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聖女、配属される 〜魔王城じゃなくて役所に案内されました〜

作者: ゆーや
掲載日:2026/01/23

 光が降った。

 神々しい。まぶしい。

「成功だあああああ!!」

「聖女召喚!!」

「この国は救われた!!」


 神殿中がスタンディングオベーションだった。

 鐘は鳴るし、床は光るし、誰か泣いてる。


 中央に立つ少女――ミリアは、混乱していた。


(え、ここどこ?

 ていうか私、さっきまでコンビニでバイトしてなかった?)

「聖女様!!」

 神官長が跪いた。

「どうか魔物の脅威から我が国を――」

 その瞬間。

 ガチャ。

 神殿の扉が開いた。

「失礼します」

 場違いにもほどがある声だった。

 拍手も光も完全無視。

 入ってきたのは、

 地味な色の事務服を着た人物。

 手には書類。夢も希望も挟まっていない。

「内務省・調整課です」

 神殿が真空になった。


「……え?」


「召喚事案の確認に来ました」

 調整官は光る床を踏みながら、

 一切感動せずに歩いてくる。

「聖女様、ですね」

「は、はい……?」

「能力確認をします」

 突然の職務質問。

「浄化できます?」

「え、あ、はい」

「病気治せます?」

「はい……?」

「結界は?」

「たぶん……」

「はい、OKです」

 ペンが走る。

「では配属先ですが」

「え、配属?」

「はい」

「魔物討伐隊?」

「いいえ」

「勇者と一緒に前線?」

「いいえ」

「魔王城?」

「いいえ」

 神官たちが身を乗り出す。

「……どこです?」

「衛生局です」

 沈黙。

「……え?」

「水道、下水、感染症対策、あと災害後の消毒作業です」

「……聖女、ですよ?」

 神官長が震える声で言った。

「はい」

「聖なる存在ですよ?」

「国家公務員です」

「前線で祈らないんですか!?」

「祈るときは申請してください」

「魔物は!?」

「管轄外です」

「魔王は!?」

「管轄外です」

「勇者は!?」

「今、報告書を書いています」

 ミリアは、そっと手を挙げた。

「……あの、私、剣とか振れないんですけど」

「問題ありません」

「詠唱とか……」

「任意です」

「命がけの戦いは……?」

「業務外です」

「え?」

「討伐に出ると怒られます」

「ええ!?」

「危険行為ですので」

「聖女なのに!?」

「聖女だからです」

 神官たちが次々に崩れ落ちていく。

「勤務時間は?」

「九時から十七時です」

「休みは?」

「週休二日です」

「残業は?」

「災害時のみありますが、代休が出ます」

「……ホワイトすぎません?」

「国ですので」

 ミリアは少し考えた。


 魔王。

 血。

 死。


 水道。

 病気予防。

 定時。


「……その、えっと」

「はい」

「そっちの方が、人が助かりませんか?」

「はい」

「……じゃあ、頑張ります」

 神官たちは天を仰いだ。



 こうして聖女ミリアは、

 白いローブではなく

 動きやすい作業着を支給され、

「このハンコは押さないでください」

「それは別部署です」

「勝手に浄化すると怒られます」

 という指導を受けながら、

 今日も元気に水質改善をしている。



 なお――

 一度だけ魔物を見かけて

 反射的に浄化しようとしたところ、

「聖女さん!それ、地方討伐隊の担当です!」

 と、全力で止められた。

 国家公務員が最強職でした。

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