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久しぶりの故郷

最近ネーミング辞典なる物を買ったので、早速活用しました

side イ・コージ


ガラリ、ガラリと響きわたる車輪の音は変わりはしないのに目の前にある砦を抜ければ、国は私の故郷デュクセン皇国に変わります。


ルーンランドとデュクセンを分けているのはヴルッエル川(根の川)。

名前の通り大木の様に太い主流から根の様に幾多物の支流に分かれていきます。


またの名前をアップシート川(別れの川)、一度分かれた運命には二度と戻る事はできない様にヴルッエルの主流で分かれた2隻の船は2度と同じ運命を辿る事がない、そんな謂われだっと思います。

一度離れた私に故郷デュクセンはどんな運命をもたらしてくれるのでしょうか。


乗り合い馬車が砦の前で停車しました。

国外に行く際に乗り合い馬車に乗るためには、身分証明がしっかりしてなくては行けません。

お陰で入国審査は簡単になりますが。


「次、イ・コージ。…入国理由はシールン領主ジガーク様よりの依頼か、入国を許可する」


審査を担当しているのは、皇国騎士団の方でしょう。


威圧感たっぷりの鎧は騎士の誉れと威厳を保つ為でしょうね。

騎士様に深々と会釈をして石畳に刻まれた線を踏み越えました。

ここから向こうが故郷デュクセンなんですけども、私には実感も郷愁も沸いてきませんでした。


「次、リア・クローゼ。…イ・コージの助手か。入国を許可する」


「ありがとうーこざいますー」


リアは軽く会釈をしてデュクセンに入り、線の向こうで待っている私に小走りで駆け寄ってきました。


「次、キャロル・リーチェ。入国理由は祖先の墓参り、未成年としての身元保証人はイ・コージ並びにルーンランドのアレクサンドラ子爵の嫡男クリス様ですか。入国を許可する」


キャロルは一目散に私の元に駆け寄ってきました。


「ここからがパパの故郷デュクセン皇国なんだね。当たり前だけどまだルーンランドとあんまり変わらないね」


「ここは国境付近ですからね。リア、キャロル、首都デュクセンでは私と他人の振りをしてくれませんか?」


「えー!!どうしてー!!パパ、私の事を嫌いになったの?」


キャロルが目を潤ませて私を見つめてきます。

なんでしょう、この可愛すぎる義娘は、人目がなかったらギュッとして頭を撫でまくりますよ。


「コージさーん、私達を見られちゃまずい娘がいるんですねー?はっ!!まだリディとか言う女に未練があるんですねっー」


リアなんでその名前を知ってるんですか?そんな疑問を吹き飛ばす迫力でリアが迫ってきます。


「デュクセンで私を恨んでいる人が少なくないんですよ。私が殺した冒険者のご家族や恋人、チャラ所長つまりイース家の人々、規模が縮小された魔法研究所の元同僚達、彼等は私を殺したい程に恨んでいるでしょう」


「コージさん…」


「それとキャロルのパパもルーンランドに戻るまで禁止にしましょう。さて、それでは首都デュクセンに行きますか。デュクセンに着くまでは何時も通りでお願いしますよ」


乗り合い馬車が再び首都デュクセンを目指して動き始めました。


「パ…コージおじさんはデュクセンにはどんな思い出があるの?」


本当なら楽しい思い出話の1つでもしたいのですが


「少年時代は魔術の勉強に明け暮れていましたし、大人になってからは魔術の研究に明け暮れていましたので、乗り合い馬車の中で出来る様な思い出はないんですよ」


そして罪悪感からでしょうか。

私には晴天のデュクセン皇国も何故かくすんで見えています。


「うー、つまんない。初恋の人とか初めて出来た彼女とかいないの?」


キャロルは目を輝かせていますが、それ以上にリアからプレッシャーを感じるのは何故でしょうか。


「初恋の相手はキャロルのお母さんのマリーになるでしょうね。彼女に関しては微妙なんですよ」


「コージさーん、若い頃のマリーさんってどんな感じの女性だったんですかー?それとー微妙ってなんなんですかー?」


あまり話したくないんですけども、今のリアに逆らうなと本能が告げています。


「母子だから当たり前ですけどもキャロルとそっくりでしたよ。微妙っていうのはあれを付き合ったって言うかどうか微妙な経験がありましたから。それだけですって」


「そうですかー、ところでこの後の予定はどんな感じなんですかー?」


絶対にリアは納得していないと思います。


「予定だと途中のベーセンの町で1泊した後に首都デュクセンで1泊、デュクセンからシールンに行きジガーク様に謁見して依頼の具体的な内容を確認させてもらってからホーフェンに行きたいと思います」


出発前に実家へ転移魔法郵便で帰省の手紙をだしましたがキャロルは大丈夫としてもリアの事を誤解していないと良いですけど。


「コージおじさんのお仕事はどれ位かかるの?」


「内容によりますが普通の修理なら3日もあれば大丈夫ですよ。ただ…」


「修理に使う素材ですかー?確かにルーンランドだと大抵のマジックアイテム関連の素材は手に入りますからねー」


魔石とかなら、また一から作らなきゃいけません。

そうです、魔石と言えば


「キャロルに問題です。魔石の定義と種類を述べて下さい」


「えーと魔力が宿った石で精霊魔石と魔術魔石があってー」


キャロルは私に師事したのですから、この旅の間で知識も魔術も成長してもらいたいと思います。


「魔石は魔力が半永久的か永久的に宿っている石の事です。大別して精霊魔石と魔術魔石に分かれています。精霊魔石は低級精霊が体を宿している宿住魔石と中級、上級精霊が力を注いで作り上げた注入魔石があります。宿住魔石は貴族や教会が独占していますし、注入魔石に至っては国宝物が殆どです」


「うー、そんな専門知識はまだ習ってないのにー」


「私に師事したからには、これ位は序の口と思って下さい。次に魔術魔石です。これは私がお仕事で良く使う物ですが、どうやって作るか分かりますか?」


「えーと自然界にあるパワーストーンに魔力を付与するんだよね?」


「パワーストーンは精霊の力を強く受けた石が変成した物と言われています。これに同質の魔術を付与して力を倍増させたのが魔術魔石です。当然、精霊魔石より威力は落ちますが廉価で用途の選択肢が多いので魔術師に重宝されています。キャロル、何故だかわかりますか?」


「うー、パパがデュクセンに来た途端、教育パパになったー」


「精霊魔石は魔術を授かるだけでもお金が凄く掛かるのに自分の住んでいる場所の近く目的の精霊魔石があるなんてのは奇跡に近いくらいです。だから今では威力の高い精霊魔石を探すよりも使い方では遙かに凌駕できる魔術魔石の方が発展しています。宿についたら物に魔法陣を組み込む実技をしますからね」


せっかく大事な義娘が師事してくれたんです。

彼女に何があっても困らない様に伝えれる技術は伝えていきましょう。

いつ私とリア、キャロルの運命は違う支流へと分かれるのか分かりませんから。


まさかのイ・コージ元カノ登場?

次でお仕事になります

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