第22章「音を探す旅」
滋賀県、近江八幡。
レゾナンスの5人は、駅近くの古びたカフェ〈WINDY〉の一角にいた。
ユイの行方を追ってここまで来たものの──何の手がかりも掴めず、ただ時間ばかりが過ぎていく。
「……これ、結構まずいかもな」
矢吹がコーヒーカップを傾けながら、ぼそりと漏らす。
「手分けして聞き込みしても、全然情報が出てこない。音楽関係の場所もあたったけど、反応ゼロ」
「ほんとにこの街にいるのかな……」櫻井も不安げに呟いた。
「でも、戻る理由がないし……まだ何かできるはず」田村は静かに言った。
「とりあえず、拠点みたいなのが欲しいな」有村が地図アプリを覗き込みながら呟く。
「リハーサルもできて、ある程度音も出せる場所……」
そのとき、奥のカウンターにいたカフェのマスターが、ふいに口を開いた。
「君たち、バンドやってるんだろう?」
一同が顔を上げると、マスターは微笑を浮かべたまま、コーヒーを淹れ続けていた。
「さっきから聞いてたけどさ──よかったら、ちょっと変わった場所、紹介してやろうか?」
田村が身を乗り出す。
「え、どういう場所ですか?」
「ライブハウスだよ。……というか、元・ライブハウス。いまはもう、ほとんど使われてない。誰も借り手がつかなくて、取り壊しの話も出てたくらいだ」
「……廃墟?」矢吹が眉をひそめる。
「いや、設備は最低限生きてる。手入れすればまだ使える。何より──家賃がタダ同然なんだよ。条件は“管理してくれること”だけ」
「本当ですか……!」田村の声が弾んだ。
「周りには求人も多い。田舎だから、働き手が少ないんだ。ちょっとしたバイトなら、すぐ見つかるよ」
「……よし」
田村が立ち上がる。
「そこを借りましょう。……俺たち、そこでライブをやります」
「ライブ?」櫻井が驚いたように声を上げる。
「この土地で、“自分たちの音”を鳴らしてみたい。ユイのことだけじゃなくて、俺たち自身の確かさを証明したいんです」
マスターが嬉しそうに笑う。
「いいねぇ。そういう目をしてる若者、久しぶりに見たよ」
こうして、レゾナンスは拠点としてその廃棄寸前のライブハウスを借りることになる。
──活動資金のため、メンバーたちはそれぞれバイトを始めた。
櫻井は調律師として、地元の楽器店でピアノの整備を担当することに。
矢吹は町工場の車屋で、車体整備の手伝いを始めた。
宮下は洋食レストランでキッチン補助として働き始める。
有村は警備員として、駅前のイベントホールの巡回を担当。
そして田村は、ライブハウスの電源や照明、音響機材を活かすため、地元の電気設備会社で現場バイトに入った。
それぞれが、それぞれの場所で汗をかき、音のために日々を繋いでいく。
まだユイには辿り着けていない。
けれど──何かが、確かに動き始めていた。




