239弾 別パーティと連携しよう
これでまずは他パーティとの合流という推奨事項は果たしたことになる。
遅れて小屋に入った純朴準星の皆さんは、小屋の中の互いの寝床などの位置も決めて、各自で夕食と灌水浴での洗髪洗身を終える。
「では、明日の朝食後から協働について話じ合いますか。」
「ええ、そうしましょう。」
ベンナさんとヘルバティアがそうパーティリーダー同士で予定を決めて、皆は装備のチェックやらをしているが、
「あのー、ぞのグランドキャットを触らせてもらっても……。」
「ダメなら観察させで下さい。」
「絵のモデルに……。」
オンリユニさんにトレソさんにアニエストさんの3人が俺のところにやって来てそう願ってくる。
「いや、まあ、夜になってますし、明日以降でもいいですか。」
多分メムを相手にして興奮しそうだしな……。あと、ヘルバティアの嫉妬が怖い……、というかもうかなり険しい視線が、彼女から俺に注がれているのだが……。
「はいはい、いきなりは飼い主さんが困りますがらね。」
ナツボワさんが3人に向けてそう言ってくれて、3人とも自分の場所に戻る。俺は声の主であるナツボワさんに一礼する。
(ちょっと、厄介ね。こう付きまとわれる感じになると。)
(まあ、人気者の宿命ですかね。メム様、ルックスはいいわけですし。)
(はあ、ルックスはいい、ほほう、中身に難があると言いたそうね。)
(そんなわけないでしょ、勝手に邪推しないでください。)
まあしばらくは念話術での会話も使いながら、この純朴準星の皆さんともやっていかなくてはな。
間も無く夜も更けてくるので、皆一眠りすることになる。
小屋のドアに一番近い場所に俺とメムが場所をとり、何かあれば動けるようにして、その近くにはヘルバティア、ミヤン、ミアンが位置して、少し間を開けて純朴準星の女性3人が位置し各々の隣に男性3人がつく形になる。男性3人が奥にいることになるが、ドア付近で俺が警戒し、何かあれば俺が時間稼ぎの戦闘をして、その間にこの男性3人が守りの役をやってくれることになる。
その夜は何事もなく無事に朝を迎える。
朝食と身支度を各自終えて、これからの協働についての話し合いを行うことになるので、皆車座になる。ここまで一緒に過ごして、この純朴準星の皆さんは非常に人が良いのだと認識する。
「ではどうしましょうか、先鋒役をニシキざんとメムざんでやって敵感知役も含めてですね。こちらからはモベルバンを出しますのでどうぞよろしくお願いします。」
ベンナさんがそう言って、斥候弓手のモベルバンさんがうなずく。俺はモベルバンさんに立ち上がり一礼する。
「では、中団をどうしますか。」
ヘルバティアがベンナさんに問いかける。
「うーん、もしよろしければ、こちらの女性陣3名と一緒に後団を固めてもらえませんか。オンリユニは魔法剣士として、アニエストは双剣使いとして、回復士のトレソを守る形で置きますのでそちらもミアンさんとミヤンさんをヘルバティアさんを守る形で組んでいただければ。」
「じゃあ、私とミヤンが最後方に立ちますので。」
ミアンがそう言うと、
「ありがとうございます。そう言っていただきますと、こちらもフォーメーションが組みやすくなります。」
ベンナさんはそう言ってミアンに一礼する。
「では、中団は、ベンナさんとナツボワさんが務めるわけですね。」
とヘルバティア。
「ええ、よろしくお願いします。」
と純朴準星の皆が立ち上がり一斉に俺たちのパーティに向かい一礼する。俺たちもみんな立ち上がり、
「こちらこそよろしくお願いします。」
と礼を返す。
「では協働戦のために出発しましょう。」
ヘルバティアがそう言って、2パーティによる協働での害獣狩りが開始される。
しかし、純朴準星の男性陣は、最初にこの小屋に来た時は兜や革の帽子を被っていたのでわからなかったのだが、兜などを外すと皆坊主頭だったから俺は驚いてしまった。しかし、その理由を聞くべきかどうか迷っていたが聞かないことにする。それは俺が知るべきじゃないと思ったからだ。
(ねえ、ダンは気にならないの。あの3人は皆髪の毛を剃っているのは、風習かしら、それとも別の理由があるのか、どっちかしらね。)
