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165/189

165弾 補佐官の救出作戦実施しよう

「さて、これでどうするかですね。」


 茂みの中に隠れながら補佐官一行の救出策を考える。廃家屋の玄関前に7人、勝手口に5人が広い目に散らばって廃家屋を見張っている。背後には注意を払っていないようだが。


「さっきのように、ダンが魔弾をぶっ放す、その混乱に乗じて私が突入して大暴れする、装填後またぶっ放す。その流れでいくしかないのじゃ。」


「そうですね、現状を見るとそれがいいかもしれませんね。まだディマックさんと3姉妹は来る気配がないですし。」


「ここで暴れて、彼女たちに位置を知らせるという手もあるでしょうし。どう、ダン。」


「……そうですね。時間もあまりなさそうですからね。……さっきの手と同じ方法で行きますか。ただし、メム様、魔弾装填後の6発をぶっ放したあとは、その家屋に突入して補佐官一行を外に誘導して下さい。それと、ここからは念話術でやりとりしましょう。」


「わかったわ。ダンが6発ぶっ放す、私が暴れる、装填してまたぶっ放す、私が家屋に突入して補佐官一行を外に誘導する、ね。了解よ。でこれから念話術ね。」


「ええ、お願いします。じゃ、ここから救出作戦開始です。」


 俺たちはコソリと動き始める。

 タイミングを見計らう。リーダー格の黒白覆面の奴が玄関前と勝手口に見張りを一人置いて、自分の周りに集合させる。どうやら突入するつもりのようだ。

 じゃあこのタイミングで行くか。メムを静かに先行させて、狙いをつけた拳銃からリーダー格の奴目掛けて引き金を引き、魔弾【岩球】をぶっ放す。


ドシュドシュドシュドシュドシュドシュ


 全弾命中、撃たれた奴らは倒れ伏す。と同時にメムが乱入して、混乱する奴らに噛みつき、爪で引っ掻き切り掛かる。


「おい、これは何だ。」


「敵か、どこからだ。」


「撃たれた者を救護しろ!。」


「ぎゃあ、噛まれた。」


「グランドキャットを取り押さえろ。」


 混乱する状態になり、叫び声が響き渡る。

 玄関と勝手口に残った見張り役も駆けつけてメムに相対する。

 装填を終えた俺は、そのまま無言で廃家屋に接近し、引き金を引き


ドシュドシュドシュドシュドシュドシュ


 混乱する奴らを撃ち倒す。それと同時にメムが廃家屋に突入する。それを見ながら俺はメムの入っていった玄関先にて拳銃に魔弾を装填して構える。

 廃家屋周辺の敵は排除できたようだ。

 そこにドラキャが走り寄ってきて中からミアンとミヤンが降りてくる。


「ここでしたか。」


「間に合ったようね。」


 ミアンが玄関を見る。メムがリーゼさんともう一人を連れて出てくる。


「ご無事でしたか。補佐官殿。」


 俺がそう声をかけるが、


「彼が負傷しているの。護衛兼操縦役よ。」


 取り急ぎリーゼ補佐官と護衛をドラキャに乗せる。


「急ぎ脱出しましょう。しかし、あの師弟は?。」


「煙幕弾で視界を奪って敵を混乱させて倒しにかかっているわ。」


 ミアンがそう答えてドラキャを走らせる。


「一旦その地点まで走らせます。ニシキさん、戦闘準備を。」


 ミヤンがそう言って指示を出す。


「俺もメムも大丈夫だ!。いつでも戦闘可能。」


 俺はそう答えて拳銃を構える。メムが狭目のドラキャ内で体を丸めた後、伸びをする。

 廃村の出入り口に近づくとミヤンがホイッスルみたいなものを吹く。ドラキャは停止する。

 煙幕の中からヘルバティアが現れ、ついでディマックさんが現れる。煙幕の効果はなくなりつつあるのか薄くなってきている。


「おい、あそこだ。」


 黒覆面の敵が3名ほど俺たちを追跡しようとする。俺はドラキャから降りて駆け寄ってくるヘルバティアとディマックさんが乗り込むのを見ながら追跡しようとするその3人の黒覆面に向けて


