おじさんと女難
side イ・コージ
ワルキュレアが見えてきたのは丁度昼頃でした、今から宿屋に入れば旅の疲れもとれると思います。
前回の出張時と違い今回は綺麗なローブを身につけてるので宿泊拒否はされないでしょう。
何よりもこのローブは大人気アイドルグループマジックガールズの中でも一番可愛くて魅力的で義父思いのキャロルが選んでくれたローブだから間違いありません。
…でも見た目と体型は前の時より劣化してるんですけどね。
ワルキュレアへの挨拶は王族の方々がしてくれたので問題はないのですが
「メイ主任お久しぶりです」
メイさんはワルキュレアに勤めていたのですから、挨拶に来る知人がいてもおかしくありません。
「ユーリー、僕はもう主任じゃないよ。でも元気そうで何よりだ」
話し掛けてきたのはグレーのスーツをきっちりと着こんだ青い髪の女性、何よりも鋭い眼光が私に恐怖を感じさせます。
「メイ主任程の才女を失ったのはワルキュレアにとっては国家的損失です。なぜ醜い男が幅を効かせているルーンランドなんかに行ったのですか?」
これは醜い男の代表選手である私は隠れておいた方が安全ですよね。
「簡単な事だよ。ルーンランドの方が魔術が発展しているし、何より好きな研究が自由に出来るからね」
ちなみに私はルーンランドに帰ったら依頼が山積みで自由時間もないでしょう。
「そうだユーリーにも僕の同僚を紹介しよう。まず研究開発部3課の主任エリーゼ・ロックオーガ主任。エリーゼ主任は使節団の1人ロックオーガ伯爵の夫人でもあられる」
当然、年功序列からいっても紹介の順番はエリーゼ先輩です。
「夫人?ルーンランドではいまだにそんなくだらない呼称を使っているんですね」
ユーリーさん初対面でエリーゼ先輩にケンカを売る様な真似は勘弁して欲しいんですけど。
「あん?最近のガキは礼儀を知らねえみたいだな。まっ国益も考えれねえお子様じゃ仕様がねえか」
ほら、ご機嫌斜めになっちゃったじゃないですか。
荒れた時の先輩の酒癖は最悪なんですよ。
「次はリア・クローゼさん。2課で助手をしている」
うん、メイさん紹介があっさりし過ぎじゃないですか。
「随分とだらしない格好をしてますね。自立した女性なら服もきちんとして欲しいです」
「別にー警戒心丸出しの貴女に言われても平気ですよー。私にはちゃんと恋人もいますしー」
リア、その恋人の胃の事も考えて欲しいんですけども。
そしてメイさん、ワルキュレアは女尊男卑ですから私の事は無視して下さい。
「そして僕が尊敬する魔術師の1人、イ・コージ先輩だ。イ・コージ先輩はルーンランド屈指の魔術研究者でもある」
何でしょう、もの凄くハードルをあげられた上にリアの視線がとてつもなく痛いです。
「この醜い男が?メイ主任もご冗談がうまい」
せせら笑うユーリーさん、でもここは大人の態度で流しておきましょう。
「コージ先輩は戦闘魔術の達人でもあるんだ。ユーリー修行をつけてもらったらどうだい?」
勝てばワルキュレアに恨まれますし、負ければ…。
「コージー、分かってるよな。きっちりカタをつけてこい」
先輩、私がやられる可能性も考えて欲しいんですけども。
「コージー、私の恋人なら言わなくても分かりますよね」
リア、彼氏を他の女性にけしかけるのは趣味がよろしくないと思うんですけど。
「メイさん、私は女性に手をあげるのは好きじゃないんですよ。それに国際的にも遺恨を残したくありませんし」イ・コージだけに遺恨はいかんじぃ・いこんじぃ・イ・コージ、苦しい上にこの空気で言う度胸なんてありません。
「女が男に負ける訳がない。それに親善試合の形にすれば遺恨は生まれません」
忘れてました、ワルキュレアは女性優位思考なんですよね。
ユーリーさんは男の私に馬鹿にされたと思ったらしくご機嫌斜めです。
(先輩、ユーリーは魔術師としての才能は凄いが、偏執的な思考が成長を阻害しているんだよ。ぜひ先輩にユーリーの鼻を折って欲しいんだ)
メイさんが耳元で話し掛けてきした。
こういう風に囁かれて私は勘違いしたんですよね。
最悪な事にエレガンスに行く船は明日の朝、時間だけはたっぷりとあります。でもおじさんには旅の疲れが累積してるんですけどね。
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ワルキュレアは女性優位思考、しかも魔術師の試合には腕力は関係ありません。
私とメイさんの親善試合は私の期待を裏切りスムーズに認証されました。
所長からは"ワルキュレアはルーンランドの魔術師に勝って政治的に利用するつもりみたいですよ"とのご忠告。
つまり勝つ気が満々と、何の試合でもとアウェイ側よりホーム側が有利なのは当たり前ですしね。
気体魔術やビルクーロさんは隠しておきたいですから、私の条件はさらに不利になります。
メイさんからの情報によると、ユーリーさんの名前はユーリー・ジョンソン。
生粋のワルキュレアッ娘で氷魔術が得意だそうです。
寒さに弱くなってきた私としては勘弁して欲しいんですけど。
これが若くてイケメンな男で、リアやキャロルを口説こうとしているんなら私も本気をだせるんですけどね。
今回はどこでレクレール関係者が見てるか分かりませんから、誰にでも使える基礎魔法でユーリーさんに勝たなければいけません。
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