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静かなる怒り  作者: 56号
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第一話 悲しみは波と共に

その年の十二月、年の瀬も間近に迫ったある日、一人の少女が忽然と姿を消した。

家族が気づいたのは、夕方を過ぎても帰宅しないことだった。

靴も鞄も家に置いたまま、彼女はまるで最初から存在しなかったかのように、痕跡ひとつ残さず消えた。


警察はただちに捜索を開始し、地元の消防団やボランティアも加わっての懸命の捜査が続けられたが、

少女の行方は杳として知れなかった。

「気象庁の発表によりますと……」


神谷諒一は、湾岸署の事務室に置かれた古いテレビに視線を固定したまま、手の中のコーヒーの温度を忘れていた。

数日前にフィリピン沖で発生した熱帯低気圧が勢力を増し、

本日未明、鹿児島県枕崎に上陸。そのまま東に進み、静岡県にも接近しているとの情報だった。


神谷の胸の奥に、言いようのないざわめきが広がっていた。

——嫌な予感がする。

何事もなければいいが……。


その懸念が現実となるのは、それからわずか数日後、日曜日の昼過ぎだった。

静岡市・清水港の片隅に打ち上げられた小さな遺体——

それは、失踪した少女のものと見られる、水に濡れた子供の水死体だった。



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