第91章「挑戦のイントロ」
レゾナンスの面々は、事務所の会議室に集まっていた。
田村が椅子にもたれながらつぶやく。
「……そうか、美月たちに、橘、北村くんに、田辺まで……」
矢吹が苦笑しながら頷く。
「そっちも色々大変だったみたいだな」
櫻井が拳を握りしめた。
「高木さん! 仇とるからね!」
「いやいや、ただクビになっただけで……」と高木は苦笑しつつ、すぐに声を張る。
「それより──Cグループの情報、動きましたよ!」
片寄が身を乗り出す。
「どんなバンド?」
高木は資料をテーブルに置き、ゆっくりと言った。
「一条メイという、自分が担当していたボーカリストが来るみたいです」
宮下が首を傾げる。
「なんか聞いたことあるような……」
有村が思い出したように言う。
「宮下さんとカラオケバンドで初仕事だった時、客で歌いに来た人じゃ……?」
「あー、いたなぁそういえば」宮下がうなずく。「あれ高木さんも確か……」
「ええ、会いましたね」高木は小さく息をついた。「彼女が相手です」
矢吹が顎をさすりながら問う。
「そいつはどんな歌い手なんだ?」
「自分が面倒を見ていた時は、TikTokでバズりやすいポップスを持ち歌にしてました。ただ……今はボイストレーナーが付いているでしょうから、どうなってるか……」
田村が短くうなずく。
「なるほどな。……彼女だけか?」
「いえ、もう一人。滋賀出身の竹村慶人というロックボーカリストがいます。彼と一条メイのツインボーカルで来ます」
「となると、ロックで来ますよね?」有村が眉を上げる。
「その可能性は高いと思います」高木が頷く。
矢吹がニヤリと笑った。
「おい田村、合わせて行くんだろ? ロックだよな?」
「あぁ、決まりだな」田村は即答した。
片寄が静かに問う。
「曲はどうする? 相手は未知数だけど」
会議室に一瞬の沈黙が落ちた。
全員の視線が、頭の中で冷静に、最大限勝てる曲を探していた。
「……よし、これにしよう」
田村が短く告げる。
「流しますね」高木がタブレットを操作し、スピーカーからイントロが流れ出す。
「この曲って……」片寄が驚いたように口を開く。
「うん、このクオリティが出せたら……」櫻井も息をのむ。
宮下が苦笑いを浮かべた。
「おいおい、東京事変ってのはさ、全員がプレーヤーであると同時にプロデューサーやってるからこのクオリティなんだよ?」
有村もうなずく。
「演奏しながら、音で会話するようなもんです……単純にカバーするだけなら勝てないですよ」
だが、矢吹は不敵に笑った。
「いいじゃん。どの道NoëlsもQuiet SWAYも倒さなきゃなんねぇんだからよ。これぐらいやろうぜ」
片寄が静かに息を吸い、頷く。
「そうだね。早速はじめよう」
メンバーたちはすぐに立ち上がり、スタジオへと移動する。
機材の音が次々と鳴り始め、空気が一気に緊張感を帯びた。
「よし、俺はあいつらのサポートに入るから、また情報が動いたら教えてくれ」
田村が高木に声をかける。
「了解です! 買い出しも必要ですし、自分も動きます」
高木は笑みを浮かべ、事務所を後にした。
こうして──レゾナンスは、Cグループとの真っ向勝負に向けて、走り出した。




