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229弾 この講評はいいのだろう

 ドラキャに乗せられてロッジに戻されて、


「明日、講評を行う予定です。それまでゆっくり休んでいただいて、講評の準備もされて結構ですので。」


 そう言われて、昼食をとり、皆ゆっくりすることになる。とはいえ、俺はどんな講評をされるのか全くわからなくて少々落ち着かない気分で、寝室で使った分の魔弾を作っておくことにする。


「ねえ、ダン。やっぱり必殺技名ははっきりと言わないとダメってわけじゃないのは、実戦で使ってみて理解はしたのだけど、やっぱ言わないと必殺技にいまいち乗り切れないのよね。どう思うかしら。」


 魔弾を作るかたわらで、メムがうんうん言って考え込んでいたようだが、そんなことを考えていたのか。メムの発言に少し俺はゲンナリして


「まあ、メム様の自由ですから。相手次第でしょう。必殺技名を言う言わないは俺の関知する所じゃありませんから。少なくとも状況によりけりじゃないですか。」


 そう言ってやると、


「まあそうよね、あの状況だとシーカッマの言い方がものすごくムカついたから必殺技名言わなくてもしっかり撃てたのだけど。まあ、ダンが止めても先に出しちゃってたかもしれないわ。」


「さっきも言いましたが、必殺技名を言う言わないについてはメム様にお任せします。俺がどうこう言えるものではないでしょう。」


「でも、あのシーカッマに使ったのは必殺技だとはダンは認識していたのね。言わなくてもわかるものなのよね。」


「いや、念話術でそう言ってましたし。まあ、……メム様と俺とで開発したものじゃないですか。しかしどうしてまた必殺技名を言うか言わないか悩み出すのです。」


「……また、新たに必殺技を思いついちゃったから……。」


 俺はそれを聞いて、がくりと机につっ伏せながら、


「……明日の講評を終わって予定がどうなるか見てから考えましょうか。とはいえ、この特訓所でそんな開発する日程はなさそうですが。」


「じゃあ、じゃあ、私が言うことを紙に記載しておいてくれる?。開発の機会が来れば記載したものを元に、ね、ね、ね。」


 正直、もうこれからは己自身で開発して欲しいのだけど……。メムのややゴリ押し感を覚えながらもどうしょうか迷って、


「今すぐは無理ですよ。一つ言えることは、自分で一度頭の中で整理整頓してから記載して行ったほうがいいということです。思いつきをすぐにメモしても、頭の中を整理整頓をしていないと結局何が何だか訳がわからなくなることの方が多かったですから。」


「ふーん、……それってダンの経験から来た話なの?。」


「ええ、そうです。ただ闇雲に思いついたことを書いても、結局具体化できずにただの文字の羅列になっちゃいましたから。アイデアを出して自分で開発していくにしても、人それぞれやり方があるので、メム様もそれを見つけていければいいのですが……。」


 俺がそう助言すると、


「なるほどね。確かにそう言われるとそうね。納得できるわ。じゃあ、私も頭の中で整理整頓してみて、ダンに記載して欲しい時には相談するわ。ただこの体だと紙に文字を書くのがちょっと難しい気もするのよね。」


「いいですよ。紙に文字を書くのはメム様の言う通り大変でしょう。……もしかして書いてみようとしたことがあるのですか?。」


 俺がそう聞くと、メムは無言でコクリとうなずいた。


「ところで、実戦で必殺技を投入してみてどうでしたか?。」


 俺は話題を少し変える。


「まあ、コントロールできたし、最後は力加減もしたつもりだけど、もっと錬成しておく方がいいわよね。」


「ふむ、そうですか。新たな必殺技のアイデアもいいですが開発して使っていくいまの必殺技を洗練させるのも重要ですからね。この必殺技で強弱緩急を自在に使い分けられるように、イメージトレーニングとかもいいかもしれません。それと疲労具合はいかがでしたか。」


「今回はそんなに疲労感はないけど、もっと状況が厳しくて、私の体力がない時にどう必殺技が出せるかよね。まあいろいろ考えてみなきゃね。」


 そう言うや否やメムは無言になり、ラッシュコンボ・テンペストについて身振り手振りしながら考え始めたのだった。



 翌日、ロッジにガーワンバーさんとトレガーマさんがやって来る。


「では、講評を行います。」


 ガーワンバーさんがそう言い、皆ロッジの居間に集まって講評を聞くことになる。どこかに行って講評を聞くのかと思っていた俺は少し肩透かしされた感じである。


「まず評価として、極めて優秀であると評価いたします。短期間でこのような結果を出して勝ち残ったことは、パーティの組み合わせの良し悪しも含めても、大いに評価するものです。」


