採掘実習と戦闘実習
side イ・コージ
オークの後は魔物と出会う事もなく、無事に目的の坑道へ辿り着く事ができました。
「ここだな、コージ先頭を頼むぞ。何しろお前以外はか弱い乙女しかいないんだからな」
先輩に言いたい事は沢山ありますが突っ込んだら負けならぬ、突っ込んだら鉄拳制裁が待っています。
「分かりましたよ。皆さん私の後に付いてきて下さい」
荷物からランタンを取り出して中へ向かいます。
「パパ、ランタンに火をつけないの?」
「このランタンの中に入っている魔石は、太陽の力があると言われているペリドットに光の魔法を付与したものです。だから魔力を流してあげると」
side キャロル
パパの言葉と同時にランタンの中の石が光って、坑道の中が明るく照らされた。
「凄い明るい!!これもパパが作ったの?」
「坑道で火を着けたら酸欠になるかもしれませんからね。幸いにここは採掘がされていますから有毒ガスの心配はないですから。ほら余所見をしているとアメジストの鉱脈を見落としますよ。皆さんに1つずつお渡しますから気を付けて歩いて下さい」
坑道の中はデコボコしていてパパのランタンが無かったら転んでいたと思う。
ジメジメして気持ち悪いけども、頑張ってアメジストを見つけてパパに誉めてもらんだ。
「キャロルー、見つかりそう?僕の自慢の鼻でも石の臭いは嗅ぎ分けられないから不安だよー」
自慢の鼻が効かない所為か、チェルシーは少し不安気。
「この辺りのアメジストはもう採掘されているんだと思うよ。ゆっくり探しながら進んで行こ」
side イ・コージ
(おい、コージ。教え子達にアメジストの見つけ方を教えなくてもいいのか?)
確かに目だけで探していたら時間が掛かりますからね。
(それも実習ですよ。アメジストを見つけて採掘して運んで加工をするまでが今回の実習ですから)
(かー、意地が悪いねー。そんなんじゃ娘に嫌われちまうぞ)
(だからキャロルは親戚の娘ですって。嫌われても経験を積んで欲しいですからね。まぁ念の為に私も採掘しておきますよ)
(親戚でも義娘でも実習が終わるまでにお前の気持ちを決めておきな。あの娘は本気でコージの事を父親として慕っているみたいだぜ)
(キャロルの父親はアレキスですよ)
(キャロルにしてみれば顔も分からない自分と母親を捨てた男より、昔から父親と信じていた優しいお前の方が父親だと思えるんだろうな)
(しかし、ですね)
(それにアレキスは異端者審問隊が俺達を襲うのを止めていないんだぜ?つまり下手すりゃキャロルも殺されていたんだぜ?どっちにしろお前が唯一の身内なんだから、あまり他人行儀なのは悲しませるだけぜ)
(だから呼び捨てにしてるじゃないです)
私にしてみれば凄い決断なんですよ
(どこの世界に娘に敬語を使う父親がいるんだよ。それにピンクもじゃも同じたぜ?お前1回色街に行って女慣れをして来い)
(先輩、女性が何を言ってるんですか?)
