それぞれの白い日
今回はイ・コージより他の人が目立つかも
side イ・コージ
ザイツさんから貰ったホワイトデイ覚え書きなる物を見て思わず溜め息をこぼしてしまいました。
ホワイトデイ注意点
1・義理か本命かを見極めなければ痛い人を扱いされます。
2・お返しは高価過ぎるとどん引きされます。
3・何も返さないと、それまでの関係は崩れる事があります。(義理の場合も人間関係が気まずくなるので、安価な物でも返しておきましょう)
4・身内からのチョコにもきちんとお返しをしましょう。
5・趣味の悪いお返しは最悪捨てられます。場合によっては転売の危険性もあります。
これって内容がネガティブ過ぎませんか?
キャロルはホワイトデイをみんな楽しみにしているって言ってましたけど、これじゃ苦痛にしかならないですよ。
幸いデュクセンには色々なお店がありますから、何も返せないっての事はないんですけどね。
でもどうしましょう。
覚え書きに書いてあるお菓子は手に入れようがありませんし。
私にアクセサリーの善し悪しなんて分かりませんよ。
キャロルには魔術書とか…は駄目ですよね、仮にも年頃の娘なんですし。
でもただでさえ可愛いキャロルがアクセサリーで魅力がアップしたお父さんの心配がうなぎ昇りから龍になって天まで昇っちゃいますよ。
しかし黙って義娘の幸せを見守るのも義パパの勤め、涙を飲んでアクセサリーを店員に選んでもらいましょう。
それと一番の難題はリアです、義理とは言えお菓子は返せませんから同じくアクセサリーにしておきますか、普段からお世話になっていますし。
20歳の娘と17歳の娘への贈り物、これなら怪しまれません。
宝石店には魔石を卸していたから店の場所もバッチリです。
「いらっしゃいませ…。これはイ・コージさん生きていたんですか!」
店長が私を見ると幽霊でも見た様な目で驚いています。
「そうですか。今はルーンランドの魔法研究所にお勤めなんですか。それで今日は何を卸してくれるんですか?」
どうやらデュクセンで私は無実の罪で追われていた事になっている様です。
しかし顔見知り店長が相手だと娘計画が使えません。
仕方ないです、ここは正直に言いますか、幸い、キャロルの絵姿はお守りとして常備していますし、リアの絵姿はキャロルに持たされました。
でもリアは若い頃で眼鏡もかけていませんが。
「イ・コージさん騙されていませんか?まあ助手と縁戚の娘なら大丈夫でしょうけども」
絵姿を見て不安がられるって、私はどれだけ信用ないんですか?
「なっ、私達の関係は至って良好ですよ」
「イ・コージさん前もそう言って喫茶店のリディに指輪を買おうとしたのを私が止めたじゃないですか。言っちゃなんですけども、リディなんて、この2人の足下にお及ばないんですよ」
「くっ、キャロルは私を慕ってくれていますしリアも心配をしてくれるんですよ」
「分かりました。一度お2人をお連れ下さい、もし本当に良好な関係なら格安で提供しますよ。もし違うならイ・コージさんが魔石を格安で提供して下さい」
いざとなれば羽を伸ばしましょう計画のお金を流用します。
side キャロル
パパがバレンタインのお返しにアクセサリーをプレゼントしてくれるんだって。
連れて来てもらったのは、旅行パンフレットにも載ってる有名宝石店。
「パパ、良いの?ここ凄く有名で高いんだよ」
確かに、このお店は買えないけれども見てみたいお店だった。
「これをどうぞ」
お店の人が勧めてくれたねは、サフィアのネックレス。
デザインも今風で、嬉しいんだけど、お値段もそれなり、そんな私の様子を見てパパはネックレスを買ってくれた。
「パパ…ありがと。へっへっこういうのに凄く憧れていたんだ。父親にアクセサリー買ってもらうなんて私には無理だって思ってたし」
そんな私の頭をパパは優しく撫でてくれた。
そうだ!帰りはパパと腕を組んで歩こう。
今のイ・コージは幸せだってデュクセンの人に見てもらうんだ。
side リア