 えーと、これはいい評価なのかなあ。

 そんなふうに俺が思っていることを知らずに評価は続く。


「状況の変化に十分対応できていますし、相手パーティを一気に叩きのめす力量は随一と言ってもいいでしょう。ただし、個人の力量頼りになってしまうところがある点が問題点としてあげられるでしょう。少数精鋭を目指すとしても、ニシキ・ダンの活躍が目立ってしまっているのは、彼一人を抑えられたら、パーティとして機能しなくなる危険性をはらんでいます。ヘルバティア、ミアン、ミヤン3人の能力向上を続ける必要があります。」


「とはいえ、私たち審判役チームの予想以上に決着するのが早かった、いや早過ぎると言っても過言ではないくらいでした。予想以上に早く決着したことで、講評もしにくく、問題点も指摘しにくいところはあるのですが、決着を早くつけたことは大いに評価して、極めて優秀とするものです。」


 トレガーマさんがガーワンバーさんの講評を補足する形で説明してくれる。

 ふむ、まあいい評価だったのだな……。


「ではここからは質疑応答とさせていただきます。審判役チームを代表していろいろ質問して答えてもらったその後、みなさんからの質問を受ける形になります。それを受けて最終的な講評になります。では、最初の質問です。バトルロイヤルの最後の方で天空刀剣スカイソードのパーティと話し合いしていましたが、なぜあのような形で決着をつけたのですか。」


 早速ガーワンバーさんが疑問をぶつけてくる。


「じゃあ、ニシキさん、答えてくれますか。」


 ヘルバティアがそう言って俺に答えを求める。


「……うーん、はっきり言えばあの話し合いを呼びかけた時点で油断しているのではないかと思っていました。そこでその話し合いを利用して相手パーティを叩きのめせるかどうか観ることにしました。そう考えてヘルバティア、リーダーの方から了解を得て、話し合いに臨んだところ、案の定油断しまくっていたので、その場で一気に攻撃しましたらこういう結果になりました。」


 まあ、人を勝手に老け顔と見て家族持ちのパーティと思い込んで話をして、俺とメムがムカついて攻撃にかかったことは話さないでおこう。


「なるほど、確かに人数では、天空刀剣スカイソードのパーティの人数は8人、そちらは4人、倍の人数ですからね。向こうが油断していたと判断していたのですね。」


 ガーワンバーさんが納得してゆっくりこくこくと首を上下に振ってうなずく。


「こっちも真っ正面からぶつかり合っていたら、圧倒的に不利だったでしょう。」


 ミアンも俺の回答に付け加えるように言ってくれる。


「では、私からも一つ、ボーナスポイントを獲得したのになぜそれを捨てるような事をしたのですか。」


 次にトレガーマさんが疑問をぶつける。


「ニシキさんの助言を受けてです。塔の外でボーナスポイントを巡って他パーティ同士がにらみ合ってくれたら儲け物ですし、互いに戦ってくれたらもっと儲け物です。そしてこっちは他パーティの各個撃破がやりやすくなる。私たちのパーティに他の全部のパーティが攻撃を仕掛けないように考えた策としてボーナスポイントを捨てました。効果はあったと思います。」


 ヘルバティアがしっかりと答えてくれる。


「ふむふむ、確かに一対多数を同時に相手しないようにするのは理にかなっていますね。」


 トレガーマさんも納得する。


「あのー、俺からも質問しても?。」


「ええ、いいですよ。」


「ああいう話し合いの場で一気に攻撃するのは道義的にいいものなのでしょうか?。」


「これが街の中ならともかく、害獣とかがウロウロしているような所だと問題はありませんから。話し合うにしても油断をした方が悪いのですから。」


 俺の懸念をあっさりとガーワンバーさんが片付けてくれる。ムカついて攻撃にかかったとは思われていないようなので少し安心する。


「あとは質問とかは、………ありませんね。」


 ガーワンバーさんとトレガーマさんが互いに顔を見合わせた後、


「ではこれにて講評は終了します。」


「勝ち残った皆さんには、豪華夕食が進呈されます。」


 と言って、講評は終わり2人は去っていった。

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