色街なんて冗談じゃありません。
(冗談だよ。つうか、いい年こいたオッサンの癖して色街って言葉だけで面を赤くするなよ)
「コージさーん、色街って何の話ですかー?今は実習中ですよー!!」
「リア誤解ですって、もう先輩が変な事を言うから誤解されたじゃないですか」
「ピンクもじゃ、安心しろ。コージに色街で遊ぶ度胸なんざねえからよ」
何でしょう、最近女性陣になめれっぱなしな気がするんですけど。
「リア、キャロルとチェルシーさんは見つける事ができますかね」
もう何回もアメジストを見落としているんですよ。
「コージさん話題を変えましたねー…ヒント位教えてあげてもいいんじゃないですかー?」
ヒントですか。
「キャロル、チェルシーさん、周りを見ているだけじゃ中々見つかりませんよ。アメジストは又の名を紫水晶、つまり水の魔力を多く持っているんですよ」
「パパー、分かり辛いよ。具体的に教えてよー」
キャロル、少しは考えましょうよ。
「具体的ですか…目で見えないならどうしたら良いかを考えて下さい。こんな風に」
目を瞑って辺りの魔力を感じる。
大地の魔力が充満している坑道にある水の魔力、その中でも浄化の力が強い物を探していく。
…ありました。
次はアメジストを結界で囲んでさらにその周りの岩も結界で囲む。
「大気よ、槌へと姿を変えて、それを砕け…エアハンマー」
空気が衝撃波へと姿を変えてアメジストの周りの岩を砕いていきます。
壁に開いた穴の中にはドーム状の岩だけが残りました。
「あれがアメジストのドームと呼ばれている物です。さぁ同じ要領でアメジストを探してみて下さい。取り出し方はお2人にお任せしますよ」
「パパの意地悪ー。アメジストを見つけれても二重結界とかエアハンマーとかは私達には無理だよー」
「まずはアメジストを見つけて下さい。採掘方法は道具を使ってもいいですし魔法を使っても構いませんから」
道具でコツコツと掘った為に時間は掛かりましたが2人共無事に、アメジストを見つける事が出来ました。
「さてアメジストに軽量化の魔法を付与しておきますから各自採集した物は自分で持って下さい」
行きも帰りも私が先頭ですか。
いえ、私が先頭で良かったんです。
入り口で待ち伏せされていました。
「皆さん、坑道に戻って下さい。スピアゴートが待ち伏せをしていました」
大切な義娘、大切な先輩、大切な助手、大切な実習生。
命を懸けてでも守ってみせます。
スピアゴートは2m近い体長に1mの鋭い角を持つ山羊から進化した魔物です。
「へー、いい角を持ってやがんな。コージ間違っても角は折るなよ」
「先輩、坑道に戻ってキャロル達を守って下さいよ」
「お前が俺に命令をするな。それに魔術師1人だと命懸けでも相打ちが関の山だろ?」
やっぱり、先輩には、ばれてましたか。
「命掛けって、コージさーん貴方って人はー!」
「パパ、私達も戦うよ。初級魔法くらいなら唱えれるから。牽制には使えると思うよ」
「もう、キャロル僕を含めないでよー。イ・コージさん戦闘実習の評価は高いんですよね」
ありがたいですね。
私なんかを見捨てないばかりか、一緒に戦ってくれるんですから。
side エリーゼ
「コージ、これだけ手駒がいれば楽勝だろ?お前の采配に期待してんぜ」
コージの冒険者としての強さは高い魔力でも、豊富な魔術でもない。
仲間の能力をフル活用した戦術を考えれる指揮能力なんだよな。
side イ・コージ
「キャロル、チェルシーさん得意魔法で牽制をお願いします」
キャロルがウォーターボール、チェルシーさんがウインドウを放ちましたがスピアゴートは、殆どダメージを受けていません。
「リア、私の合図にあわせてスピアゴートにスタンを掛けて下さい」
キャロルとチェルシーさんが時間を稼いでくれているお陰で長い詠唱を唱える事ができます。
「岩殻の精霊よ、我は汝と契約を結びしイ・コージなり。我との盟約を今果たしたまえ。地を割り岩を槍へと変えて我が敵を貫け。アースジャベリン…リアお願いします」
side リア
私のスタンでバランスを崩したスピアゴートは大地の槍に体を貫かれました。
あれが魔術師コージの実力なんですねー。
そしてその魔術師は…
「ったく、魔力を使い過ぎて気絶しやがって。コージは肝心な所で抜けてるんだよな」
触媒も用意せずに魔力を使い過ぎた為に、気絶をしてしまいエリーゼ主任に負ぶってもらいながら岩山を降りる羽目になりました。
そのうちに同僚の男性キャラも出したいです。
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