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138弾 この意味を知れば少しショックだろう?

「メム様、まだ状況を完全に把握したわけじゃないですから、そう言われても。それに双方の両親が揉めて、双方の街の警備隊も揉めたとなると、そう一朝一夕で、メム様のリクエストに応えようとしても、……まだ妙手が浮かびません。」


「何、ダンは血も涙もないのね。そんなのあなたの力で強引にでも暴れまくって、障害となっている双方の両親、双方の警備隊を薙ぎ払えばいいのよ。このパーティを使ってでもやるべきことよ。」


 えらい物騒な発言だが。とりあえず顔を近づけたメムを一旦引き離す。


「いや、メム様。強引が過ぎます。この3姉妹を巻き込む必要はないでしょう。」


「いい、こういう式典はこの婚約した男女が主役なの。せっかくの晴れ舞台を両親だの職場だの警備隊だの外野がさえずって潰すわけにはいかないわよ。そう思うでしょう。ヘルバティア、ミアン、ミヤン。」


 だから、そこで3姉妹の同意を求めるな。


「まあ、華燭の典の後のお披露目は最大の見せ場ですから。特に花嫁には最大の晴れ舞台、それが潰されるのは……。」


 いやー、乗ってこないでー。ミヤンさーん。


「ええ、花嫁のための晴れ舞台をなんとかしたいですね。」


 ミアンさんもー。やめてー。


「そうね、今聞いた限りじゃ、花嫁花婿に何の罪もなさそうだし。私たちの将来も含めて考えればね。」


 何を含めてるのー。長姉として双子妹を抑えようよ、そこは。


「いい、ダン。一世一代の晴れ舞台。潰すわけにはいかないわ。これは女の尊厳をかけた戦いよ。それともダンは男として、そんな尊厳を取るに足らないものと思っているのかしら。」


 一旦引き離されたメムがまた前足を俺の膝に乗っけて、顔を思いっきり近づけて激しい気迫を全面に出しながら俺に圧をかける。その傍らで、3姉妹が小さく拍手喝采をしている。というか、なぜか3姉妹がメムの発言に同意しちゃってる……。


「まあ、女の尊厳も大事ですし、男女関係なく尊厳は大事ですが……。というか、華燭の典にメム様がこだわるのは、一体どういう了見なのでしょうか。」


「り、了見というか、せっかくの華燭の典、やらないなんてもったいないじゃん。」


 む、少し怪しいのだが……。ふと思い当たるところがある。


「……ふむ、もしかして、以前にローウェルさんから婚約の話を聞いた時、華燭の典で招待されて大量のご馳走が出ることと、それを大食することを想像していましたね。今、本音はそれが目当てで華燭の典を実施させよう、なんてこれっぽっちも考えていないですよね。」


「も、もちろんよ。尊厳よ、尊厳のためよ。」


「ふーん、あ、そうだ。お三方は、華燭の典ってあっさり終わるものなのですか?。この式典に疎いもので。」


 3姉妹に尋ねる。


「うーん、まあ、一般的には夫婦誓の儀式を行います。立会人、仲人、介添人が見守る中で夫婦として互いにブレスレットを付け合います。その後、夫婦披露目の宴になりまして、そこで料理や飲み物が振る舞われます。この宴を盛大にやるか質素にやるかの違いはありますが。」


 ヘルバティアが答えてくれる。


「盛大か質素かというのは?。」


「極端にいうと、大量の料理を出すか、高品質な料理を出すかの違いになります。」


 今度はミアンが答える。


「まあ、夫婦の考え方がそこに出るのかもしれないですね。」


 ミヤンが補足で説明してくれる。


「じゃあ、大量かつ高品質な料理を出すようにしましょう。華燭の典をそれにしましょう、いいわね、ダン。」


 メムが口を挟んでくる。


「へー、メム様、さっき尊厳のためよ、と力説していましたが。」


「あ、いや、そ、尊厳のためよ。そのために大量かつ高品質な料理を出すような華燭の典にするのよ。」


「あれ、大量のご馳走が出ることと、それを大食することは全く考えていないって、さっき言いましたでしょう。嘘がバレバレですよ。メム様。」


 メムがしまったという表情をする。


「……やっぱり、目的はそれですか。いやし過ぎますよ。メム様。最低です。ただのタカリじゃないですか。」


「………バレりゃーしょうがねえ。おう、そうだよ。華燭の典をやろうとするのは私の欲望を満たすためよ。いいじゃない。この異世界にきて、苦労してるのよ。こういう機会にこういう式典での料理を食してみたいの。ねえ、何がいけないのよ。」


