夜明けに咲く幻想 — 第6章
夜の街。街灯の明かりが映る路地に、不意にざわめきが走った。建物の隙間から、影のような存在がうごめく。
「また…妖怪?」陽菜は息を呑む。
「そうみたいだね」狐太は手を組み、軽く足を踏み鳴らす。「でも大丈夫。君も動けるだろ?」
陽菜は深呼吸して、手のひらに力を込めた。心臓の鼓動が早まる。昨夜の小夜との経験、水丸との水辺の事件、狐太との出会い…。すべてが今、自分を突き動かす。
影がゆらりと動き、街路灯の光に反射して目が光った。小さな物音が連続し、建物の陰からいくつもの影が現れる。
「陽菜、後ろを気をつけて」狐太が声をかける。
「わ、わかった…!」陽菜は慎重に動く。感覚を研ぎ澄まし、夜の空気の揺れを感じ取る。手を伸ばすと、淡い光が指先からほのかに広がり、影たちが一瞬ひるんだ。
「よし、まずは冷静に」陽菜は心の中で自分に言い聞かせる。
水丸も水面から現れ、水の波紋で妖怪たちの動きを制御する。「慎重に…でも、急いで」
狐太は軽やかに飛び跳ね、陽菜を守りながら影に幻術をかける。「ここからは僕の番だ」
陽菜の光が少しずつ影を追い詰める。小さな力だが、確かに効果がある。仲間との連携で、街路地の影は静かに後退していった。
「できた…」陽菜は息を整える。胸が熱く、手のひらの力が少しずつ安定してきた。
「悪くないじゃないか、人間」狐太が笑い、水丸も微笑む。「少しずつ慣れてきたね」
街灯の明かりに照らされ、三人の影が長く伸びる。恐怖と緊張の中で、陽菜は初めて自分の力を制御できた喜びを感じていた。
「…私、もっと強くなる」陽菜の声は夜に溶け、街の闇に新しい希望の光を灯した。




