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184弾 サボり逃げる彼奴(あやつ)の対策考えよう

 この俺の冗談半分の案が採用されそうだが、しかし一つだけ問題がある。

 どうやってその組合本部長をひっ捕らえて牢に入れるかが問題なのであるが、


「じゃあ、誰が組合本部長を捕まえて牢に入れますか?。」


 さりげなく俺が2人に聞いてみると、


「うーん、うちの職員で組合本部長(あの人)を捕まえて牢に入れられる者は……。」


「あえて言うなら冒険者ギルド長のロジャーか……。」


 この案に食いついていた2人が、そう言って互いに顔を見合わせる。


「キレたら特にやばいからなあ……。」


「年増とかババアとかの言葉にはすぐ激ギレするからなあ……。」


 イサドさんもブーファロさんもそう言って肩を落とす。

 まあ確かに補佐官のリーゼさんを捜索に行った時、年増の姉ちゃんと言われたことで凶暴化いや狂戦士化したものなあ。あの凄惨なシーンは……。しかも素手でボコってたしなあ。


「やっぱり、組合本部長(あの人)を抑える方法はなあ……、うーん、そうなると、牢以外の方法でお願いします……。」


 ブーファロさんがそう言って方針転換を願い出てくる。


「まあ、わかりました。何かいい案が浮かんだら話にきますがよろしいですか。しかし、ここでこんな話をして大丈夫ですか。」


 こうなると俺も妙案が浮かんでこないし、組合本部長に気付かれずに組合本部から脱走するのを抑えなくちゃならない、というとなあ……。

 とはいえここでこんな話をして誰かに聞かれるとか心配じゃないのだろうか。


「まあ、意外なところで抜けてはいるのです。ここで話をしても組合本部長(あの人)はそんな関心持たないので。自分の好奇心の赴くままのところはありますが。」


 とイサドさん。

 なるほど、確かにそういうところはありそうだな。でも難題だな。組合本部から脱走させない方法、組合本部に留めておく方法か……。



 後日何か案が浮かんだら連絡することをイサドさんとブーファロさんに約束して帰宅の途につく。


(あの大師匠兼組合本部長をねえ、どうするの。ダン。)


(うーん、あれやこれやどうかなというのは、というのは考えているのですが……。)


(まあ、そうさっとできれば苦労はしないわね、組合本部の職員でも浮かぶレベルの対策じゃダメでしょうし……。3姉妹に相談する訳には……、やめたほうがいいわね。)


