第七十二話 オラトリオの叛攻-25
ミト市の手前で転戦を命令され、車列はキタカン高速道路を爆走していた。
向かうは、ウツノミヤ。
『正面突破を試みる部隊が包囲されて一部孤立、ドローンも羽アリに落とされまくって混乱中、でも側面からは突けるっぽい!』
っぽい、という不確かな情報である。
『アイツら、ドローンが俺たちの目だってこと理解してんじゃねえのか?さすがに落とされすぎだろ』
『それを調べるのは私たちじゃないけど……個人的に、私もそんな気がします!』
タイヨウの問いに、アジサイが同意。
もしそうなら――と、アラセは眉間に皺を寄せた。
電波、レーダーといったものを吸収し消滅させる、アリの性質。故に敵を見つけるにはリアルタイム映像が必要で、それには長時間同じ場所に留まり、最悪撃墜されても人的被害のない偵察ドローンが必要だ。
そのドローンを立て続けに何度も落とされては困る。
「ドローンが落とされる前に、速攻でやっつければいいだけじゃねえのか?」
『それができれば苦労しないんだよう!』
一瞬でアジサイにぴしゃりと言われたのが歯痒い。
時速130キロで、誰もいない高速道路を2車線いっぱいに広がって走りながら、それでも。
遅ぇ。
もっと早く戦場入りして、もっと早く敵を叩かないと。何度も何度も、逃げ戻りなんてしたくない。
これ以上、失いたくない。
『……のまま高速を降り……の真ん中で……』
無線から、ボソボソと声が聞こえた。送話ボタンが押されているのか、スイッチを切り忘れたか。ロードノイズに混じって、ハヤブサの声がうっすら聞こえる。
アジサイと作戦会議中だろうか。聞き耳を立てていると、ついに二人の声は完全に無線に乗った。
『……っとそれ……危ないかなあ、そこまで信用してないよ私』
『ですが最短でこのエリアを制圧可能です。俺たち一個中隊の戦力で、ウツノミヤ市の4分の1を確保できます』
――オレたちだけで、4分の1を……?
トゥースブラッシュ中隊は定員割れしている。ノゾミ以下3名、第三分隊を丸ごと喪っているからだ。
第一分隊と第二分隊、わずか6輌の三軸強襲戦車で到底確保できるとは思えない。
が。
もし仮に、それが可能なら。
『そりゃ、うまくいけばね?』
『うまくいかせますよ』
『ハヤブサ君の計算と予測、みんなの呼吸と操縦、いっこでもズレたら誰か死ぬよ?私は正直反対だな。それに、特科の火力支援だって、さっき言ったように信用してないよ。ノゾミのことがあるもん』
ノゾミの死因となった、無警告かつ無差別に街を焼き払う砲弾の雨は、味方の特科部隊から放たれたもの。
あの味方殺しの一撃、二度目はないと言われても信用できないのは自分もだ。
「……」
アラセはごくりと喉を動かして息を飲み込んだ。
一体――ハヤブサが考えている作戦は、何だ?
『そうですね……ただ、時速100キロ前後を保ちながら砲弾の雨を躱す機動ができれば……』
『訓練ならまだしも、実戦でもそんな事できるの、怖いもの知らずのアラセちゃんくらいじゃな――』
「オレぇ?!」
思わず声を出してしまって、慌てて口を塞いだが後の祭り。
『あれっ、聞こえてた?!』
アジサイの焦った声。と同時に、HMDに警告。
直線距離で2キロ先、今までいなかった高速道路上に敵の反応。
『近ァ?!全軍停止!!』
車列は時速130キロで走行中。2キロ先に敵。接敵まで――
「いや、このまま撃つ!!」
時速130キロで爆走中の戦車が2キロ先の敵と接触するまであと何秒か答えなさい(20点