ドシュドシュドシュドシュドシュドシュ


 3人に【火球】の魔弾が全弾命中、服が黒焦げになる。


「よし出せ!。」


 俺がドラキャに乗り込みながらそう言って、半ば身を乗り出した格好になる。

 そのままドラキャは補佐官一行を乗せてこの廃村を走り去っていくことになった。



「ご無事でようございました。先生。」


 ドラキャ内でディマックさんがリーゼさんにそう声をかける。


「よくいる場所に見当がついたわね、教え子さん。自ら捜索隊を率いてくるなんて、仕事の方はどうしたのかしら。」


 リーゼさんはディマックさん、本名マックトッシュ・マーグレノアさんをどう呼ぶのか気にはなったが、そういう呼び方をするのか。なるほど。


「では、あたいの別宅で一休みしてから王都に戻ることでよろしいでしょうか。」


「いいえ、イチノシティに行きますので。教え子の仕事ぶりをしっかり見学させてもらうわよ。お忍びで。」


「あの、状況が状況ですので……負傷者もいますし、王都に戻った方がいいのじゃないでしょうか。」


 ずいぶんディマックさんの旗色が悪そうだが、


「いいじゃないの、お忍びで現状の視察を予定していたのだから。イチノシティ組合本部長としてこのリクエストに応えてみなさいよ。ちょうどいい機会だし。」


 リーゼさんが押し切りにかかる。そして静かにディマックさんの耳元に何か囁きかける。


「え、……いや、………はい、はい、わかりました。」


 ディマックさんは囁かれて顔色をいろいろ変換していたが、リーゼさんの要求に折れてしまったようだ。


「では、……しばらく消息不明にします。イチノシティ方面へ。あたいの別宅へ走らせてくれ。地図はこれだ。」


 観念したようにそう言ってミヤンに地図を渡し、大きくため息をつきがくりと首を垂れる。


「もしかして、この襲撃を利用するつもりですか。……リーゼさん。」


 会話で補佐官は言わないように皆と話はしているからリーゼさんと呼ぶが、


「あら、いい読みね。その通りよ、ダンちゃん。」


 まさかと思ったが、結構リーゼさんも怒ってらっしゃるのか……。


「しかし、師匠はすごいですね。こちらの……リーゼさんの教え子だったのですね。」


 そう言ってヘルバティアが目をキラキラさせて師匠を見つめる。


「ま、まあな。いい先生だったのさ。」


 かなり無理にリーゼさんを持ち上げている感じがするが。先生と教え子というよりは何となく蛇とカエルのような関係性を感じる。もっとひどく言えば天敵と害虫みたいな感じか。


「先生だった、……なぜに過去形なのかしら。」


 にこやかにリーゼさんがディマックさんに詰め寄る。


「あ、いや、今のお立場が…お立場ですので、そう言っただけですから。先生です。はい言い直します。」


 多分脳内で相当に冷たい汗をかいたような回答だった。



 中で負傷者の護衛の手当てをしながらドラキャはイチノシティに向けて進む。日が暮れる頃にはイチノシティの街に入り、組合本部長兼ディマックさんの別宅に進む。


「よし、ここだ。じゃあ入ってくれ。」


 ということで、ドラキャから降りて別宅におじゃまする。


「よし、部屋割りだ。あたいの部屋の隣に先生が、その隣に3姉妹たち、一番端はニシキ君とメムが使ってくれ。まあそういっても机と椅子とベットぐらいしかないからな。この負傷者はあたいがこれから療養所に入れておく。そのついでに夕食を買ってくるからな。その突き当たりで灌水浴室を使って体の汚れを落としてくれ。」


 そう言って慌ただしく各部屋に案内していき、そのままドラキャを操縦して負傷者を連れていく。

 残った俺たちとリーゼさんは顔を見合わせる。


「今日は、救助ありがとうね、みんな。」


 リーゼさんは少しホッとした表情で俺たちにお礼を言う。


「いえ、恐縮です。」


 ヘルバティアが代表してお礼を受けるが、緊張した表情である。

 俺はあえて聞いてみることにする。


「襲ってきたのは、政治的対立をしてる連中の差金ですか、宰相の進める政策に反対しているという。そしてこれを奇貨として、その対立する相手をカウンターでやり返そうと考えているのですか。」


 俺以外のパーティメンバーは唖然とする。


「あら、かなりはっきり言うのね。……まあそれができるならそれがベストかもしれないけど、あくまでも教え子の仕事ぶりの見学よ。それに各街の情勢を視察するのが目的よ。それ以上でも以下でもないわ。」


 リーゼさんが今まで見せたことのない気配を漂わせながら俺に答える。


「では、組合本部長からの特別直轄依頼は継続ですね。そうでしょ、ヘルバティアさん。」


「そうか、依頼は……捜索と護衛だからね。」


「対象者の意図を確認しましたので。失礼しました、リーゼさん。」


「フフフフフフ、面白いわ、じゃあ意地悪のお返しに。今夜は3姉妹と一緒に女子会をしましょう。ダンちゃんとメムちゃんは隅の部屋で静かに過ごしてね。」


 ああ、ハブられる予定になってしまった。

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