 念話術で会話して考えながら帰宅する。

 帰宅した後も自部屋にこもって考え続ける。3姉妹に相談もできない……。下手に相談して大師匠が組合本部長と同一人物であることがバレる可能性があるから話せないしな。

 そう思いながらしばし思索にふけっていると、


「ダン、ダン。ねえ、ダンてばっ、いつまでそうしているつもり。夕食の時間よ。」


 メムに猫パンチで頭をはたかれる。


「あ、ああ。考え込んでしまったな。」


 と言いながら3姉妹と夕食を取る間も考え込んでしまう。


「ねえ、どうかしたのですか。」


 ヘルバティアに聞かれるので、


「あ、いや、ちょっとまあ、魔術研究について考えていまして。ええ、はい。」


 とりあえずはそう言ってごまかす。魔術研究についても考えなくちゃいけないことがあるから、嘘を言ってるわけでもない。


「食事の時間は食事に集中しないと、ミヤンがおかずを取っちゃいましたよ。」


 ミアンにそう言われて、皿を見るといつの間にか空になっていた。


「ふふん、隙有りだぜ。モグモグ。」


 勝ち誇って言いながら、ミヤンが俺の皿からかっさらったおかずを口に放り込んだ。

 それを見ながらメムが、


「まったくミヤンはいやしんぼうだから……。」


「お前が言うな。」


 俺がすかさずメムにツッコミを入れてしまう。


「まあまあ、食事は楽しくよ。」


 ヘルバティアがそう言って場をとり持つ。

 夕食後も考え込んだままで、片付けを終えて灌水浴室で体を洗い自部屋に戻る。

 珍しくメムと同時に部屋に戻ってきた。


「あれ、今日はお早いのですね。ヘルバティアとの入浴はもう……。」


「たまにはさっさと終える日もあるわよ。ダンがずっと考え込んでいるのが気になったからね。で、何か妙案でも浮かんだのかしら。」


 自部屋に入って、


「まあ、あの大師匠兼組合本部長をどうするか、あれこれとは考えてみているのですが、どれも穴がありそうなものでこれだという決め手に欠ける気がして……。」


 ウンウン唸りながら考えてみるが、名案も妙案も浮かばない。


「ゴキブリ捕獲駆除みたいにあの部屋に捕獲用のテープを仕掛けて動けなくするとか……。」


「メム様、それは俺も一瞬考えましたが何を使ってあの組合本部長を誘引しますか、その問題がありまして。」


「ああ、そうね……。私みたいに食い意地が張っているから美食に釣られるみたいな……。」


「メム様、その自覚はあるのですね。」


「ええ、だからこの前に決意したのよ。食い意地を張りすぎないことを。」


「ああ……そうですか。」


 メムがドヤ顔で結意表明したことを自慢げに言うが、それはともかく。


「今度、宰相補佐官に説明に行く際に、組合本部職員から苦情が上がっていると注進しておきますか。」


「まあ、それが一番無難な線よね。でも効果は……、そう長くは続かないわよね。」


「あとはあの組合本部長室を外から鍵がかけられるように改装するとか。」


「でも、組合本部長に気付かれずに鍵の取り付けができるのかしら……。」


 結局決め手に欠けるのだよなあ……。



 翌日、昼過ぎまで考え続けたが案が浮かばなくなってきたので、組合本部に向かい、イサドさんと会って俺の方から宰相補佐官に会って話をすることと、組合本部長室から逃げられないように外から鍵をかけるように改装する話をしてみたのだった。


「まあ、それぐらいしか手はないかもしれませんねえ、いえ、相談に乗っていただきありがとうございました。」


 とイサドさん。

 そこに宰相補佐官から文が届いて、


『時間ができましたので、説明に来られたし。早ければこれを届けたドラキャに乗れます。』


 との連絡を受ける。


「このドラキャは明日王都に向けて出発ですね。」


 文を届けた御者にそう聞いてみると、


「ええ、そうです。伝言、返事あれば承ります。」


「明日朝からこれに乗って向かいますがよろしいですか。」


 文を届けた御者にそう言ってイサドさんにも


「早速ですが、相談の件を補佐官殿にも話してみます。」


「分かりました。」


 ということで俺とメムは急ぎ帰宅して、3姉妹にも話をする。


「まあどっちにしても説明する機会が早めにきたのだから、受けるしかないわね。」


 とヘルバティア。


「あの絵を持って行きます。」


 とミアン。


「そんな長期にはならないでしょう。」

 

 とミヤン。


 早速準備に取り掛かり、翌日朝から昨日文を届けたドラキャに乗り込み、その日の夕刻には宰相邸に到着した。



「返事の文が来るかと思っていたら、本人たちが来てくれるなんてね。そちらの予定は大丈夫なの。でも来てくれてありがとう。」


 リーゼさんがやや驚いたような表情を見せて俺たちパーティ一行を出迎えてくれる。


「この度は、このメムとニシキのことで説明致したくまかり越しました。多忙のところ押しかけてしまい申し訳ありません。」


 パーティリーダーとしてヘルバティアがそう言って挨拶をする。


「ご丁寧にありがとう。もうそんな堅苦しくしなくていいわよ。ある意味一緒に死線をくぐった仲じゃないの。もうっと気楽にしてちょうだい。」


 こういうセリフがさらっと言えるあたりが流石なんだよなあ。


「組合本部長は連れて来れなかったのですが、それは大丈夫でしょうか?。」


「いいわよ、それにディマックから手紙であなたとの話について報告を受けているから。」


 あえてそう聞いてみる。今回俺とメムについての説明と併せて、ディマックさんというか組合本部長の仕事サボり逃げについても話をするから、ややこしくなる相手がいないのでしっかり話ができそうだ。

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