第97章「暁の幕開け」
──巨大スクリーンに映し出されたのは、Cグループ代表《暁》の紹介VTRだった。
「いよいよ……来たね」美月が小さくつぶやく。
「ええ。どんなステージにするのか……」片寄の瞳は真剣だった。
「結局、ほとんど情報を得られなかったもんね」櫻井が不安そうに呟く。
映像が暗転し、場内にMCの声が響く。
「それでは──!Cグループ代表、暁のステージです!!」
先ほどの有名バンドのサプライズVTRで、観客のボルテージはすでにMAX。
暗闇のステージにスポットライトが刺さる。
──三味線の華麗な旋律。
──ドラムのずっしりとしたリズム。
──尺八の艶やかな音色に、鋭いエレキギター。
「……おいおい、何人いるんだよ」田村が目を見開く。
「こいつら……セッションミュージシャンじゃねぇか?」矢吹が腕を組む。
「上手すぎます。完全にプロの演奏です」有村が低くつぶやく。
「しかも……海外で活躍するプレーヤーだ」宮下の声には驚きが混じっていた。
観客のどよめきが大きくなる。だがまだ、ボーカルの二人にはスポットライトが当たっていない。
闇夜を駆け抜けて 何処へ向かう
月明かりだけが ただ一つの道標──
照明が落ち着き、竹村にスポットが当たる。
鋭くも伸びのある歌声が、武道館を貫いた。
衣装、照明、ステージング──すべてにプロの演出家が関わっているのが一目で分かる。
「……とことんやってくれるな」矢吹が低く呟く。
「予想はしてたけど……ここまでとはな」田村は唇を噛んだ。
痛みも悲しみも 拭いきれず
されどこの胸の炎は 消させない──
次の瞬間、もう一つのスポットが灯り、一条の声が響く。
鋭さと透明感を併せ持った声が重なり、暁のステージはいよいよ本格的に始まった。
流れ出したのは──MAN WITH A MISSION & miletの《絆ノ奇跡》。
有名アニメの主題歌にもなった、誰もが知るヒット曲だ。
「なるほど……マンウィズのサウンドを再現するための海外プレーヤーか」田村が呟く。
「レベル高いからねぇ、マンウィズは。それに……」宮下が苦笑する。
「一条メイ……別人ですよ。レベルが段違いだ」有村が感嘆する。
「竹村もやべぇな。かなりの実力派だ」矢吹が認める。
「……そこは真剣に戦いに来たのね」片寄の瞳が鋭く光った。
「グルーヴがすごい。バックがいるから、二人とも自由にやれてる」櫻井も素直に舌を巻く。
解き放たれた心に宿した火よ
舞い上げ、まとえ 今 夜明けの向こう側へ──
サビに入り、二人のハモリが響き渡る。
それぞれの胸に抱えた不満が、歌声としてぶつかり合い、しかし不思議なほど調和していた。
その瞬間、巨大スクリーンには有名アニメのダイジェストが流れ始める。
「あらら〜、こんなことまでするのね」宮下が肩をすくめる。
「……これは子供の票を取りに来たな」田村が低く呟く。
「YouTubeでも流れてますからね。子供は暁に入れるでしょうね」有村が渋い顔をする。
「めんどくせぇヤツらだ……」矢吹が吐き捨てた。
君がいたこの世界 もう一度愛せるまで
我が命果てようとも 繋げていくよ
絆が紡いで生まれた奇跡を──
ラストサビ。銀テープが炸裂し、観客のボルテージはさらに上がる。
「ありがとうございました〜!楽しいステージでしたね〜!」MCが声を張る。
「アニメのシーンで感動を思い出した方も多いのでは!?」
歓声が鳴り止まない中、MCが続ける。
「──そして!いよいよラストになります!Dグループ代表〈レゾナンス〉の紹介VTRです!!」
「いよいよだね」美月が真剣な目をする。
「やっとラストか〜」と橘があくびをしながら入ってきた。
「お前何やってんだよ」矢吹が呆れる。
「ちょっと寝すぎたな〜。……最後レゾナンスだね。やれんの?」
「余裕」宮下が即答する。
「準備はできてますから」有村も力強く言った。
「ようやく決着が着くな。……みんな、思いっきり行ってこい!」田村の声が響く。
〈レゾナンス〉は、ついにステージへと歩き出した。