(メム様、何か人に言えない事情があるやもしれません。そこを斟酌しまして何もこちらから聞かない方がいいかと。)
(そう、そうよね……。事情ってモノを抱えてる可能性もあるからね。)
しかしメムは坊主頭の理由を知ろうと俺に念話術で話しかけてくるが、俺が説得するとあっさり引き下がる。
今は先鋒役としてモベルバンさんと一緒に、狂獣のオラオライオンの退治のためにメムを使ってその狂獣を追跡にかかっている。
「どうしても慎重に調べながら進まざるを得ないですからね。」
そう言いながら木の周りの草や花の様子を見ていたモベルバンさんが、俺とメムに何も気配がないことを首を左右に振って教えてくれる。
(こっちにも何も感知しないわよ。どう、思い切って昨日のようにヘルバティアを先頭にしてみたらいろいろ襲ってくれて何か手がかりなりが得られるのじゃない。)
(まあ、あまり害獣と当たってばかりだと大変ですから。そこは穏便な方がいいかと。)
念話術で会話しながらメムの方も何も感知しないことを確認する。
「このグランドキャットが感知したら何かわかるような仕草があるのですか?。」
俺とメムを見ながらモベルバンさんがそう尋ねてくる。
「一番顕著なのは、顔が上がって鼻をクンクンさせた時ですかね。」
「ああ、なるほど。」
「しかし、モベルバンさんも斥候弓手としていろいろ経験されているのですね。草木や花を確認するのは獣の縄張りとか痕跡を確認してですか。」
そう俺がモベルバンさんに尋ねたところで後ろから声がかかる。
「昼食にしましょうか。」
ナツボワさんから声がかかり、昼食休憩に入る。
森の中の少し開けた野原で、みんな昼食休憩に入るが、交代で見張りをしながらの昼食休憩になる。俺とメムとモベルバンさんとで真っ先に昼食休憩をとり、その後は他のみんなの食事と休憩が無事に終わるように見張りに立つ。
「ニシキさん、さっきの質問ですが。」
モベルバンさんがそう言って俺に声をかける。
「さっきの、……ああ、草木や花を確認するのは獣の縄張りとか痕跡を確認しているのかと聞いたことでしたっけ。」
昼食休憩を挟んでいたので、俺も聞いたことを忘れかけていたが、
「ええ、ニシキさんの聞いた通りです。オラオライオンは木に爪で草陰に糞で自分の縄張りであることをマーキングすると聞いたものですからそれを確認していまじた。」
メムの様子を見守りながら会話を続ける。今のところは異常なさそうだ。
「なるほど、斥候弓手として色々経験なされているのですね。目配りが只物じゃないですよ。」
「いえ、勉強というほどのものではないですよ。あとは生家が牧場をやっていましてね。そこで益獣を飼っていて、そいつ等を観察しているうちに、それと牧場で害獣とやり合ったりもしていたことで身についた知識といいますか、なんというか、うまく言葉にできないのですが……。」
少し照れながら話してくれる。
「生家で牧場ですか。じゃああのパーティにどこかで出会って今みたいに斥候弓手となったわけですね。」
「いえ、皆、同じ村の出身なのです。たまだまというか、同じ村、ああオンニリペンド地方のソンカーン村というどころで一緒に育って、そこでリーダーが中心となって、パーティを結成して冒険者としてやってきまして。何やかんやでゴーノンシティで冒険者ギルドの依頼をごなしまくっているうちにここまで来ちゃった、という感じでしょうか。」
「へえ、俺たちはイチノシティの組合で依頼をこなしてこうなったものですから。まあお互いいろいろあった感じですね。」
「ハハハ、では、もしかしてそぢらも、10ランクアップ試験を一度試しに受験する感じでしょうか。」
「ええ、そのつもりですが、そちらも。」
「ええ、そうです。まだ時期尚早かもとリーダーに言っだのですが。」
お互いに顔を合わせてくすくす笑ってしまう。
(ちょっと、ちゃんと見張りの方をやってよね。)
(ああ、そうでした。はい、メム様。)
メムに気の緩みを指摘されてしまう。
「さあ、そろそろ出発するわよ。」
ヘルバティアがみんなにそう言って昼食休憩を終える。




