イ・コージの過去と闇
昨日頂いた感想を元に話の進め方を決めました
side イ・コージ
「所長、これが今回のマジックアイティムになります。実験の結果マリアンヌさんは金欲、クリスさんは拒絶と怒りの感情を表しました。これをクリスさんに貸せばレディス・バーには通わなくなると思います」
「貸すんですか?」
「周りの人間が全てが自分に良い感情を持っているなんてありえませんからね。下手したら人間恐怖症になりかねません。レディス・バーに通わなくなっても、それじゃ意味がないですから」
自分が作った物で人が不幸になるのは、あまり愉快じゃないですし
「わかりました。クリスさんには私から新アイティムの使用モニターとして協力依頼の形で渡します」
side クリス
金・金・金・みんな僕の事を金づるとしか見てないんだ。
アゲハちゃんもマリアンヌさんも執事もメイドも……
金脈をなんて見つけなきゃ良かった。
こんな指輪の使用モニターの協力なんてしなきゃ良かった。
僕は金しか価値がない人間だなんて知りたくもなかった……
side イ・コージ
今日も所長に呼ばれました。
まさかあの指輪じゃ効果がなかったんでしょうか。
「イ・コージ君、結果だけ言うとクリスさんはレディス・バー通いを止めた。しかし…」
あー、所長の顔が厳しいですね。
予想はしていたんですけども
「クリスさんは、人間不信になりましたか。流石にアレクンサンドラ子爵から苦情が来ていますよね」
減点物ですね。
下手したら…まぁ元の木阿弥と思いましょう。
「いえ、むしろ感謝されました。マリアンヌさんも婚約を解消したみたいですよ」
それじゃクリスさんが人間不信になっても仕方ないですよね
「親御さんも同じ穴のムジナですか。わかりました、最後まで関わるとします」
アレクサンドラ子爵にとって大切なのは家名な様です。
指輪を作った責任、そして同じ人間不信だった私にはクリスさんと話す責任がありますね。
side クリス
部屋から出るのが怖い
誰かに会うのが怖い
あれから僕は部屋から出る事ができないでいた。
そんなある日、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
「クリス様、失礼します」
そう言って部屋に入ってきたのは2人の男性。
1人はヤ・ツーレさん、もう1人は痩せたヤ・ツーレと対照的に太った中年男性。
「クリス様指輪のモニター協力ありがとうごさいます。開発者のイ・コージ共々こうしてお礼にをしたくてお邪魔させてもらいました」
ヤ・ツーレさんもイ・コージさんも穏やかな笑顔を浮かべている。
(あんな表情をしても、腹の中じゃ僕の事を金づるってしか見てないんだ)
でも指輪は金色じゃなく澄んだ青色をしていた…
「作った本人が言うのもなんですが、その指輪はあくまで対象者の一番強い感情を表すだけですから決して万能ではないんですよ。それに人の気持ちなんて結構変わるものですしね」
「慰めですか?」
確か青は癒しの色、癒しと言えば聞こえはいいけどもそれは哀れみとも捉える事ができる。
「いえいえ、今の貴方を見ていると他人に思えなくて。おじさんの老婆心だと思って下さい」
イ・コージさんは、どこか遠くを見ながら話始めたんです。
「昔ある国に1人の少年がいました。その子は魔術の才能があり、その才能を磨く為に必死に努力をしたんですよ。友達とも遊ばず恋もしないで来る日も来る日も魔術を磨いたんです。努力は人を裏切らないと先生に言われた言葉を信じてね」
イ・コージさんは深いため息をついた後に、また話始めました。
「少年は夢を叶えて自分の国の魔法研究所に勤める事ができたんです。少年は魔術の研究に没頭し気づけばおじさんになっていました。でもある日おじさんは全てを失いました……確かに努力は裏切りませんでしたが人に裏切られちゃったんですよ」
