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201弾 追っ手を必死で振り切ろう

 まさかミヤンが追いついてくるとは……。


(メム様、ミアンぽいようでしたが。)


(多分私たちが戦闘中に、ミヤンが先行したのよ。)


 念話術でメムとやり取りするが、


「今度は、ハンデの有り無しがとかいうかもしれないけど、そんなこと無視して全力でニシキさんを叩のめすわよ。」


 ああ、やる気満々だなあ……。


「あのー、ハンデは大丈夫なのですか?。」


「ああ、この特殊環状重具、重いわよ。でもこの重しの使い方を体にうまく染み込ませれば、足とこれをうまく使ってスムーズに移動できるわよ。」


 うわー、ある意味天才的な発想だなあ。


「これが最下位のハンデなんておかしいわよ、イカサマよ。ミヤンって最低なね、見損なったわ。」


 メムがミヤンに対してなんとも無茶な言いがかりをつける。


「イカサマなんかじゃないし。だから言ってるじゃない、重しの使い方で足の動きがすごく良くなって加速がつくのよ。」


 ミヤンがメムの言いがかりに真っ向から反論する。

 ただ俺が今のミヤンが言ったことをもう一度聞いても、天才的すぎてよく分からないが、すごいことをしてるような気がする。まさか、これが爆発的覚醒とかいう状態か……。


「何よ、どっちにしても卑怯よ、卑怯者。」


「ふん、なんとでも言いなさい。今こそニシキさんを這いつくばらせる最大のチャンスよ。メムちゃんには悪いけどあいつ、タコ殴りにして土下座させてやる。」


 ショートソードを抜き両手に持ち、おまけに短杖を持ち替えることができるように右腰にさしている状態のミヤンを見て、俺たちの勝機は少ないことを悟る。でも悟るのと足掻くのは別問題だからな……。


(メム様、お疲れのところ申し訳ないのですが、ミヤンの相手できますか。)


(いいわよ、ふざけた発言にちょっと腹立っていたから、ヤキ入れてやるわ。)


 念話術でやり取りして、再び


「集中。」


 と呟き、一気にグリーンヒルダイルの死体から体液みたいなものの溜まっているところを両手ですくって、メムがミヤンに飛びかかりミヤンがそちらに気を取られている隙に、


 ビシャッ


 その液体をミヤンにかけると顔面に命中する。

 そして一気にグリーンヒルダイルの死体を担いで、お、重いが、しかし必死で担いでミヤンに近づき投げつける。


「きゃーっ、何これ。」


 まさか獣の体液と死体を投げつけられるとは思っていなかったミヤンは思わぬ奇襲で、メムの攻撃と投げられた死体への両方の対処が遅れる。

 その結果、メムの頭突きをもろに喰らい、その上で体液を顔面に浴び、さらにグリーンヒルダイルの死体に乗っかられるという状態になり、その死体と抱き合った状態で仰向けに倒れてしまう。足の特殊環状重具が足元をもつれさせてしまったようだ。


