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167弾 自分の変装どうだろう

 翌朝、よく寝ていたようでメムに起こされる。


「うあ、もう朝か。ああ、起こしてくれてありがとう、ございます。メム様。」


 寝床で半身を起こす。


「よく眠っていたわね。やっぱり昨日の疲れがあったのじゃない。あんだけぶっ放したわけだし、魔弾を。」


「まあ、そうかもしれませんね。」


「正直昨日の救出作戦でかなり体力と魔力を持ってかれたのではないの?。」


「うーん、ただ、まあ魔術研究と体力錬成はしていたおかげかなんとかなっているのですよ。それにやっぱりあのペンで漢字による魔法式を書くと、いい感じで魔法が発動してくれる。」


「魔石をペン先に加工しているペンだったわね。あれを作った方は、確か、シストラニ・コジーロンといったかしら。」


「ああ、どこかで何か作っているのでしょうかね。さぁて、回復はしてるし、今は今できることを考えなくちゃですね。メム様。」


 寝床から起き上がり服を着替える。しかし珍しくというのかメムが俺のコンディションを気にしてくれているのは、何かあるのかな……。

 身支度を済ませると皆と朝食をとる。

 でも考えてみるとどえらい面子が揃っている。宰相補佐官に組合本部長、このツートップはえらい破壊力がありそうだな。しかも当分一緒に行動するのか。


「よし、あたいは先生を変装させる。弟子たちは同じように変装しておいてくれ。……ニシキ君、まあやってみてくれ。」


 まあ俺の変装なんてそんな大したことはしていない。以前に駆け落ちの依頼のためにある程度はやったレベルだ。この3姉妹の変装はその駆け落ちの依頼の時の俺たちの変装と比べると月とスッポンではあると思わされるからな。あとは演技力か……。

 部屋に戻り、ウイッグをつけて、付け髭をつける。


「どうですかな。メム様。」


 ややのどを絞る感じで声を出してみながらメムに見せると、


「ウイッグとかつけているところを見なければ、変装したとは一瞬わからなかったわね。意外とイケるのじゃない。」


 メムも少し感心している。

 その軽い変装状態で玄関に向かう。


「少し遅かったようですが、……意外にやりますね。ニシキ、いやティグリスさん。」


 いつもの茶店開店時の変装したミアン、いやイワンさんがそう言ってくれる。


「なるほど、動き方を少し重くすることでか……。」


 とイワンと同様の変装したミヤン、いやイワノフさん。


「教えが生きていますかね……。」


 と茶店開店時の少年に変装したヘルバティア、いやヘイルさん。


「ほほう、意外とやるな。」


 そういう声をあげたディマックさんを振り返って見ると、


「何か恥ずかしいような興奮するような気分だな……。」


 リーゼさん、いやマリーゼさんと商人夫婦みたいな格好に変装したディマックさんがいた。

 なるほど、俺の変装術じゃまだまだレベルが低いな……。


「さすが師匠です。相手も含めての変装ですか……。」


 ヘイルさんが感心するが、


「いや、ティグリスさん。このウイッグと付け髭だけでこうやるとはな。まあ悪くない。グレーのウイッグと同色の口髭で眉もうまく塗ったな。どこかそこいらにいる不良ジジイみたいだな。こりゃ今後、変装術教える方も大変だなあ。」


 褒めてくれた、のかなあ。まあ目立たないようにしてみるのを第一に考えてみたのだが……。

 ということで、俺がドラキャの操縦をしてメムは俺の隣につく。


「よし、準備は整ったからな、よし行くか。」


 とディマックさん。


「よろしくね、みんな。」


 とマリーゼさん。

 俺はゆっくりとドラキャを発進させる。事故には気をつけないとな……。



「えっとまずはクーノショートの街を目指していけばいいのでしたっけ。」


「ああ、道なりに入ってくれればいい。」


 このドラキャを走らせてみて感じることは、とにかく加減速が良くてその割に加減速に伴う揺れが少ない。減速時のつんのめる感じが少ないのはいいな、そう思いながら走らせる。以前に乗った宰相邸からのドラキャに比べると最高速度は小さいが、加減速のキビキビ感がいい。ただ前世で自動車の運転している時、特にロングドライブ時も意識していたが、加減速を抑えてふわり加速でゆっくり減速かつ速度変化を抑えて安定した速度を維持し続けることがいいと教わったことがあるが。

