夜明けに咲く幻想 — 第8章
夜風が街を吹き抜ける。路地の先、闇の奥で微かな気配が揺れた。陽菜はその違和感を感じ取り、手を握りしめる。
「…何か来る」
狐太が軽く息を吐き、目を細める。「来たな…見えない奴だ」
水丸は川面に浮かび、静かに波紋を広げる。「影の動きを感じる。注意して」
影は音もなく、徐々に三人の周囲に広がる。見えない敵。だが、恐怖よりも緊張と連帯感が先に立つ。
「陽菜、君は光で抑えて!」狐太が指示する。
「わ、わかった!」陽菜は手に力を集め、淡い光を放つ。
敵の存在は形を持たず、視覚には映らない。しかし、光に触れた瞬間、反応する波紋が走った。
「うまくいった…でもまだ!」水丸が声を上げ、水の壁で敵を押さえる。
狐太は俊敏に影を飛び回り、幻術で敵の動きをかく乱する。
「連携は完璧だ!」
しかし、敵はさらに強力な力を見せ、街灯が揺れるほどの圧力を放つ。陽菜の光も、波紋も少しずつ押し返される。
「やばい…」陽菜の胸が早鐘のように打つ。
「ここで諦めるわけにはいかない!」小夜が現れ、淡い光で仲間の後方を守る。
三人の力が交錯する。光と水、幻術、そして小夜の浄化――すべてが微妙なバランスで戦局を支える。
陽菜は心を集中させ、恐怖を力に変えた。手のひらの光が一段と強くなり、押し返せなかった影を一気に追い詰める。
「…これで…!」
闇が裂け、見えない敵は消えた。息を切らしながら、三人は互いを見つめる。
「…勝ったのか?」狐太が息をつきながら笑う。
「ええ…でも…」陽菜の胸はまだ高鳴る。
街は静まり返り、夜風が三人の髪を揺らした。恐怖と達成感、仲間との絆、そして次に立ちはだかる困難への覚悟。
「私たちは、まだ始まったばかり」陽菜は小さく呟いた。




