244弾 これで協働戦の特訓終わろう
少し歩くとドラキャが止まっていて、ガーワンバーさんがその前で待っていた。
「お疲れ様でした。協働戦が無事に終わってよかったです。」
そう言って労ってくれる。
「え、このドラキャで、あのロッジに戻るのですか。」
「ええ、我々の操縦で戻ります。その後は休んでください。翌日講評になります。」
とトレガーマさん。操縦がガーワンバーさんが行うようだ。
「はい、ではゆっくり朝までお休みください。夕食は別の者が持ってきますので。」
ドラキャで送られて、ロッジに戻ってくる。
「うう、ガーワンバーさんの操縦ってちょっと……。」
「雑というか、乱暴というか……。」
ミアンとミヤンはガーワンバーさんの操縦が身体的に合わなかったようで、いわゆる車酔い、この世界トゥーアールだとドラキャ酔いといった方がいいのか、ぐったり気味。
「まあ、時刻も時刻だからもうすぐ夕食がくるわよ。」
ヘルバティアがそう言って双子妹をシャッキッとさせようとするが、
「……はーい。」
「……へーい。」
ミアンもミヤンも返事にキレがなく、双子妹は気だるげなようである。
「……先に入浴されたらどうですか。ミアンさんもミヤンさんも。」
俺は双子妹に入浴を勧める。
「さっぱりしたところで夕食にしたらいいかと。」
「そうね、食事の準備は私とニシキさんでやっておくから。」
「ついでにダンも入ってくれば、イテッ。」
ラブコメ路線にしようとする気満々なメムの頭を引っぱたき黙らせる。
「さあ、どうぞどうぞ。」
「……お言葉に甘えさせてもらうわ。」
「じゃあ、一風呂浴びてきます。」
ミアンとミヤンはそう言って入浴にかかる。
「ニシキさんは入浴は?。」
「最後にメムの監視下で入ります。夕食後にヘルバティアさんとメムと一緒に入浴して下さい。」
「えー、ここらで、イテッ。」
どうせ言い出すことはラブコメ路線にする気満々の発言だろうから、もう一発頭を引っぱたく。
「何もそんなポンポン頭引っぱたかなくても……。」
「ラブコメ路線に舵は切らせませんので、メム様。」
「つまんないの……。」
呆れたように俺とメムを見ていたヘルバティアが、
「なんか、このコンビ、たまに阿呆に見えてくるのよね……。」
と呟いた。
双子妹が入浴中に夕食が届けられて、配膳を済ませるとミアンとミヤンが入浴を終えて居間に来る。
「やっぱり入浴はいいですね。」
「人心地つくとはこのことか。」
そう言いながら席につき夕食となる。
「それにしても豪華ね、今回の夕食は。」
「まあ無事に協働戦も終わって、狂獣を退治できたからじゃないですか。」
などと言いながら夕食をとる。
夕食はかなり豪華であった。今回はデザートらしきものもついている。食後の緋茶までもついていた。
「とりあえず狂獣を倒したのよね。」
「まあニシキさんとメムちゃんのおかげでしょうけど。」
「いえいえ、リーダーがうまく他パーティとコミュニケーションを取ってくれたおかげですよ。」
「でも、純朴準星とあの青紫色の装備をつけたパーティは何かお互い知り合いのような感じだったわね。でも仲良しこよしというようには思えなかったけど。」
「やっぱりヘルバティアもそう思ったのね……。」
「メムちゃんもそうなの。いやー、気が合うわねー、私たち。」
会話の流れとはいえ、ヘルバティアは食事中であるにもかかわらずメムに頬ずりをする。
「姉さん……、食事中ですよ。」
「ティア姉さん、もしかして協働戦の時ヤキモキしてた?。」
「確かに、俺も嫉妬まみれの視線を感じた時が……。」
「ちょ、ちょっとー、いいじゃないの。メムちゃんは私の物よ。誰にも渡さないわ。」
そう言ってしっかとメムに抱きつくヘルバティア。
「一応、俺が飼い主のはずですが………。」
「ダン、やっぱり、下宿もパーティも離れた方がいいのじゃないかしら……。」
「いやー、冗談です、冗談です。ニシキさん、メムちゃん、離れないでください……。」
そう言って、さらにヘルバティアがしっかと抱きつく。