 それを意識してしばらくドラキャを操縦して走らせていると、


「ふむ、なるほど。面白い操縦をするな、君は。」


 後部席から俺の操縦を覗き込むディマックさん。


「そうですか。でもこのドラキャは組合本部長が自慢するものだけあって、いい動きをしてくれます。」


「いやいや、操縦もなかなかのモノだな。君の操縦でみんな静かに眠っているよ。」


「いや道もいいのでしょう。走りやすい道ですし。」


「それにホードラをうまく使っているな。このペースだと予定より早めに着きそうだ。いやこのままの走りでいい。」


「あまり褒められても何も出ないのですが……。」


「まあ、この調子で頼むよ。止める予定の場所に近くなったら声をかける。」


 ディマックさんはそう言って後ろに引っ込んだ。隣のメムは流れていく風景に興味津々といったていで窓に顔をつけながら外を見ている。まるで幼い子供のようだ。



 しばらく走らせていると、


「もうそろそろだな、一時休憩にしよう。」


 ディマックさんがそう言ってくる。

 速度を慎重に落としていくと、『ドラキャ休息場』の看板が見える。

 左折して少し進むと、村と休息場がありその一角にドラキャを止めることになる。


「よし、休憩だ。みんな起きろ。」


 みなさんよく寝てらっしゃるようだ。起きていたのはディマックさんだけか。昨夜マリーゼさんと3姉妹が女子会すると言っていたが、もしかして夜遅くまでとかか。


「あら、もう着いたのかしら。」


 マリーゼさんが寝ぼけ眼でそう言い出す。


「つい眠ってしまいました。警戒してなきゃいけないのに……。」


 ヘイルさんは申し訳なさそうに言う。イワンとイワノフも同様な表情をしている。


「昼食にしますよ。あたいと先生と、ヘイル。一緒に買い出しに行くぞ。」


 そう言って昼食を買いに行く。


「いい操縦ですね。揺れが少ないからか気付かずに眠ってしまいました。」


 とイワンさんが感想を述べる。


「もしかして昨夜結構遅くまで……。」


「ええ、女子会でした。」


 とイワノフさん。

 まあ内容は聞かない方がいいだろうな……。

 そうするうちに3人が戻ってくる。


「よし、昼食だ。さあ食え食え。」


 サンドイッチのような物だな。味は……うまい。


(メム様、少ないですがどうぞ。)


 俺の分も分けてあげる。


「何だ、ティグレス君、少食だな。」


 ディマックさんがそう言ってくるが、メムに大食いされて目立つのも危険だと思っているからである。用心に越したことはない。


(ありがとう、あまり大食いで目立たないようにするわ。)


 意図は通じたみたいだ。


「しかし、ティグレス君とこのグランドキャットを見ていると、君たちは何か違和感を覚えるのだがな。」


「そうね、そう感じることもあるわね。」


 ディマックさんがいきなりそんなことを言い出して、マリーゼさんも少し同意するような感じになる。直感なのか、何か証拠があるのか。


「まあ、冒険者として生きるのに精一杯、まさに毎日が一杯一杯なので、あまりこの辺の地理とかにはまだ不案内ですから。」


 俺はそう言ってこの場をごまかす。

 食事を終えて休憩して再度乗車して今度はクーノショートの街を目指す。

 順調に走り、この後の道中何事もなく目的地につき宿に入る。もう夕刻になってくる頃だ。

 操縦してた俺と、隣のメム以外はドラキャ内でみんなよく眠ってしまっていたようだった。

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