第四話 プチ旅行
園部美也子は、葛飾署交通課に勤める友人・山中美波と、久々に休暇を合わせていた。
「ねえ、たまにはプチ旅行でもしちゃう? 美味しい魚食べて、温泉入って、のんびりするだけのやつ」
提案したのは美波だった。
その一言に、美也子もすぐに乗った。
連日の残業と気の抜けない事件処理に、心も身体もすり減らしていたタイミングだった。
目的地は静岡市清水区。
JR清水駅からも近く、清水港のほど近くにある清水エバーグランドホテルに一泊予約を入れた。
港の風を感じながら、何も考えずにゆっくりできる場所――それが、二人の共通の望みだった。
当日朝、東京を出た二人は、都内でレンタカーを借りて園部のマンションを出発。
平日の東名は思いのほかスムーズで、静岡県に入るころには美波のテンションも上がっていた。
「うわー、富士山ちょっと見えてきた! あ、見えた見えたー!」
「助手席でそんなに騒がれると危ないから……」
「交通課の人間が助手席で事故誘発してどうする、って?」
「そういうこと。あと、富士山は逃げない」
そして11時半過ぎには新東名・新清水インターチェンジを降り、
清水駅近くのホテルには12時を少し回った頃に到着した。
チェックインにはまだ早い時間だったが、ホテルのロビーは落ち着いた雰囲気で、
吹き抜けのガラス越しに港の光が揺れていた。
フロントに荷物を預け、二人はランチに向かおうと外に出た。