 この元女神猫、思いっきり開き直りやがった。


「動機が不順すぎです。全く、女の尊厳なんて旗印を振りかざして、本音はただ美味い食事を食い漁りたいだけじゃないですか。それでも地球の女神様ですか。」


 俺がそう言って、メムに怒りと呆れをぶつけた瞬間、3姉妹が爆笑する。

 俺とメムはじっと爆笑する3姉妹を見つめる。


「この会話に笑いの要素ありましたか、メム様。」


「さあ、わからないわ。」


 少しすると3姉妹は爆笑を抑えて、落ち着きを取り戻す。


「ああ、ごめんなさい。華燭の典の話にチキューという言葉が出てくるのだから。」


 そういえば前もチキューで笑いまくっていたが……。


「あのー、そろそろ、そのチキューの意味を教えて下さい、お願いします。笑いの意味がわからないので。」


 俺は3姉妹に頭を下げて、意味の説明をお願いする。


「そうね、まあ、チキューの意味というか俗な言い方になるのだけど、華燭の典を終えた夫婦の初夜用の寝床といえばいいのかしら。」


 ヘルバティアが笑いをこらえながら説明する。


「初夜用の寝床には、……ちょっと恥ずかしいことを言うのですが、夫婦で楽しむものを用意するので、……その癖が出るというか……。」


 笑いと恥ずかしさをこらえてミアンがさらに説明する。


「……さらに、そのチキューの上で大抵花婿が花嫁に土下座して従属を誓うのだと言いますので……。」


 ミヤンが顔を赤くしながら思いもしないことを言う。


「え、じゃあ。チキューの意味って、もしや。」


「ええ、初夜の寝床のことを言い、さらに皮肉な意味を込めて、花嫁に従属した花婿を意味します。または、女にいいようにされている男のことも言うようになっています。」


 ヘルバティアがこの言葉の意味を教えてくれた。


「じゃあ、俺たちが地球と言うと、何てこった。」


「ええ、女にいいようにされている男ばかりな異世界に聞こえてしまうのです。」


 ミアンがある意味トドメを刺す。

 おい、それは、ちょっとショックだ。実際の地球は全ての地域で男女平等ではないが。

 まああれか、俺たちが『地球から来た異世界人』なんて言うのは、P◯◯◯ S◯ARみたいな文字を胸プリントされたシャツを着て英語圏を歩く日本人みたいな感じか……。

 メムもその説明を聞いて、口をあんぐりさせる。


「これじゃ、なんていえばいいのかしら………。」


「ふむ、この意味を知れば、地球と言う言い方が使えないですね。」


 やはり今後どう俺たちのことを説明するか、問題は増えたようだ。


「それはいいとして、本題に戻りましょう。ダンの考えが浮かぶことを期待しているから、華燭の典になるようにしましょう。駆け落ち策は最後の手段と言うことで。」


「おいー、ずいぶん無理矢理に俺に丸投げしましたね。」


 こんな強引に俺へ丸投げをしてでも、メムは華燭の典でのご馳走に未練が大有りらしい。


「ま、まあまあ、女性の尊厳のためにもメムちゃんのためにも、ニシキさんに協力しますから。」


 ヘルバティアがフォローにかかるが、


「それに、パーティとしてこれをやってみると言う言い方もできますし。」


 ミアンは意外に強引にパーティとしてのクエストみたいにしたいようだ。

 ミヤンが大きくうなずく。どうやらミアンに賛成のようだ。

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