イ・コージの決意
暗めな話かもしれません
side イ・コージ
昔のアレキスは優しく澄んだ瞳をしていました、でも今私の目の前にいるアレキスの瞳は冷たく濁っています。
まぁ、40才近くになって澄んだ瞳をしていても困るんですけど。
「それは本気で言ってるんですか?」
「僕達はもう愛だ恋だ言う年じゃないだろ。コージ君、まさか好きだけで人生が上手くいくなんて言うんじゃないだろうね」
それは確かに正論なんですけどもね。
「誰も君の恋愛論は聞いていませんよ。アレキスはキャロルを娘と認めないんですね」
「君も家庭を持てば分かるよ。今のしあわせが壊れると分かっていて過去の過ちをわざわざ認める必要はないだろ?それよりコージ君、レクレールに来る気はないかい?マッドマジシャン、イ・コージに悪い待遇はしないよ」
くっ、家庭持ちが、嫁がいるのがそんなに偉いんですか?
しかも人の恥ずかしいアダ名まで出して。
「私は今の生活に満足していますよ。…それに私にはレクー様の光は清すぎて眩し過ぎます」
レクレールの国民の前でレクーを呼び捨て何かにしたら大変な事にになります。
「そうか残念だよ。でも遅かれ早かれオーディヌスの民はレクー様の素晴らしさを知る事になるんだよ」
アレキスはそう言うとニヤリと嫌な笑みを浮かべ去って行きました。
アレキス、君のあの爽やかな笑顔はもう見えれないんだね。
親友を信じたかったんですけども敵対しなきゃいけないみたいです。
…昔の親友を、昔愛した人の恋人を、義娘の本当の父親を私は殺せるんでしょうか?
もし殺したらキャロルのパパでいる資格はなくなりますね。
若かったから素直に夢を信じれた、若かったから素直に笑えた、若かったから希望があった。
今になったら夢は遠くになった、今になったら愛想で笑う様になった、今になったら希望より現実を知っていた。
そんな所でしょうか。
――――――――――
キャロルやリアと顔を会わせ辛く何となく来たのは傭兵隊の宿舎でした。
今回参加している人の中で年が近くてこんな話が出来るのはエリーゼ先輩の旦那様のガドイン伯爵ぐらいですし。
「おっコージ、傭兵隊に顔を出すとは珍しいな。どうした?」
貴族間の挨拶を終えたらしくガドイン伯爵は宿舎にいました。
「ガキの頃のダチと殺し合いか…。避けれねえのか」
「恐らくは。オーディヌスの民がレクレールを素晴らしさを知るって言うのは、言い方を変えれば侵略ですからね。レクレールの暗部を担っているのが異端者審問隊、アレキスはそこの隊長らしいですし」
私が嫌でもアレキスが動くでしょう。
「まっ、確かにガキの頃と違って背負うモノが増えちまったからな。俺にも家族、伯爵家の家来に領民、傭兵隊の隊員、自分の気持ちより優先するモノばかりだ」
私なら仕事、恋人、義娘、職場の仲間、家族ですかね。
「大切だから嫌われても守らなきゃいけないんですよね。自分の命に変えてでも」
リアやキャロルの人生をレクレールの自由にさせるつもりはないですし。
「あれだよな、確かに愛や恋、好きや嫌いじゃ片づけれねえ事が増えちまったけどよ。男は自分が守らなきゃいけねえって決めたモノを命懸けで守ってくしかねえんだよ」
私が守りたいモノ、それはルーンランドで見つけた賑やかで小さな幸せがある生活。
若いし美人なのに私みたいなおじさんを愛してくれたリア。
殆ど血の繋がっていない私をパパと慕ってくれる義娘キャロル。
いい年になった私を本気で叱ってくれるエリーゼ先輩。
癖は強いけれども悪い人ではない職場の上司の方々。
貴族なのに偉ぶらないクリスさんにガドイン伯爵。
私なんかを慕ってくれるカペー君にチェルシーさんにソニアさん。
最初から迷う事なんてなかったんです。
レクレールが私の大切なモノを傷つけるのなら、絶対に返り討ちにしてみせます。
side リア
帰って来たコージから聞いた話はショックなものでした。
「コージは平気なんですかー?昔の親友と殺し合いなんてー」
そんな事をしたらコージはまた闇に染まってしまう。
「今はアレキスより大切なモノがありますから。闇に染まっても汚れでもって大切にしたい人がいます
コージの目には強い意志が宿っていました。
「でも忘れちゃ嫌ですよー、コージは私の大切な大好きな恋人なんですからねー。コージと同じで私も大切な人を失いたくないんですよー」
気がつくと私は大切な恋人にギュッと抱きついていた。
この手の中から彼が居なくならない様に。
side イ・コージ
前夜祭はまだ終わらない時間なのに所長から呼び出しがありました。
「イ・コージさん、前夜祭でエレガンスの魔石が盗まれました。盗まれたのはクレイゴーレムを作る為の魔石で盗んだのは宮廷ネクロマンサーのキヨ・ワーグです。念の為に準備をお願いします」
早速、私の防衛戦が始まった様ですね。
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