表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ensemble Session  作者: たぬきち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/100

第19章「オーディションの夜 – 第一幕」

 店内ステージには昔ながらの赤いカーテンがかかっていた。

 胡散臭い柄シャツを着た店長が、マイクを握って開口一番。


 「さぁ皆さま、お待ちかね! 本日のボーカルオーディション──始まりますよ~!」


 観客席には、音大生や路上ミュージシャン、SNSで見つけた素人まで、年齢・風貌も千差万別の参加者たちが緊張した面持ちで集まっていた。


 審査員席には、作曲家の田村奏真とベーシストの有村康太──そしていつもと違う装いの櫻井由奈が座っていた。

 ジャズピアニストらしからぬ眼鏡と、きちんと仕上げたダークカラーのスーツ。

 まるで“仕事ができる人”を装っていた。


 有村は思わず笑い出す。


 「由奈ちゃん、そんなカッコで来たの?」


 櫻井は静かに答えた。


 「静かに!、“選考”中ですよ」


 田村はその様子を見守りながら、心の中でつぶやく。


 (ああ、この子、形から入るタイプなんだ……)


 審査員席は少し笑い混じりのざわめきが起きたが、店長がすぐにフォロー。


 「はいはい、始めるよー! 1番手、どうぞ!」


 


1人目:高校生の男子


 制服姿の彼がステージセンターに立ち、しばらくの間緊張で固まるように見えた。


 選曲はMrs. Green Apple「ライラック」だ。


 華やかなコード進行、転調による高揚感──いきなり技術的にも難易度が高い。


 田村は目を細め、ペンを走らせる。


  高音域のファルセットとミドルレンジとの切り替えがスムーズで、喉への負荷が安定している。


 「上手いな……だけど、この子の声じゃない…これだとモノマネになってしまう」


 


2人目:社会人の女性


 スーツ姿の彼女が静かに楽器アンプを横目に立つ。


 選曲はいきものがかり「ブルーバード」。


 田村のペンが再び走る。


トーンが柔らかく、声帯の使い方も自然、アップテンポな曲だけど、バラード風にアレンジして自分の声に合わせている


 「だけどうちのバンドには合わない、幅広くアレンジ出来るバンドにバラードだけで勝負するのはもったいない。」


 


3人目:寝癖だらけの男


 ステージに現れたのは、ボサボサ頭でパジャマ姿の男。マイク前で固まる。


 有村がそっと尋ねる。


 「……選曲、何にするんですか?」


 男は肩を竦めて言った。


 「うーん、なんでもいいです」


 審査員席に小さなざわめきが起きた。


 田村:眉をひそめながらペンを止め──

 櫻井:眼鏡の奥で淡々と観察を続ける──


 その訝しげな雰囲気の中、店内後方から矢吹が声をかける。


 「“Vaundyの『風神』”はどうだ?」


矢吹からの挑戦状だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