仕方ないですねー。何日もの徹夜は駄目ですけどコージがお仕事に集中出来る様に私がサポートしますよー」
確かに徹夜を続けて体を壊したら意味がないですからね。
本当にリアは出来た恋人兼助手です。
「パパ、私にも手伝わせて。データのまとめや簡単な事なら手伝えるよ」
パパはキャロルがいるだけで力が倍増します。
アレキス、今の私を昔の私と一緒に考えないで下さいね。
今の私には守る人がいる、そしてその人達が私に力を貸してくれるんですから。
また新しく連載を始めてしまいました
イ・コージもこの後は幕間になります