「裏切られたって、何があったんですか?」
多分そのおじさんはイ・コージさん…
「上司に研究成果を奪われたんですよ。しかも歪な方に変えられてね…他人を信用できなくなったおじさんは研究成果を持ち出して研究所から逃げたんです。
研究成果が欲しい上司は追っ手を差し向けてきました。殺してでも奪えって命令をしてね」
イ・コージさんの顔が闇に包まれました…
「自衛とは言え人を殺めたおじさんは故郷にも人の群れにも戻れなくなって孤独となり、終いには冒険者に討伐をされて地下牢に入れらてしまったんですよ。でもね貴方は裏切られても誰も傷つけなかった、だから大丈夫です。そのおじさんも違う国で頑張っています。だから貴方も歩きだして下さい」
side イ・コージ
「クリスさん大丈夫ですかね…」
「後は本人次第でしょう。それよりも困った人が着いて来ていますね。あそこの路地に入ってお話を聞きますよ」
やれやれ、所長は面倒事は早めに潰すタイプなんでしょう
路地に入って人気が途絶えた時です
「レイジー、アイツだよ。あの親父が来てからカモも来なくなったんだよ」
あれはクリスさんがはまっていたアゲハとか言うレディス・バーの人
隣のレイジーって言う人が彼氏、所謂ヒモらしいです
「おっさん達が余計な事したせいでよー。デボラが稼げなくなちゃったんだぜ。責任をとって金をよこしな」
「お金なら自分で働いて稼いで下さい。貴方みたいなお子様なら親御さんからお小遣いをもらうのが一番でしょうけども」
「あぁん!ガキ扱いしてんじゃねーよ。俺はキレたらやばいんだぜ、素直に金をよこしな」
貴方の言動がお子様そのものなんですけどね
「所長どうしますか?」
私は立場上、公的機関とは関われないんですから
「後始末は私がしますのでイ・コージさんの力を見せて下さい」
「おっさん俺は人を殺した事があるんだぜ!殺されたくなかったら素直に言う事を聞きな」
ナイフを抜きましたか……
「嘘ですね。人を殺めた人間はそれを手柄みたいに吹聴しませんよ。それに貴方には人を殺した暗さがありません」
イ・コージの顔が暗い闇に包まれる。
目に至っては深い洞穴を思わせる無限の闇を連想させる程に冷たく暗い物となっていた。
「お望み通り、私は貴方を1人の大人として扱います。だからきちんと責任をとってもらいますよ」
side ヤ・ツーレ
イ・コージさんは袖を捲り上げましたね
(あれはブレスットがですか。埋め込んであるのは触媒の魔石ですね)
その中にある黄色い魔石にイ・コージさんが、触れるとレイジーを黄色いガスがを包み込ました。
(あれが報告書にあったイ・コージさんの気体魔法ですか)
「えっ!レイジー何したの?」
レイジーは床に倒れ込み涎を垂らして呻き声をあげています。
あれは恐らく
「殺す価値もなさそうなので、麻痺性の気体魔法で大人しくなってもらいました」
イ・コージさんの声には一切の感情がありません。
「なんで、こんな酷い事をするの?レイジーは、まだ何もしてないじゃない」
「貴女は馬鹿ですか。何かされたら困るから麻痺させたんですよ?ご希望なら腐食魔法で顔を潰してあげますよ。もちろん貴女も一緒にね」
女性の悲痛な叫び声に反比例するかの様にイ・コージさんの声は冷たくなっていきます。
「やめてっ。謝るしお金も払うし何でもするから」
「自惚れないで下さい。私は貴女に価値を一切感じていません。貴方達は大人なんでしょう?社会のルールから逸脱しておいて被害者面をするもんじゃありません。後は私の後ろにいる方が貴方達に処断を下してくれますよ」
(流石は元死刑囚ですね。普段の温厚な顔の下には酷薄な獣が眠っていましたか。これなら違うお仕事も頼めるでしょう)
女性が私を哀願するような目で見てきています。
この2人の使い道ですか……
「貴方達2人には鉱山で働いてもらいます。肉体労働をしてお金の大切さを学んで下さい」
感想お待ちしております