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魔術師の母親

ようやく書けました。


side イ・コージ


 普通は生まれの故郷って暖かいものですよね。

でも私がホーフェンに持っているイメージは薄暗く冷たい物。

思い出せるのは鈍色で曇った空と冷たい視線の町人達、そし殻に閉じこもって勉強ばかりしていた自分。

幸い家族仲は良好でしたし、マリーとの思い出も今となっては大切な宝物です。


 キトウセン兄さんとライラは用事があるとの事で、私達だけで実家を目指してホーフェンの街を歩く事になりました。


「コージさん、ホーフェンは本当にコージさんのー古里なんですかー?」


「リア、私は正真正銘のホーフェンっ子ですよ。どうかしましたか?」


ちなみにデュクセンでホーフェンっ子はお洒落さんを意味するんですけどね。


「だって先からー誰もコージさんに声を掛けないじゃないですかー?それに何か視線がなま暖かい感じがするんですよー」


…ホーフェンを出てから交流があった人は家族を抜かせば1人か2人、それも私が魔法研究所に勤めていたからですし。


「本当は私に向けられる視線は冷たい物なんですよ。でも今はジガーク様の依頼で来た他国人ですから。まあ一番は私に仲の良い友人がいないのが原因なんですけどね」


領主の依頼で来た他国人は蓋を開けてみればホーフェンの鼻つまみ者のイ・コージ。

イ・コージは嫌いだけれども粗略にしてジガーク様に告げ口をされるのが怖いんでしょう。


「でもパ…コージおじさんはルーンランドなら人気者なのに何でなのかな?」


キャロル、それは親の欲目ならね義娘の欲目ですよ。


「お国柄ですね。デュクセンは騎士道を重んじる国ですしホーフェンは服飾の街ですからフッションセンスが重要視されます。かたやルーンランドは魔力や知識重んじますから」


私から見れば騎士道精神は非効率的ですし、フッションセンスに至っては皆無です。


「それだけ?パパは凄く優しいのにおかしいよ!!」


キャロルは興奮の余り、私をパパと呼んでくれました。

キャロルから久しぶりにパパと呼ばれて思わず目尻が下がってしまいます。


「昔の私は殆ど笑いませんでしたし、研究に不必要な無駄話もしませんでした。何よりも他人を一切信用していませんでした。そんな人間を必要とする人はいませんよ」


マリーとアレキスに裏切られてから心を閉ざしていましたし、エリーゼ先輩が卒業してからは殆ど1人でしたね。

私は深い溜め息をついた後に笑顔でキャロル達に向き合いました。


「ルーンランドに来る前に私は全てを無くしました。夢も希望も人生さえも。でもルーンランドに来て私は生まれ変わったんですよ、貴女達に出会えたお陰でね」



side キャロル


 パパは吹っ切れた様に笑ったけれども何か納得がいかない。

でも物は考え様、これでパパがデュクセンに残る確率は低くなったんだもん。


「さて着きましたよ。ここが私の実家です。コージです、ただいま戻りました」

パパがお家に声を掛けると60歳くらいの黒髪の女性が出て来た。


「はい、お帰り。この娘がマリーの娘かい?うん似てる、似てる。キャロルって言ったね、貴女は身内なんだから変な気を使わなくて良いからね」


パパのお母さんは私に優しく話し掛けてくれた。


「はい、キャロル・リーチェです。しばらくご厄介になります」


「挨拶もしっかり出来てるね。墓参りに明日でも連れて行ってあげるよ。それとリア・クローゼさんでしたね、うちの馬鹿息子の為にわざわざすいません」


リアさんアピールのチャンスだよ。

でも肝心のリアさんはガッチガッチに緊張していた。


side リア


 あの人が私の未来のお姑さんなんですねー。

初対面で好印象を得てお義母さんを味方につけてみせますよー。

キャロルとのお話が終わったらお淑やかな挨拶を決めて見せますー。


「挨拶もしっかり出来てるね。墓参りに明日でも連れて行ってあげるよ。それとリア・クローゼさんでしたね、うちの馬鹿息子の為にわざわざすいません」


えっ?

そんないきなりだと気持ちの準備が出来ていませんよー。


「い、い、いえ。こ、今回の出張はー私がコージさんにお願いして連れ来てもらったんであります。あのそのふつつか者ですがよろしくお願いしますー」


わ、私は何を言ってるんですか?

色々とすっ飛ばしてふつつか者なんて焦り過ぎですー。


「へー、コージに着いて来んですか。まあ、この子は魔術の腕だけは確かですからね」


誤解、誤解ですー。

それじゃまるで私がコージさんに魔術を教えて欲しく着いて来たみたいじゃないですかー?

ただでさえコージさんは鈍感なのに、その関係になったらますます距離が縮まらなくなっちゃいますー。


「わ、私が覚えたいのは魔術じゃなくコージさんのお袋の味なんですー」


言いましたー、私リア・クローゼは言っちゃいましたー。

キャロルは顔を赤くして、お義母さんはびっくりして、そして肝心のコージさんは穏やかに微笑んでーぇ?!!


コージさん貴方って人は、今のプロポーズともとれる言葉を素直に料理を覚えに来たって理解したんですねー。

まさかお姑さん以上に貴方の鈍感さが敵になるとはー。


「そうですか。リアさんでしたね、旅の疲れがあるかもしれませんが今からお昼の支度をするので良かったら見ますか?」


コージさんはホーフェンの図書館に行っちゃいますしー。

もうこうなれば、コージさんのお袋の味を完璧にマスターしてみせますよー。

ところがです、私に幸運の女神様が微笑んでくれたんです。


「リアさんはもしかしたらうちの魔術馬鹿を好きなんですか?違ったらご免なさいね。あの鈍感息子は気づいてないみたいですけど」


「はいっ!!私はコージさんを好きですー。年が離れていても鈍感でもコージさんが好きなんですー」


もう自棄です、お義母さんに反対されてもー諦める気はありませんー。


「そうですか…それならあの子の好きな料理をしっかり覚えて行って下さい。でもコージは自分が女性に好かれるなんて事は最初から考えていないと思いますから、はっきり言わないと伝わらないと思いますよ」


うっふっふ、コージさん包囲網は完成しつつありますからねー。


次から魔石研究になります

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