夜明けに咲く幻想 — 第3章
翌夜、街の灯りが川面に反射して揺れる。陽菜は昨日の出来事を思い返しながら、恐る恐る水辺へと足を運んだ。
「…ここでいいのかな…」
水面に目を向けると、波紋の中に小さな影がゆらりと揺れる。水丸が水の中から顔を出し、にこりと微笑む。
「来たね、陽菜。今日も少し練習しようか」
「練習…って?」陽菜は首をかしげる。
その瞬間、川の中から小さな子どもたちの泣き声が響いた。水丸がぱしゃりと水面を跳ねて説明する。
「迷子になった子がいるんだ。都市化で水辺も危険になってね、放っておけない」
「私…助けられるかな…」陽菜の声は震えていた。
「大丈夫、私たちがいる」水丸が穏やかに頷く。
狐太はくるりと回転しながら、軽口を叩く。
「ほら、少しは面白くなるぞ。君の初陣だ」
陽菜は深呼吸をして、水面に手を伸ばした。その瞬間、不思議な感覚が体を駆け抜ける。水がほんの少し光り、子どもの姿が浮かび上がった。
「こっち…!つかまって!」陽菜は声を張る。
水面をぴょんと跳ねる水丸の力も借りて、迷子の子どもは無事岸に引き上げられた。子どもは泣きながらも笑顔を見せる。
「ありがとう…」小さな声に、陽菜の胸は熱くなった。
「…守れた…」
狐太が目を細め、口元に笑みを浮かべる。
「悪くないじゃないか、人間」
水丸はのんびりと頷き、川面に映る街灯を見つめた。
「街も私たちも、少しずつ変わっていくんだろうね」
陽菜は夜空を見上げた。昨日とは違う、自分の胸の高鳴りを感じる。
「私…もっと、できるかもしれない」
街の夜風が、ほんの少しだけ温かく感じた。




