上司を選べないのがサラリーマン
なんとこの作品が日別で7位になってました
いいんでしょうか?
魔法研究所は研究開発部・商品作成部・販売部・総務部に分かれています。
私がいるのは研究開発部第2課。
第1課は自由研究をしており、私がいる2課では研究所に届いた依頼に対応しています。
「イ・コージちゃん、こないだのフェルトにクレームが来たからなんとかしてちょーだい」
私に嫌味にたっぷりに話しかけてきたのは2課の開発主任テガ・ラパクーリさん。
いやテガさん、フェルトの開発責任者になりたいって騒いだのは貴男じゃないですか?
「わかりました、届いたクレームを見せて下さい」
………
・フェルト布でこぼしたワインを拭いたら使えなくなたっぞ。新品と取り替えろ
・剣を磨いたら鋭くなりすぎて指を切っちゃったじゃないか
・銀のフォークを磨いたら大事なお皿に傷がついたんだ。ママに叱れたら責任を取ってくれよ
これはクレームなんでしょうか?
それとも笑いを取りたいんでしょうか?
そんな事よりテガ主任、開発責任者になったんだから、これ位の苦情はなんとか宥めて下さい。
「嫌味ネズミが来てましたけど、何かあったんですかー?」
リアさん、確かにテガ主任は痩せていて出っ歯でネズミみたいな顔ですけども嫌味ネズミはまずいでしょ。私は眼鏡ブタとかデブ眼鏡とか言われてるんじゃないかと心配になりますよ。
「これです」
クレームをリアさんに手渡すと
「嫌味ネズミはお馬鹿貴族のお守りも出来ないんですかねー?」
どうして女の人って、相手がいないと好き放題に言えるんでしょうか?
聞いている私の胃がもちませんよ。
「作ったのは私ですから私が何とかしますよ」
実際に私が何とかするしかないですし。
通常業務がありますから今日も徹夜ですね…
ベットが早速役に立ちました。
そう喜んでおきましょう。
side リア
テガ・ラパクーリ35才。
ラパークリ男爵の長男で、それなりの魔力はある男。男爵は一代爵位だから、ごり押しに近い形で研究所に就職したみたい。
出世の基本は他人の褌な嫌味ネズミが次に目を付けたのはイ・コージさん。
ヤ・ツーレ所長がイ・コージさんの実力を知っているから、良いような物のそれじゃなかったらリア特製のネズミ捕りを設置していたと思う。
「イ・コージさんおはようございます。お馬鹿対策はできましたかー?」
「ええ、ちょっと虚しい感じもしますけどね」
そう呟いたイ・コージさんの目の下にクマが見えました。
これは嫌味ネズミへの仕返しを考えなきゃ。
差し出されたフェルトを見てみたんだけども
「何も変わっていない感じがしますけど」
「変えたのは裏ですよ。ひっくり返してみて下さい」裏側には細かい注意書きが書かれていました。
・本品を本来の使用目的以外に使うと性能が著しく劣化するのでご注意下さい
・本品を使うと剣が鋭くなりますのでご注意下さい
・本品は装備品のみにご使用下さい
……イ・コージさんお疲れ様です
side イ・コージ
ホッとしたのも束の間、テガ主任がまたやってきたんです。
思わず主任の仕事の心配をしてしまいましたよ。
「イ・コージちゃん。今ヒマだよね、そうだよねー、僕今日行かなきゃいけない所があるからさー、これを頼むね」
テガ主任が研究室に置いていったのは宝石が散りばめられ、美しい装飾が施された立派な盾です。
感動するぐらいに見事な丸投げですね。
「主任、これは一体なんでしょうか?」
「それに軽量化・威圧・疲労回復の魔法を付与してちょーだい。材料は揃えておいたから明日までに頼むよ」
ああ、そう言えば誰かがテガ主任はレディスクラブに目当ての女性がいて通い詰めているって話をしていましたね。
既婚者で、その元気はある意味うらやましいです。
………
ざ、材料不足です。
軽量化に必要な魔石がないじゃないですか!
私に魔石を精製しろって言うんですか。
テガ主任が若い娘とお酒を飲んでいる時に私は実験器具とニラメッコ…
ちょっとだけ泣きたくなります。
そんな時です、研究室の扉が開きました。
「もうイ・コージさん嫌味ネズミの仕事に、そんな真面目に取り組む必要ないですよー。どうせご飯食べてないんですよね。サンドイッチを作ってきたから食べて下さいー」
「リアさん帰ったんじゃないですか?」
「事務にいる友達から聞いたんですよー。嫌味ネズミがイ・コージさんに自分の仕事を丸投げしてレディスクラブに行ったってー」
恐ろしきは女性の噂包囲網。
「やっぱりそうでしたか?まっ家に帰ってもする事がないですから」
「嫌味ネズミは今頃レディスクラブで鼻の下をのばしているんですよ。悔しくないんですか?」
だからって、リアさんが怒らなくても
「ちょっだけ悔しいですよ。でもその女性はテガ主任と談笑してるんじゃなく、テガ主任のお金と談笑しているんですから。それに気付かないテガ主任こそ哀れなんですから」
研究者は何時も事実を見なきゃいけません。
昔、痛い思いをした私だから言えるんです
「随分とお人好しなんですねー」
違いますよ、そう思わなきゃやってられないんです。
「それにリアさんの優しさがこもったサンドイッチの方がレディスクラブのお酒よりも何倍も価値がありますから」
「サンドイッチで、そこまで喜ばれるとは思っていませんでしたよー」
故郷に帰れない私が女性の手作り料理を食べれるのは奇跡に近いんですから
次はザコのシャルレーゼ女王とガーグのひいおじいさんの話を更新予定です
書きためができた時点で更新します