「うう。うーん。」


 ミヤンは頭突きを喰らったせいか気を失ったようだ。

 俺とメムでショートソードを取り上げ、他の持ち物を素早くチェックして、


「あ、地図がある。」


「ダン、ロープよ。」


「ああ、ありがとうございます、メム様。」


 ロープでミヤンの両手を後ろ手に縛り上げ地図とショートソード一本をもらっておく。


「ふぅーっ、……うん、近いわよ、ヘルバティアとミアンね。」


「メム様、一気に逃げましょう。」


「じゃあこっちね。ついて来て。」


 その場から大急ぎで離れる。全力ダッシュだ。


「クソーっ!!。くそーっ!!。死体をぶつけるなんて、卑怯者めー!!。」


 しばらく逃げていると、ミヤンのものすごく悔しそうな叫び声が後ろから聞こえてきた。



「とりあえず、ハァ、ハァ、ここまで来たら、ハァ、ハァ、しばらく安全でしょう。」


 抜身のショートソードと地図を持って逃げて来たからな。これで条件は五分五分かな。


「ハァ、ハァ、ところで、ハァ、ハァ、ダン。これからどうするの。」


「一休みしましょう。もうすぐお昼ですし。」


 ということで、近くの川を見つけて手を洗い、メムは口をゆすぎ、昼食にする。川べりで携帯食糧をかじり水筒の水を少し飲む。


「ここでしばらく休むのじゃないでしょ。」


「用心のために食事を終えてしばらくしたら別の場所に動きましょう。地図もありますからね。次にどこでしばらくやり過ごすか……。」


 うまくいっているように見えるが、こういう時ほど用心した方がいい。

 ミヤンからかっぱらった地図を見ながら、メムと一緒に次の場所を考える。

 地図には、ロッジの位置と洞穴、洞窟の位置に川の位置、それに


「この『済み』と書いてあるのは、もしかして……。」


「ええ、俺たちがいたかどうかを一度確認したことを記載したのでしょう。」


「なるほどね、じゃあそこに向かいましょう、そうすればしばらくやり過ごせるかもね。」


 メムの意見はもっともであるが、まあとりあえずで


「ここからだと、『基点』がここに記載されているから、多分この『基点』は俺たちのスタート地点みたいな意味でしょう。この近くの『済み』と書いてある場所は、こっちの方か。」


「じゃあ早速向かいましょう。さっきの戦闘で少し疲労がたまってしまって。」


「その『済み』と書かれているエリアの洞窟にこもりますか。ただ、相手側がそれに気づいて再度俺たちを探しにくる可能性もあるでしょうね。」


「用心しておくわ。」


 そう会話しながら、昼食と休憩を終えることにして、さっさとその洞窟を目指して歩み始める。


「どうですか、今は周りには。」


「うん、例の審判役が付かず離れずという感じかしら。それだけよ。」


 それを確認して進んでいく。1時間半ほど歩き、その洞窟にたどり着いた。


「しばらく夕刻くらいまでこもって様子を見ましょう。」


「洞窟の中は異常なさそうだけど、奥には行かないほうがいいかもね。」


「すぐ抜けられるように出入り口付近にいましょう。見張り役を交代しながら休息しましょう。」


 しばらく用心して洞窟の奥に入っていたほうがいいのかもしれないけど、今はまず休息を取ろう。メムを休ませて、しばらく様子を見る。幸いにも何の異常もなくそのまま夕刻を迎える。

 夕食を携帯食糧と水筒の水でとって、洞窟付近から木の枝を拾い、付け木で火をつける。


「見つかりやすいですかね。」


「でも夜になれば煙も見えにくくなるわよ。じゃあダンの寝てる間は私が警戒しておくわ。」


 そうやってその洞窟内で夜を過ごして、そのまま朝を迎えた。


「ふああ、メム様大丈夫ですか。」


「まあ、大丈夫よ。でも追われる立場って辛いものね。心理的に落ち着かないわね。」


「まあ、どこもそうでしょう。追われるより追う立場の方が強いって昔から言いますよね。」


「そうだったかしら?。」


 そう会話しながら朝食をとり、火を消して別の場所に移動する計画を立てる。


「このままこの洞窟にいたほうがいいのじゃないかしら。」


「そこは悩みどころで……、ミヤンから地図は回収しましたが、地図をとられたことをヘルバティアとミアンも知ってはいるはずです。一つ問題なのは、同様の地図をヘルバティアとミアンが持っている可能性もあるということです。」


「ミヤンだけじゃなくヘルバティアとミアンも地図を持っているかもしれない、だから他の場所を私たちがいないか確認をしている、ということかしら。」


「ええ、この地図に書かれた洞窟や洞穴をチェックして行ってるのではないかと。もう一つ危惧していたのは、俺たちがチェック済みのところにあえて行くと読んで先にそこを探しにくるかということですが、今のところは大丈夫そうかなと。」


「ええ、今も周りにいるのは審判役だけね。」


 メムがそう言うのを聞いてふと思う。審判役の方々は、食事とか休憩休息は大丈夫なのだろうかと。

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