闇イ・コージと助手と義娘
前半と後半で雰囲気が変わります
side イ・コージ
忘れてました。
私が作ったキャロルのバングルにはリアとの通信機能が着いてたんですよね。
ちなみに今の状況は椅子に座っている私をリアとキャロルが取り囲んでいて、前門の虎、後門の狼ならぬ前門の助手後門の義娘になっています。
「それでーコージさんは何で討伐をしようと思ったんですかー?コウアースリザードは厄介な魔物なんですよねー?」
ジト目で私を見てくる助手のリア。
「今回の依頼にコウアースリザードの角を使いたかったんですよ。あれ中々手に入りませんから自分で討伐した方が早いですから」
「パパは何で1人で行こうとしたの?」
こちらはウルウルした目で見てくる義娘キャロル。
何でしょう、何もしてないのに罪悪感が凄いんです。
「コウアースリザードの討伐を知らない魔術師としてくれる人は滅多にいないんですよ。コウアースリザードの角は威圧魔法に使えますから魔術師が持てば立派な凶器になるんですよ」
「それならーなんでー私やキャロルに教えてくれなかったんですかー?」
「だって言ったら許可してくれないじゃないですか。ついでに色々と採集もしたかったんですよ」
いやそれ以前に助手や義娘の許可を気にしきゃいけないなんて情けない話なんですけども。
「当たり前でしょ!パパが1人で討伐に行くのを許可する訳がないでしょ」
プッと頬を膨らませるキャロル。
可愛すぎて普段なら指でつつくんですけども今は自重します。
「キャロル駄目ですか?パパはパーティーよりも単独行動の経験の方が多いんですよ。デュクセンでは一匹狼ならぬ一匹黒豚マジシャンなんて異名がついてたんですよ」
単純にパーティーを組める程親しい人がいなかったのもあるんですけど。
「それはー何年前のお話ですかー?この間の検査で高血圧って注意されたのはーどこの誰ですかー?」
「えーとエリーゼ先輩がルーンランドに行ってからですから、10年くらい前ですかね。でもほらっ運動不足の解消にもなりますし」
「パパ約束して。危ない事をするなら私かリアさんに言ってからにして。デュクセンと違って、ルーンランドにはパパを大切に思っている人が沢山いるんだよ」
キャロルが私の服の袖を摘みながらウルウルした目で見つめてきます。
それは反則ですって。
「ちなみに参考までに聞きたいんですけども許可をもらえる条件とかはありますか?」
「先ずは私かーキャロルの許可を得る事ですねー。それと単独行動はしない事です」
それって物凄くハードルが高くないですか?
「それと基本お泊まりは駄目だよ。お泊まりになる時はきちんと連絡をよこす事」
キャロルそれはパパの台詞ですって。
「それじゃ報告もしましたし、討伐に行ってきても構いませんか?パーティーに関しては今回は見逃して下さい。それに今回はきちんと触媒を用意してますし」
「何を言ってるんですかー?パーティーを組む相手ならここにいるじゃないですかー?」
「私も丁度お仕事が終わったしね。あっマジックガールズのお仕事チャレンジの冒険者ギルド体験の続きにできるかディレクターに聞いてみよっと」
マジックガールズのお仕事チャレンジはマジックガールズのメンバーが様々なお仕事にチャレンジする様子を絵姿雑誌にしたものです。
今回は運悪く?冒険者ギルド編だったんですよ。
―――――――――
結果、物凄いバランスの悪いパーティーになりました。
私は魔術師リアも魔術師、キャロルは魔術師見習いなんですから。
「それじゃ先ずは全員に隠密魔法をかけますね。戦闘は私1人で行いますからリアとキャロルは支援をして下さい」
「パパ、コウアースリザードはどこに出るの?」
「なんでも北の草原に出没してるみたいです。草原ですから出没する魔物は少ないですし、材料は植物が中心になりますね」
………
やばいです、テンションが上がりまくりです。
使える植物や鉱石が無料で手に入るんですから、これだから採集は止められません。
「パパ!アーマーボアー(鎧猪)だよ。逃げなきゃ」
アーマーボアーは甲殻をまとった猪です。
甲殻は色んな用途に使えますし、何よりもお肉が美味なんです。
逃げるなんてとんでもない。
side キャロル
パパって、やっぱり凄い魔術師なんだ。
アーマーボアーの鎧は魔法も弾き返す程に頑丈。
だからパパが狙ったのはむき出しになっている鼻。
正確には猪の鼻穴にアイスニードルを打ち込んだ。
パパ曰く
「傷を付ける為じゃなく血管を冷やして脳と心臓にダメージを与えたんですよ。脳と心臓に冷やされた血が流れ込んだらアーマーボアでもたまりませんからね」
でもそれには正確無比な狙いとアイスニードルの冷たさが持続出来なきゃいけないんだよ。コーアースリザードを倒すのにも時間が掛からなかった。
パパが使った魔法はウインドカッターの一発だけ。
それでコーアースリザードの角を根元から切り落とした。
「パパとどめはささないの?」
「コーアースリザードは角がなければ無害なトカゲなんですよ。ギルドにも角を持って帰れば十分なんですよ。後は他の生き物の餌になりますし、それにそこにいる様な人達に悪用される事もありませんしね…」
パパの目線は林に向いている。
ガサリと音がしたと思うと5人の男が出て来た。
「こりゃラッキーだ、あの親父を倒せばコウアースリザードの角も女も手に入るぜ」
「親父はやっちまえば死人に口無しだよな」
「俺は黒髪の方な」
男達はナイフを取り出しながら無遠慮な視線で私とリアさんをなめ回す様に見てくる。
怯えて動けない私をかばいながらリアさんはゆっくりと、でも真剣な口調で話し始めた。
「大丈夫ですよー。私も初めて見るんですけども本当の魔術師イ・コージが見れますよ」
リアさんの言葉でパパを見ると、そこにいたのは何時もの優しいパパじゃなかった。
暗い陰に包まれた顔、洞穴の様な目。
「コウアースリザードを倒せずに隠れん坊していたお子様が私を倒す?笑わせないで下さい!!貴方達みたいな屑が私の大切な人達に触れていい訳がないでしょ」
低く地の底から響く様な声。
パパ…イ・コージさんは袖をまくると腕につけてあるブレスレットの黄色い魔石に触れた。
黄色い煙を男達を包み込む。
「バインド(拘束魔法)」
感情の感じられないイ・コージさんの声が響く。
煙が晴れるとそこに見えたのは麻痺して涎を垂れ流している男達。
「ラッキーボーイさん達体は麻痺しているでしょうけど耳は聞こえていますよね?この辺りは夜になるとブラッディウルフやオーガのテリトリーになります。まあラッキーボーイさん達なら被害に遭わないで済むでしょうね」
ニヤリとイ・コージさんが笑う、それは何時も優しく暖かな笑顔じゃなく迫力のある笑顔だった。
side イ・コージ
やっちゃいました。
リアもキャロルも絶対にひいてますよ。
「私が見張りをしてますから傭兵隊の方を呼んで来て下さい」
背中越しに小走りに駆けていく2つの足音が遠ざかっていくのが分かりました。
モトクロスの経験がある方いたら教えて欲しい事があります