夜明けに咲く幻想 — 第5章
ある夜、街路地の薄明かりの下で、陽菜は狐太と二人きりになった。
「ねえ、狐太…なんであんなに強いの?」
「強い?ふふ、そんなことないさ」狐太は軽く笑った。しかし、その瞳にはどこか影があった。
「本当に、何でも楽しそうに見える…」
「それが俺のやり方だ。でも…正直、全部を話せるわけじゃない」
狐太は夜空を見上げる。月明かりに銀色の尻尾がかすかに輝く。
「昔、友達を守れなかったことがある。あの時、俺は…間違った」
陽菜は息をのんだ。
「間違った…?」
「うん…あのせいで、今も時々眠れない。だから、君たちには同じ思いをしてほしくない」
狐太の声には、いつもの軽さはなく、真剣さだけが残っていた。
「でも…それって、私に関係あるの?」陽菜は小さく問いかける。
「関係あるさ。君も、仲間を守る力を持つんだろ?」
その瞬間、陽菜の胸に小さな熱が広がった。恐怖よりも、強くなりたい気持ちが勝った。
「私…守りたい」
「そうか…なら、今日から君も仲間だ」狐太の笑みは、ほんの少しだけ柔らかくなった。
そのとき、街路地の奥で物音がした。小さな影がすばやく走り抜ける。
「来たか…」狐太は目を細め、陽菜の手を軽く握る。
「一緒に、行こう」
陽菜は深く息を吸い、頷いた。
「うん…絶対、守る!」
街の夜は、二人の決意で少しずつ色を変えた。恐怖や不安もあったが、絆と勇気が確かに生まれていた。