「姉さん、なんてみっともない……。」
ミアンが呆れ果てた様子で呟く。
そんな会話をしながら食事をしてデザートを食し、食後の緋茶を堪能して夕食を終える。
「ふー、いい湯だった。」
俺は寝室でそう言いながら伸びをする。
「何よ、せっかく彼女たちが背中を流すとか言ってくれたのだから、そうすればよかったのに。」
「メム様、そういうのは追っ払って下さいよ。なんで俺が入浴でこんな苦労をしなくてはならないのですか。というか風呂場の外で背中を流そうなんて、俺に風邪をひかせるつもりですか。おかしいでしょ、逆にいじめでしょ。」
「まあ、ダンのうろたえるシーンも見れたし、これでいいか。」
「メム様、もしかして、オラオライオンとの戦いで結果的にフンを浴びせたことを恨んでいるのですか……。」
「気分はスッキリしたし。」
「おい……。」
「しかし、さっきもヘルバティアが言ってた事は気になるわね。純朴準星とあの青紫色の装備をつけたパーティが知り合いで、仲悪そうなことは。」
「あんまりそこに好奇心を抱かない方がいいですよ。まずは俺たちはイチノシティに戻って試験を終える必要があるのですし。もしかすると新メンバーを募集とかスカウトとかするかもしれないですし。」
「それもそうね。じゃあ次の特訓は何かしらね。協働戦で一緒に組んだ純朴準星みたいなパーティと一緒に何かするのだといいけど。」
「人が良すぎるのじゃないかって、メム様は評価してましたよね。」
「そうね、腕はなかなかとは思うのだけど、狡さというか小狡さが足りない気はするのよね。」
「まあ俺たちのパーティに合いそうで、かつ腕も立つ者となると絞られて来るでしょうし、メム様としてもお眼鏡にかなうような冒険者はいましたか。」
「うーん、……そうね、微妙なところね。」
ずっと立ったままメムと会話をしていた俺は椅子に腰を下ろす。
「しかしそれにしても、メム様。」
「急にどうしたの、そんな険しい顔になって?。」
「メム様、もしかすると、みんなはメム様の状態異常の無効化できる能力には気づいていないのじゃないかと。」
「ねえ、それっていいことなのよね。」
「悪いことではないでしょう。おまけにこの特訓所での特訓で一番成長したのかもしれませんし。必殺技も開発しましたからね。」
「ねえ、もう寝ない。寝て忘れたいこともあるから。」
「そうですね、今日のフンを被ったこととかは特にですね。」
「あれは臭かったわ。鼻が変になるかと思ったわ。」
「でも今特に何かおかしいとかいうことは無いのでしょう?。」
メムについたフンの匂いは入浴で完全に落ちたようだ。俺がメムを匂ってみるが特に悪臭は感じない。
「まあ、そんな言うほどの異常な状態ではないわね。後は今後の用心よね。」
そう言いながらメムは寝床に潜り込む。それを見ながら俺も寝床に潜り込んだ。
翌日は起床して、さっさと朝食をとって片付けをすると、ガーワンバーさんとトレガーマさんが特訓所の所員と一緒にやって来る。所員の方は朝食の片付けに来たようで、それと一緒に来たようである。
「おはようございます。昨日までお疲れ様でした。」
とガーワンバーさん。
「では協働戦の講評を行います。」
とトレガーマさん。
「まず結論からです。もう特訓させることはない、ということで退所してもらいます。明日の朝にここを引き払っていただきます。」
思わぬ結論が……。
「えっと、その理由は?。」
「大丈夫です、その理由はこれから説明しますから。問題児であるとかのような、決してネガティブな理由ではありませんから。」
ヘルバティアの疑問にすかさずトレガーマさんが答えてフォローする。
「その結論に至った理由は、この協働戦であなたのパーティが予想以上に活躍したからです。またもや予想された日程より早々と終わらせてしまったからです。はっきり言って、もうこっちで特訓させるメニューがありません………。」
えーっ、何という、何という理由なんだ!!。ガーワンバーさんの説明に、驚きで俺は口が半開きに開いてしまう。




