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170弾 この先の道おかしいだろう?

 宿の食堂でさっさと夕食をとる。副菜にここのクーノショートの産である物を使った料理が出たが、俺の感想としては特になかった。ぷにぷにした歯ごたえだった。淡々と食事をしながら、クーノショートの街についてマリーゼさんから話を聞く。

 この街は漁港から始まり、船舶の集結しやすい海面でもあったことから、物資の積み出し港として貨物港にもなり、他地域、他国に物資を送り出す拠点にもなってきたという。特に南の、ここの世界でアクイの方向には海を越えてデー・イッカホ国があり、そことの航路の起点にもなる。現在この街の民はこの国随一の港街としての名を誇りにしている。


(私、船に乗ってみたいわね。)


(それはまたの機会にしましょう。)


(そうね。)


 マリーゼさんの話に触発されたかメムが海に思いを馳せるが、現状が現状なので俺がたしなめるとあっさり引いてくれた。

 夕食後はまた部屋に集まり話し合いをする。


「では明日はハーチノコートの街へ移動する。警戒をしっかりな。」


 ディマックさんがそう言ってハーチノコートの街への移動ルートを確認する。

 そうして話し合いは淡々と終わり明日に向けて早めに準備と就寝のため各自部屋に戻る。



「で、さっきの話の続きだけど、あの救出の時の覆面の奴らはどうなったのかしらね。そいつらが逃げたりして、さらにムキになって私たちを追いかけたりしないかしら。」


 メムは夕食前の俺との会話が気になっているようである。


「そうですね、俺たちは彼らの生死を確認していませんし、あのディマックさんが何か手を打ったとしても、一部はマリーゼさんを狙い続けるかもしれませんね。まさかそれも含めて……。」


「どうしたの、何か気づいたの。そんな怖い顔して。」


「いや、今後いろいろ用心した方がいいかもしれませんね。ミュー様も。」


「何かそういうふうに言われるけど、本当慣れないわね。」


 メムはそう言ってボヤくが、さっさと就寝しよう。明日朝は少し早めに出立することになるからな。



 警戒はしていたが、意外にも翌日からのハーチノコートの街への移動と視察、そしてさらにはロクノコートの街への移動と視察は無事に終了したのであった。



「ねえ、意外と順調に進んでいるわね。このまま無事に終わるのじゃないかしら。」


 ロクノコートの街の視察を終えて翌朝からゴーノンシティの街に移動する準備も終えて、就寝する前のひと時にメムが楽観的な見通しを示す。


「うーん、意外と順調すぎるので。……逆に怪しい感じがしますね。敵は我々を少し放っておいて油断したところを衝くつもりなのではないかと思います。正直ずっと気を張ってるつもりでも、後半になると緩んでくることもありますし、今まさにミュー様がそうなのじゃないですか。」


「……む、言われてみればそうなのかもしれないわね。まさか…、もしかして、私に街々の名物料理やらを思いっきり食べさせないために、ダン、いやティグレスがそう言っている……とかではないでしょうね。」


 それはあまりにもひどい言いがかりだ。


「護衛対象はこの国の重要人物ですよ。でもそろそろ全国的に捜索なり犯罪に巻き込まれたとして捜査なりの話が出てくる頃だと思いますが。これからが勝負になりそうな気はします。」


「それは、あなたの、ドラマみたいな刑事の勘、みたいなものかしら。」


「別に刑事ではないのですし、そんな刑事の勘で話が進んだら冤罪だらけになりかねないですよ。とにかく油断は禁物ですから。」


「そうね、そうね。まあいいわ。そろそろ寝ましょ。」


 ずいぶん油断し切っている感じもあるけどな……。少し不安を抱えながら俺も眠りにつく。



 翌朝からはゴーノンシティの街に移動を開始して、道中は異常なくゴーノンシティの街にもうすぐ着こうかという頃、


(妙ね、道の流れがおかしいわ。)


 メムが異常を感知する。鼻をクンクンさせてくる。


(止めた方がいいかもね。)


(分かりました。)


