ちいさな独裁者たち
グランド・セフト・オートというゲームをご存じだろうか。
ギャングになって、大暴れ。
警察署を爆弾付きタンクローリーで吹き飛ばしたりできる。
もちろん、教育に非常によろしくないので、十八歳より下の子どもが購入するのは禁止?されている。
PTAから目の敵にされるゲームのトップである。
実際、プレイ動画を見ていると、プレイヤー同士のだまし討ちやらなんやらで、暴言が飛び交い、チンパンジーみたいになっている。
ここまでが笑える話。
問題はここから。
このゲームはオンライン化されていて、さらにロールプレイができるようになっている。
いくつかのサーバーがあって、参加者はギャング、警察、病院、レストランなど、様々な職につき、生活をする。
ところが、この世界に馴染まない、いわゆる荒らしと呼ばれるものがあらわれると、BAN、つまりサーバーから締め出しを食らう。
それをするのが、サーバー管理者で管理者がそのプレイヤーを自分たちの世界に必要ないと思えば、消してしまうことができるのだ。
荒らし行為は感心しないが、ロールプレイの精神で言うなら、それを逮捕するのが警察の仕事のはずだ。
気に入らないの前に、ロールプレイを挟むはずなのに、それより先に消えてしまうプレイ動画をいくつか見た。
プレステ版グランド・セフト・オートで最初にやったのが、他人の車を殴って奪って乗り回し、川にダイブしたわたしだが、これには肝が冷えた。
意に沿わない人間が消えてしまうなど、ガチの独裁だ。
わたしはタンクローリーで警察署を爆破するのは悪だと認識している。
他人の自動車を乗り回し、川に捨てることもまた悪である。
ところが、オンライン版グランド・セフト・オートの住人たちは自分たちの世界にそぐわない人間を消してしまうことに罪悪感は持たない。
むしろ、正しいことをしたと思っている。
もちろん、これはゲームだ。
そして、グランド・セフト・オートでの行いには「所詮ゲームである」というファイアウォールがあって、倫理は保たれている。
ところが、オンライン版ではファイアウォールが機能せず、むしろ荒らしプレイヤーを退治したという形で、邪魔者を消していいという倫理が外に持ち出されている。
それを培う土壌とは『相手のことを理解しようとしない人間』VS『相手のことを理解しようとしない人間』の争いだ。
と、まあ、いろいろな考え方があるのだろうが、ともあれ、初めてグランド・セフト・オートを恐ろしいゲームだと感じた瞬間だった。
グランド・セフト・オート6が出る予定である。
また、グランド・セフト・オートが密造酒飲んで泥酔して戦車を運転するゲームに戻ることを祈る。
そんなわけで、独裁者になりたい諸兄はトロピコをやりましょう!




