夜明けに咲く幻想 — 第9章
夜の街角、冷たい風が路地を駆け抜ける。陽菜は一人で歩きながら、頭の中で昨日の戦いを反芻していた。
「…私、本当に仲間としてやっていけるのかな…」
胸の奥に、幼馴染を守れなかった過去の記憶がふっと蘇る。涙がこぼれそうになるのを必死で押さえたその瞬間、耳元に小夜の声が響いた。
「陽菜、泣いてる?」
「…いや、ちょっと…思い出しちゃって」陽菜は顔を背ける。
小夜はそっと手を差し伸べた。その手は冷たいようで、温もりを感じさせる。
「過去は変えられない。でも、今の私たちは違う。あなたは一人じゃない」
その言葉に、陽菜の胸は熱くなる。涙をこらえ、頷くしかできなかった。
その時、路地の奥から微かな気配がする。狐太が駆け寄り、肩を軽く叩く。
「おい、考え事は後だ。ここに危険が来てる」
水丸も静かに波紋を広げ、街の水路の異変を感知していた。
「敵影…また来るね」
陽菜は深呼吸をし、手のひらに光を宿す。過去の痛みも不安も、この光に変えて戦う覚悟を決める。
「…みんな、私たちでやろう」
狐太と小夜、水丸が頷く。三人の視線が交わり、言葉にしなくても通じ合う絆が生まれる。
路地の影が揺れる。見えない敵が再び襲いかかる。
「一緒に…!」陽菜が叫ぶ。
光、水、幻術、そして小夜の浄化――四人の力が交錯し、影は押し返される。
戦いながら、陽菜は確信した。
「過去の私じゃない、今の私がここにいる」
夜風に揺れる街灯の下、仲間との絆がさらに深まり、夜は少しずつ柔らかさを取り戻した。




