伝えられた気持ち
58話目でようやくの展開です。
side イ・コージ
はい?今リアは、なんて言いました?
「私はコージさんの事を愛していますー。だから邪魔しないで下さいー」
これはあれでしよね、リディさんを近づけない為の嘘すよね。
でも嘘をつくならもう少しうまくつかないと。
「貴女バカじゃないの?こんなキモいおっさんを愛してるってギャグ?どうせ貴女もお金目当てなんでしょ?」
ほ、本人を目の前にして、それを言います?
「黙れ。今は私は大事な所なんですよー。バインド(拘束)&サイレント(沈黙)」
リアから鬼気迫る物を感じます。
バインドやサイレントの様な精神関与魔術は術者の精神状態が威力に影響するんですよ。結果リディさんはしゃべる所か身動き一つ出来なくなっています。
「えと、リア本気ですか?」
傷は浅いうちが治りが早いんですよね。
演技でも好きと言ってもらえたんですから良しとしましょう。
「本気ですよー。私はコージさんの事が好きですー」
「私はおじさんですよ。見た目も悪いですし」
今キモいって言われたばかりです。
「年は関係ありませー。私はコージさんが好きなんですー。最初はコージさんの魔術能力だけに興味を持っていましたー。でもコージさんと過ごしているうちに自分の気持ちに気づいたんですー」
リアがグイグイと迫ってきます。
「気持ちですか?」
「私はー初代マジックガールズのメンバーなんですよー」
初代と言うと人気が加熱し過ぎて騒ぎになったんですよね。
「もしかして魔法学院を退学させられたのは」
「私ですよー。あれから男の人の視線を避ける為に伊達眼鏡を掛けて、わざと髪もボサボサにしましたー。男の人はー見た目で判断するみたいで誰も私に興味を持たなくなりましたー。でもコージさんはー眼鏡を掛けていない私を見ても態度を変えませんでしたー」
さらにグイグイと迫り来るリア、私との距離は殆どありません。
「気持ちは嬉しいんですけれど、私なんかと付き合っても楽しくないと思いますよ」
「コージさん、さっきからゴチャゴチャとうるさいですよー。私の気持ちを見せますー」
そう言うとリアは顔を近づけてきて、私の口に柔らかい唇をつけてきました。
これは…キスですか?
あ、頭の処理が追いつきません。
えと、リアが私を好きだと言って、リアは初代マジックガールズのメンバーで、リアが私にキスをしてきて。
予想外のことばかりで巧く考えがまとまりません。
「コージさん、逃がしませんからねー。キャロルちゃんもお義母さんお義姉さんも私の応援してくれてるんですよー」
なんですか、その脱出不可能な包囲網は。
「逃げませんよ。私なんかで良いんですか?」
「しつこいですよ。コージさんじゃなきゃ嫌なんです」
「えと、そのまず場所を変えませんか?私達かなり目立ってますよ」
ここは宝石店ですし、リディさんばバインドされてジタバタしているし、さらに美女がおじさんに愛の告白なんてしたもんですから私とリアは完璧に注目の的です。
「それと私から指輪を贈らせてもらって良いですか?上司としてではなく恋人としてリアに指輪を贈らせて下さい」
「コージさん、それって」
「店主さんそこでジタバタしている人を外に出して下さい。それとリアの指輪のサイズをはかって下さいね。リアこれからは仕事以外ならコージと呼んで下さい」
照れ臭いので一気にまくし立てます。
「コージ、指輪はどの指にはめるやつですかー?私としては一気に左手の薬指でも構いませんよー」
「ま、まだ右手で十分でしょ」
「うふふー、照れてるんですかー?可愛いですねー」
実家に戻ると、何かを察した母さんが泣きました。
side イ・ケメン
コージ兄さんが帰郷したとの知らせを聞いてので帰ったら若くて美人な恋人を連れて来ていた。
やばい、兄さんもまだ独身だとか言って現実逃避をしていたらィ家のラストワンになってしまった。
姪っ子のライラにはしみじみと
「ケメンおじさんファイト」
とか励まされるし、
コージ兄さんからは
「ケメンもルーンランドに来てみないか」
なんて上から目線で誘われるし。
俺の仕事のマジックシュナイダー(魔術の仕立屋)は、ルーンランドにも職人は少ないと聞いている。
マジックシュナイダーは服を仕立てる際に指定された魔術効果を付与する仕事。
こうなれば俺もルーンランドで一旗あげてやる。
side ライラ
驚いた、コージおじさんに彼女が出来た。
しかもそれが初代マジックガールズでセンターを勤めたリアさんだなんて。
不覚にもリアさんだとは絵姿と雰囲気がガラリと変わっていて気がつかなかった。
デュクセンにいてもイ・ライラなんてフザケた名前の俺には幸せは訪れないと思う。
こうなれば俺もケメンおじさんと一緒にルーンランドに行ってアイドルを目指してやる。
新規連載を始めました。
下忍の権蔵が異世界で手に入れたモノ
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