所長の暗躍
イ・コージが出て来ない上にザコを見ていないと分からないキャラも
side ヤ・ツレー
ロックオーガ伯爵の娘を捜す手立てを考えていると、ドアが激しくノックされました。
私の返事が終わるか否やリア・クローゼが所長室に飛び込んで来たんです。
「所長、コージさんがーエリーゼ主任のエリナちゃんの居場所を探り当てましたー、南の森にある小屋にいるそうですー。それでコージさんが魔力切れで倒れたからエーテルを下さいー」
よほど慌てているのか、リアは一気にまくし立てる様に話します。
「リアさん少し落ち着いて下さい。イ・コージさんは他に何か言ってませんでしたか?」
「うー、でもコージさんがー…下級精霊が3体いるって言ってましたー」
やはり精霊術師を配置してきましたか。
「分かりました。後の事は私が対処しておきます…リアさん変わりましたね、貴女が男性の為に必死になるなんて」
以前のリア・クローゼはあまり男性と関わらず、唯一魔術能力の高い男性にのみ薄い関心を示していました。
だから魔術能力が高いイ・コージの助手としたのですが、おもしろい方向に変化した物ですね。
「コージさんに色々と教わりましたから…だから早く娘さんをーエーテルをー」
私がエーテルを手渡すとリアは一目散に所長室を後にしました。
さて、私は人の国でおいたをした南エルフにお仕置きをしに行きますか。
――――――――――
私を配下の者を引き連れて南の森を訪れました。
「ヤ・ツーレ様、例の小屋を見つけました。しかし有り得ない事が…」
彼は配下の一人で所謂アサシンなんですが、その彼が顔面蒼白となり報告をして来たんです。
「実際に起きた事で有り得ない事なんて、この世には有り得ませんよ。起きた事実が全てです」
しかし、彼に連れられて見た光景は私の想定を遙かに上回る物でした。
「あれは精霊…精霊が縄で拘束されていると言うのですか」
そこには三体の低級精霊が縄でグルグル巻きにされて木に吊されていたのです。
(いくら低級精霊とはいえ誰が…どの様な存在がこんな事を。罠にしてはあからさま過ぎる)
そしてその声は突然響いてきた、地の底から響くような低い低い声。
しかし姿はどこにも見えませんでした。
「あの小屋にいるエルフと契約した馬鹿精霊は我が拘束した。安心して攻めるが良い」
「貴方は誰ですか。姿も見せぬ者を信用する程、私はお人好しではないのでね」
「ふむ、これは失念。最近姿を消す癖がついてたのでな」
そして姿を現したのはオーガよりも背は高く盛り上がった筋肉と鋭い牙も持ち、そしてその力は精霊と比べものにならない程に強力。
実際に配下の殆どの者は気を失い、残った者も恐怖で打ち震えています。
私も心の底から怯えていましたから。
「な、何故私達に手を貸して頂けるのでしょうか」
気が付くと私は地に伏し正体不明の相手に頭を垂れていました
「我が主と我の楽しみを邪魔する愚物を廃したに過ぎぬ」
多分それは北エルフに関係する者でしょう。
「余計な推察は汝の身を滅ぼすぞ。あの方はまだ正体を明かすに早いと話されてますから。もしこの話を漏らせば汝だけではなくルーンランドが滅びると思え。汝以外の記憶は消し去っておく」
「分かりました。よろしかったら貴方様の名前を教えて頂けますか」
「ふむ、魔神トイザルスと覚えておくと良い。それでは後の事は任せたぞ」
魔神ですか…。
まるで創地神話ですね。
いや、あの力は本当に魔神なんでしょう。
多分私だけが平然としていたのはあの方の配慮と言った所。
「ヤ・ツーレ様、ご指示を」
配下の者達に先程の記憶はまるでない様ですし。
「一番は対象者の保護を目的とし南エルフは殲滅してもかまいません。精霊術は使えない筈ですから安心してお子様に世の中の理を教えて上げなさい」
あの縄で南エルフも、あの縛られた精霊も同じ末路を辿るのでしょうから。
幸いエリナさんはスリープで眠されていただけで怪我一つしていませんでした。
ちなみに精霊は魔神トイザルスがどこかに連れて行った様です。
「所長ありがとうこざいます。このご恩は決して忘れません」
エリーゼ主任は娘さんを抱きしめながら泣いていました。
「私よりイ・コージさんにお礼を言って下さい。彼が命懸けでエリナさんを見つけたんですから」
さてサン・エルフ帝国にに特使を派遣しておきますか。
ルーンランドの態度を鮮明しておきたいですし。
この後しばらくはザコの更新が続きます