イ・コージの恋の思い出
重い話になります
ルーンランド魔法研究所 所長室
side ヤ・ツーレ
イ・コージさんとエリーゼ主任が血相を変えて私の部屋に来ました。
「それでキャロル・リーチェの父親は誰なんですか?」
「アレキス・アポーロドという男でデュクセンの魔法大学で私と同じ研究室にいました」
「ふむ、それに何か問題があるんですか?」
「アレキスはレクレールの生まれなんだよ。しかも親は司祭って話だ」
………
たしかにまずいですね。
レクレールは清光の精霊レクーを崇める宗教国家。
国民の名前、仕事、結婚をレクーの神託で決めている国。
つまりマリー・ルーチェがアレキス・アポーロドの子供を身ごもったと言う事実はレクーの神託を無視した事になります。
ましてやレクレールでは他国者との結婚を忌み嫌い、他宗教者との結婚は重罪となる国。
「マリー・リーチェはよく無事でしたね」
「妊娠が分かった時点でルーンランドに帰国しましたから」
もし、マリーがそのままデュクセンに、とどまっていたのなら妊娠をなかった事にする為に母娘共にレクレールの異端者審判隊に殺されていましたね。
「イ・コージさんとマリー・リーチェはどの様な関係だったんですか?」
ただの先輩に我が子を託す筈がありませんから
「マリーの母親と私の母親が従姉妹だったんですよ…。それだけです」
side エリーゼ
ただの親戚ね。
あれがなきゃコージも、もう少しまともな人生を送れていたろうに。
コージはマリーに惚れていた。
あいつは頑なに否定していだが態度を見たら丸分かりだった、マリーもコージの事を慕っていたし。
大学の誰もがコージとマリーが付き合うものと思っていたんだよな。
でもコージの親友だったアレキスとマリーは出会った途端にお互いが惹かれていった。
それを見てあの馬鹿は、新しい理論を見つけたとか言って研究に没頭し始めた、まるでアレキスとマリーを避けるかの様に。
アレキスとマリーも気まずかったらしく、2人とコージの距離は日に日に離れていった。
そんなある日、突然にアレキスとマリーは大学を辞めてそれぞれ自分の国に帰郷した。
コージはアレキスから詳細を聞いたらしいが、誰にも何も言わずに、それからますます人を避ける様になったんだよな。
そりゃそうだろな、自分の親友に惚れていた女を横取りされた挙げ句に妊娠の相談をされたんだからな。
しかもそれが自分の命を危険に晒しかねないものなんだから。
side イ・コージ
忘れたつもりだったんですけども、あの時の惨めな気持ちが蘇ってきました。
笑い合う親友と片思いの女性、それをただ眺めるしかできない自分。
頭を下げてマリーの妊娠を伝えてきたアレキス。
私に何も言わずにルーンランドに帰ったマリー。
思わず溜め息が出てしまいます。
「コージさん、溜め息をつくと幸せが逃げちゃうんですよー。私に逃げる幸せなんてありませんから、なんて言わないで下さいねー」
「すいません、ちょっと昔の事を思い出してしまいまして」
「キャロルの御両親の事ですかー?」
リアさんは、最近鋭いんですよね。
「まあ、その様なものです。チェルシーさんとリーチェさんはどうしました?」
「お仕事に行きましたー。キャロル落ち込んでいましたよー」
それは不幸中の幸いですね。
リーチェさんに詳細を訪ねられたら困りますから。
「コージさんはキャロルの父親じゃないんですよねー」
リアさんまだ、疑っているんですか?
「違いますよ。遠い親戚にはなりますけどね」
「詳しい事は教えてくれないんですよねー?」
「興味本意で聞く様な話じゃありませんよ。できたらリーチェさんにも話したくないですし」
理由はどうあれ、父親のアレキスがリーチェ母娘を捨てたんですから。
「興味本意じゃなかったら良いんですかー?」
「もう少し待って下さい。所長から指示がきますので」
異端者審問隊がリーチェさんを今でも警戒してなきゃいいんですけどね。
翌日
来ないで欲しいって期待していたんですけどね。
リーチェさんが来ちゃいました。
まぁ父親の手掛かりが欲しいのは分かるんですけどね。
「リーチェさん、誰にも見つかりませんでしたか?」
「イ・コージさん、大丈夫だよ。キャロルは僕がきちんと変装させたからさ。あっキャロルもここの研究室で実習したいんだって」
長期戦を展開するつもりなんですね。
「それじゃリーチェさんのバングルも作りますね。好きなお花とかあります?」
「パパ……イ・コージさんは、母が好きだった花を覚えていますか?その花にして下さい」
なんとも落ち込みそうな課題です。
「リアさん、徹夜をするのは…」
「却下ですよー。私はコージさんの過去より、今の健康に関心がありますからねー」
マリーが好きだった花ですか…
どっちの花なんですかね。
アレキスの好きだった花バラとマリーが好きで私が贈った花スズラン。
どっちなんですかね。
なんか、やるせない話になりました