コージさんがバレンタインのお礼にアクセサリーを買ってくれるんですよー。
そうとなれば眼鏡を外して化粧もーきちんとしちゃいますー。だってコージさんが何時リディとか言う馬鹿女と再会するかー分かりません。
貴女が入る隙はー、これっぽっちもーないって事を見せてやる必要があるんですー。
コージさんが私に買ってくれたのは、ルビーをはめ込んだ髪飾りでしたー。
そうですかー、これがコージさんの気持ちなんですねー。
嫌いな女に高い物をくれる訳がないですもんねー。
コージさんは誰にも渡しませんよー。
side チェルシー
今日はクリス様に呼ばれてお屋敷に来てます。
元メイド仲間からの羨望の眼差しを受けながらクリス様の執務室へ。
そこの新人メイド、君とはクリス様に対する愛の深さも歴史違うんだからねっ。
「クリス様、僕に用事ってなんですか?」
「チェルシー、バレンタインにチョコをくれたろ。そのお礼をしたくてさ」
クリス様がくれたのはシルバーのネックレス。
でもただのネックレスじゃないんですっ。
「これってアレクサンドラ家の紋章じゃないですか。駄目ですよっ」
元メイドがつけていい代物じゃありません。
「裏を見て気に入ってもらえたら受け取ってくれるかな。まだ早いけども未来への約束だよ」
紋章の裏にはチェルシー・アレクサンドラと刻まれていました。
決めました!!クリス様の想いに応える為にも
僕は素敵な子爵婦人になるっ!!
side ソニア
私はその日、たまたま傭兵隊の隊所の近くにいました。
あくまでたまたま、決してカッペーからの連絡が待てずに、偶然会いましたわねとか言いたい為じゃないですわよ。
「よお、性悪ネコ娘。残念ながらカッペーは急ぎの仕事で出動したよ」
この優雅さの欠片もない尊大な態度は
「何をいってるですか?ロックオーガ伯爵婦人。私はたまたま近くを散歩していただけですわ」
この女には伯爵夫人じゃなく傍若無人の方が似合うと思います。
「へー、たまたまか。それならカッペーから預かった品はいらないな。なんなら俺が貰っといてやるぜ」
傍若無人はこれみよがしに紙袋をブラブラさせている。
「くっ、私はお菓子を欲しがる程お子様じゃないですからっ(ちょっと、そんなに振ったら中のお菓子が壊れるでしょ!!)」
「残念ながら菓子じゃねえんだよな。カッペーの奴、依頼のついでにキャッツアイを採集してきてペンダントに加工したんだよ。最もお前の好きそうなブランド物じゃないがな」
今度は私の頭の上でペンダントをチラつかせる。
「それなら早く寄越しなさい!!(ペンダントに手垢がつくー。猫人族にとってキャッツアイは神聖な石、しかもカッペーからのプレゼントー)」
「ほーれ、ほれっ欲しいか?」
腹が立つ事に傍若無人は私の背が届かないギリギリの所でペンダントをブラブラさせている。
「ニャッ、ニャッ、フニャーッ」
でも猫人族を舐めないで欲しい、敏捷さは他の人族よりも優れているんだから。
ようやく手に入れたペンダントは飾り気はないけど立派なキャッツアイがはめこんであった。
(カッペーの馬鹿、こんな無理しなくても良いのに)
私の手の中で緑色の石は太陽の光を反射して美しく輝いている。
「へー、いい物を持ってんじゃねーか。嬢ちゃんそれをよこしな」
私に近づいて来たのは2m近いいかつい2人の男。
「まねっ、これはカッペーが、けだんだがらっ(駄目、これはカッペーがくれたんだから)」
ペンダントを庇う様に胸に抱く私に男が近づいてくる。
「おい、人ん家の庭でふざけた真似すんじゃないよ」
その言葉が終わらないうちちに2人が吹き飛んでいた。
倒れた男の頬には殴られた後がある。
み、見えなかった、敏捷さを誇る猫人族の私が。
「大丈夫か。おいっ早くこの馬鹿をふん縛れ」
「はいっ!姐さん」
か、格好良い。
私も何時かエリーゼ様じゃなく姐さんみたいな女になりたい。
そうカッペーと一緒にロックオーガ伯爵夫婦みたいになるんだ。
エリーゼさんが一番格好良くなった




