第86章「決勝への序章」
歓声が鳴り止まないまま、〈レゾナンス〉のメンバーはそれぞれ喜びを爆発させていた。
高木翔は満面の笑みを浮かべながら、静かに声をかける。
「よし、皆さん。今夜は祝勝会をしましょう。お疲れ様の乾杯です!」
メンバーは笑顔でうなずき、街の一角にある小さなレストランへと移動する。
席につくと、照明が暖かく包み込み、疲れた身体を癒すかのような柔らかい空気が流れた。
高木がグラスを掲げて言う。
「まずは今日まで、本当にありがとう。これからが本当の勝負です。全員で最高のステージにしましょう。」
田村奏真は真剣な眼差しで周囲を見渡し、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「オーディションは通過点だ。決勝はもっと厳しい。だけど、俺たちなら乗り越えられる。」
矢吹慎二が顔を輝かせて言った。
「とうとう来たな!」
宮下辰馬も続ける。
「ここからが勝負だよ、みんな。」
有村康太は微笑みながら言う。
「プロへの道が見えてきましたね!」
櫻井由奈は優しく頷く。
「最高だよ、みんな。頑張ろう!」
片寄結衣も静かに決意を込めて言った。
「絶対に勝つ。」
その士気の高さに包まれた空気の中、田村がふと口を開く。
「そういえば、他のグループの代表は決まったのか?」
高木が資料を取り出し、答えた。
「ええ、決まっていますよ。」
櫻井が興味深そうに尋ねる。
「どんな人たちなの?」
高木が一覧を見せながら説明する。
「Aグループ代表はNoëls。ホーンセクションが入ったバンドです。
Bグループ代表はQuiet SWAY。アコースティックのナチュラルなサウンドが武器の3人組。
Cグループ代表はまだ調査中ですが、動きがあり次第お伝えします。
そしてDグループ代表が〈レゾナンス〉です。」
皆はその名前に驚愕した。
櫻井が声を上げる。
「このAグループって……!」
片寄がつぶやく。
「美月のバンドだ……!」
矢吹が拳を握りしめながら言った。
「あいつらも上がってきたか!」
宮下は懐かしそうに笑いながら言う。
「強敵が来ちゃったな。」
有村は少し身を乗り出し、続けた。
「他のグループはどんな感じなんですか?」
高木はにこやかに答える。
「NoëlsとQuiet SWAYは明日、それぞれライブがあります。」
田村は驚いて訊ねた。
「え? オーディションの最中に?」
高木は笑いながら言う。
「話題作りですよ。決勝は視聴者投票ですから、早いうちに名前を売りたいんです。」
櫻井が焦り気味に言った。
「やばいじゃん! 私たち、何にもしなくていいの?」
高木は胸を張って答えた。
「大丈夫です。だからこそ、あのクラブハウスでのライブをやったんですよ。あの動画、今どうなってると思います?」
田村が感心して言う。
「〈レゾナンス〉の『Chandelier』、再生回数50万回を超えてる!」
高木が得意げに答えた。
「音楽業界で長くやってるだけはありますよ。」
メンバー全員が高木に拍手を送る。
田村がすぐに話を切り出す。
「じゃあ、決勝の準備を進めよう。まずは選曲だ。」
田村が考えをまとめて言った。
「今のところ、候補はこの3つ。
・アコースティック路線
・ロック路線
・ジャズアレンジ路線」
片寄が頷く。
「私たちが決勝で戦えるのは、この3つってことね。」
田村も同意した。
「ああ、まずはここから決めていこう。」
櫻井が声を弾ませる。
「ジャズアレンジだよね?」
矢吹が腕を組んで反論する。
「いやいや、ロックだろ!」
宮下が苦笑しながら言う。
「もういいよ、いつもこうなるんだから。」
有村も呆れ顔で笑う。
「ほんとですよね……」
高木が困ったように笑いながら言った。
「田村さん、どうしましょうか?」
田村が微笑みながら答える。
「そうなると思ってたよ。たがらさ、明日のライブを見に行こう。それから決めていく。」
櫻井が元気よく言った。
「賛成! 美月に会いたい!」
片寄も気持ちを合わせる。
「私も。美月が来るなら、ちゃんと見ておきたい。」
高木がスケジュールを確認する。
「NoëlsとQuiet SWAYはライブの時間が同じで、場所は違うので、一緒には見れません。」
矢吹が提案した。
「じゃあ手分けして行こう。Quiet SWAYは俺が行く。」
宮下も乗り気だ。
「俺もそっちに行くよ。」
有村も続く。
「僕も行きます。」
田村が高木に向き直る。
「じゃあ俺たちは?」
高木が答える。
「Cグループの調査はもう少し進めます。路上やスタジオ練習など何か動きがあるはずですから。」
田村が決意を込めて言った。
「よし、俺は高木と動くよ。みんな、明日のライブが終わったら決勝の準備だ。気を抜かずいこう!」
明日への期待と不安を胸に、〈レゾナンス〉の夜は静かに更けていった。
決勝の舞台はすぐそこにある。彼らの戦いは、いま始まったばかりだった。




