イ・コージの天敵現る
昨日、毎日更新がついえてしまいました。
side イ・コージ
胃が痛いです。
リアさんとチェルシーさんが帰るのと入れ替えで、テガ主任が研究室にやって来ました。
「イ・コージちゃん、実習生は帰っちゃったの?」
「ええ、丁度入れ違いになりましたよ」
まさかテガ主任、チェルシーさんの正体に気付いたんですかね。
「まぁわざわざ君の研究室を希望する娘なんて、きっと変わり者だろうからいいけどね。それより実習生からの評価が低ければ君のお給料が下がっちゃう事があるからね」
主任、そんな事を笑顔で言わないで下さい。
「ほ、本当ですか?」
きっとチェルシーさんの私への評価は意固地な嫌な親父ですよ。
「当たり前じゃない。将来のルーンランドを支える魔術師を育成する為の実習生制度なんだから。下手すれば元の小さい研究室に戻っちゃうよ」
もし、チェルシーさんが実習に来なかったらやばいですよね…
初日から実習生に厳しい態度なんてとるもんじゃありませんね。
決めました。
明日チェルシーさんが来る事を祈りながら、今日は徹夜仕事をします。
―――――――――
待つ時間って、何でこんなに長いんでしょうね。
「イ・コージさん昨日はきちんと寝ましたかー?」
「リアさんおはようございます。ええきちんと寝ましたよ。ところでチェルシーさんは…」
「おはようごさいます。今日もよろしくお願いします」
研究室にチェルシーさんの元気な声が響きました。
良かった、きちんと来てくれました。
これでこそ徹夜した甲斐があるってもんです。
リアさん対策にシーツにシワを着けておいたからバレないと思いますし。
「チェルシーさんおはようございます。これを見て下さい。作業着の試作品です」
side チェルシー
イ・コージさんが見せてくれたのは厚手の布服。
「イ・コージさん、これが試作品ですか?」
僕にはどっから見ても変哲のない普通の服にしか見えないんだけど。
「古着屋で買ってきた厚手の服の肘や膝の内側には軟化の魔法を付与して、外側には衝撃吸収、全体に軽量化の魔法を付与しました。まぁ見ていて下さい。」
イ・コージさんは自分のティーカップを布の服の中に入れて…
上から木の棒で叩いた!!
「イ・コージさん、何をしているんですか」
「大丈夫ですよ。衝撃は布の服が吸収してくれますから、ほらっ」
カップは割れてない所か傷が1つもついてない。
「イ・コージさん凄いです!きっとクリス様喜びます。僕がこれをクリス様に届けてもいいですか?」
「そんな簡単にはいきませんよ。これはまず研究開発部の第3課にお渡します」
3課?1課や2課は聞いた事があるけど
「3課ですか?3課って、どんなお仕事をしているんですか?」
「3課の人達は2課が開発した物を商品に仕上げてくれるんです。耐久性テストや素材、デザインとかの研究をしてくれるんですよ。その後に作成部で量産した後に販売部がクリスさんにお渡しします」
うー、クリス様が遠のいていく。
side イ・コージ
3課の皆様には毎回助けられていますよ。
私はデザインセンスが皆無ですから、3課を通さないと販売部から苦情がきちゃいます。
「えー残念だなー。せっかくクリス様に会えると思ったのに」
チェルシーさんは、よほどガッカリしたのか犬耳と尻尾がうなだれちゃいました。
「仕方ないですね。実習生のチェルシー・ポンに命令です。その服を依頼主のクリス・アレクサンドラさんに見せて感想を聞いて来て下さい」
「はいっ!!わかりました」
チェルシーさんはよっぽど嬉しいみたいで、尻尾をパタつかせながら走って行きました。
「喜んで行っちゃいましたね」
「ええ、これでー心おきなくイ・コージさんに確認ができますねー。また徹夜しましたねー!」
「な、何を言ってるんですか?ベットのシーツにちゃんとシワがついてるんじゃないですか」
「目に隈を作って何を言ってるんですかー!わざわざシーツにシワまで作って悪戯をした子供じゃないですからー」
私って、リアさんの上司ですよね。
年下の部下にお説教されるっておかしくないですか?
「イ・コージさん、私の話を聞いてますかー!聞いてないですよねー。だから徹夜したんですもんねー」
何でしょう、今日のリアさんは迫力満点です。
「いや、ついつい研究者の性というか何というか。ほらっ採掘道具の納期もありますし」
「納期なら大丈夫ですよー。どこかの誰かさんが私の心配を無視してー作業着を完成させちゃいましたからねー」
リアさんのご機嫌は、とっても斜めになっています。
でもこのままではいけません。
決めました。
お説教が終わったらイ・コージ特製胃薬を飲みます。
―――――――――
私の胃薬の効果も実感できましたから、次は採掘道具ですね。
一番は安全の確保、次は効率。
…………
本当にどうしましょう。
採掘効率を求めると落盤や水脈を防ぎにくいですし、でもツルハシとかで砕いていたら効率が悪すぎます。
早く何を作るかだけでも決めなきゃ、悩んで答えが出ないまま徹夜をしちゃうっていう地獄の悪循環になっちゃいますから。
そうしたら3課の人が部屋に良く挨拶をしに来ちゃうんですよ、挨拶に形を変えた催促をしにね。
そんな簡単に開発できる訳ないじゃないですか。
試作品でも良いからって言われて試作品を渡すと冷たい視線をくれるんですから。
「イ・コージさん、3課の主任が来ましたよー」
は、早くないですか?
「あぁん?イ・コージ……んだコージじゃねえか!すっかり中年太り親父になったな」
この口の荒さ、傍若無人さ。
「もしかしなくてもエリーゼ先輩?」
勘弁して下さい。
3課の主任がエリーゼ先輩なんて…
エリーゼ・ストロベリー
名前は乙女、中身は男前な身長2mの女傑。
私の学生時代の1個上の先輩なんですが。
「おう、今は旦那がいるからエリーゼ・ロックオーガだけどな」
岩の鬼ですか。
エリーゼ先輩その者ですね。
「それはおめでとうございます。旦那様はご愁傷様で…」
後半は小声ですよ。
「コージは結婚したか?……だろうな!そうか、あの布の服を作ったのはお前か。命令だ採掘道具は後3日で作れ。俺の娘のお遊戯発表会があるんだよ」
「3日ですか?!」
無理ですって、言おうとしたんですけども
「先輩への返事は、はいだろっ!」
「はい……」
リアさん、徹夜させて下さい。
男前な女先輩 エリーゼ・ロックオーガ
身長2mでショートカットの女傑。
「コージ、パン買って来い」
な人。