「ちょっと、ちょっと停めてください。」


 俺がそう言ってドラキャを道の片隅に停止させる。


「どうしたのだい、急に腹でも下したか。」


 ディマックさんが俺にそう聞いてくるので、


「メムが何か異常を感知したようです。ヘイルさん、俺とメムで先に道の様子を見てきますがいいですか。」


 今ドラキャを操縦しているパーティリーダーにそう言い、許可をとりにかかる。


「いいですよ、じゃあ偵察お願いします。」


「気をつけてね。」


 ヘイルさんが許可して、そこにマリーゼさんが言い足してくる。


「では行ってきます。皆さんも用心してください。」


 そう言い残して、道の先、街への進行方向へ向かって早足で歩いていく。


(ごめんなさい。私が一番油断していたようね。もっと早く気づくべきだったのかもしれないし警戒を緩めてたからね。)


 念話術で殊勝に謝ってくるのには驚く。


(詫びより先に、警戒の方をお願いしますね。)


 そう返しながら早歩きを進めてみると、


(ちょっと異常ね。隠れながら接近して欲しいの。)


 メムのリクエスト通りに道端から茂みに隠れながら進んでいき200マータルほど進むと、


(何これ、死体、いや、なんでみんな倒れているのかしら。)


(確かに異常ですね。)


(やばいわ、変な匂いがするわ。一旦引きましょう。)


 ここはメムに従おう。

 道を見ながらこっそり引き上げようとするところに、一台のドラキャが走ってくるが、ホードラが動きを止めて崩れ落ち、異常に気付いた中の者が降りてくるが、すぐに倒れてしまう。

 まさか、毒ガスとかなのか。とっさに持っているタオルを鼻と口の呼吸器を覆うように被り後頭部で縛り、メムと一緒に皆のいるドラキャの停車場所に引き上げにかかる。


 早足で逃げ出し、しばらく早足を続けていると、


(ここなら大丈夫よ。匂いがしないわ。)


 メムが念話術で言うので、タオルを外した。



 ほうほうの体で皆のいるところにたどり着き見てきたことを報告する。


「その場にいたままだと危険だと判断したので、じっくりとは見てませんが、ホードラが急に止まり崩れ落ち、中にいた者も降りてくるやすぐに倒れてしまいました。魔術とかでいや魔法の発動とか魔道具とかで動きを止める、……麻痺させたり殺したりすることとかは可能なのでしょうか。」


「倒れていったのは事実なのね。」


 マリーゼさんが険しい顔で俺に確認する。


「この目で見てきたことです。今このまま突っ込むのは大変危険です。で魔法の発動とかでは麻痺とかは可能なのでしょうか。」


「……うーん、風属性の魔法でサンダーアローという魔法は聞いたことはあるけど……。」


「そんな魔法ならそれなりの能力がないと発動できないし、そんな静かに動きを麻痺できた魔法ではなかった話でした。」


 いろいろ心当たりを思い起こしながらイワノフさんとイワンさんが答えてくれる。しかし、魔法の心当たりがない以上、対抗策が見つからないな。


「強行偵察をしますか。俺とメムで暴れてきますので。」


「無茶だ、何もわからないのに。」


 ヘイルさんが俺の提案に猛反対する。


「でしたらこのままここでキャンプをして一泊しますか。さっき言ったようにこのまま突っ込めば全員動きを止められるでしょう、魔法による麻痺か暗殺かどっちにしてもです。」


 日がだんだん傾き、日の入りまでもうすぐというところである。さっと強風が吹き砂埃を巻き上げる。それを見て俺はふと閃く。


「もしかしたら、俺とメムで何かわかるかもしれません。」


「え、暴れることでですか。」


 ヘイルさんが怪訝な顔をする。


「何か思いついたのかね。」


 ディマックさんは期待を込めた視線で俺を見る。


「幽霊の正体見たり枯れ尾花、もしかして単純なものできるのかなと思いまして。」


「ゆうれいのしょうたいみたりかれおばな?、何の言葉だ。」


 とディマックさん。


「ああ、いやいや。ちょっと見てきます。しっかり確認して場合によっては排除します。ヘイルさん、いやリーダー、許可してください。」


 俺はそう言ってヘイルさんに頭を下げる。

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