134弾 少しはヒントになるだろう?
「そうですね、ミヤン。ああ、まず席に座りましょう、ニシキさん。」
そうミアンに言われて俺は席に戻り着席する。
「で、変わった石というのはどういうことですか。」
着席した俺はミヤンに石について聞いてみる。
「ミアン姉さんも見たことあるのだけど、宝石収納箱に変わった多面体の石だけが入っていたなあ、というのを思い出したの。確か、冒険日誌のこの部分に、ね、この石のことが書いてあるのじゃないかなあ。」
そう言ってミヤンがその部分のページを開いて、俺に渡す。
「ふむ、ふむ、うーん。」
『このダンジョンにのみ存在するのか、このダンジョンは噂には聞くが、一定条件を満たすと消えるダンジョン内に、変わった形の石がある。特殊な形の石だ。なおこのダンジョンの出現条件もはっきりしたことは分からない。偶然見つけたが、このダンジョンを踏破するには準備と運と力の判断が必要になる。なお偶然この石』
この先はページが破られていたのだった。
「もしかしてミヤンさんは、この部分に書かれている『特殊な形の石』に何かヒントがあるかもと思い当たったのですか。」
俺が聞いてみる。
「ええ、うーんと確か地下の隠し部屋か、両親の部屋だったわね。ちょっと探してみる。」
「ミヤンは地下を、私は両親の部屋を探すわ。」
双子妹がそう言って、各々で目的のものを探しに行った。
「冒険日誌の切り取られていない部分を確認しましょう。ダン。」
メムが新たな提案をしたおかげで俺も頭が冷えてきている。
「一気に進めばいいけど、そうそう上手くいかないでしょう。ニシキさんの気持ちはわからないでもないです。」
ヘルバティアがそう言って俺を慰める。
「まあ、こうなると3姉妹とパーティを結成するしかないわね。ダン。でないと手がかりは、彼女の両親の残したものを解析しないとダメそうだし。」
「うーん、そうなるか……。よし、明日組合本部と警備隊に行っていろいろ情報収集してみよう。」
「じゃあパーティを組むことは受け入れるのね。」
メムがそう言ってニヤリとし、
「これでパーティ結成に一歩前進ね。」
ヘルバティアが手を握り拳にして両手を小さく上げる。
「まあ、今日はこの冒険日誌を読んでみよう。」
俺がそう言ったところに
「ねえ、これだったかしら。」
「これだったような気がするわ。」
ミアンとミヤンが各々そう言いながら戻ってくる。ミアンは正十二面体、ミヤンは正二十面体の石を持ってきたのだった。それらは、黒色をしているが輝きがなく、光に当てても輝きも反射もしない。
「むーん、………あれ、これって……。」
俺はそう呟き、大急ぎで自部屋に戻ると、カバンの中にしまったままの石を出して、そのままリビングダイニングに戻ってくる。
「石の大きさ的には小さい魔石と同じくらいでしょう。こんな色と形の石を俺も持ってましたね。」
戻ってきて正四面体のその石をテーブルに置く。
「色と光沢はよく似てますね。」
ミヤンがそう見た感じを述べるが、ミアンは
「むしろ似てるというより色と光沢は一緒じゃないかしら。」
「大きさ的には5サンチマータルくらいね。確かに小さめの魔石と同じくらい。」
ヘルバティアも見た感想を述べる。
「ニシキさん、これはどこで。」
「いや、依頼の最中に……拾ったもので。」
俺がすかさずそう答えると、ミアンが一瞬怪訝な顔をするがすぐに元の表情に戻る。
「うーん、こんな綺麗に一辺が揃って同じ長さなのは見たことはないわ。」
大きさを目測していたヘルバティアがそう言って首を傾げつつこれらの石を凝視する。自然が織りなしたこれらの石の正多面体の造形に、彼女は不思議な魅力も感じているようだ。
結局昼食まで、戻ってきた冒険日誌を読みながら、3姉妹とあーだこーだと記載内容について確認していた。
「ところで、パーティを結成するのなら、茶店はどうするのです。」
そんな昼食中に、パーティの結成について、俺は3姉妹に尋ねる。
「正直、私たちの両親の行方不明に関する情報を集めるための、カモフラージュな部分はあったから開けていたところはあるけど、ニシキさんとパーティを組むのならしばらく閉店ね。長期になるかもしれないでしょうけど。」
ヘルバティアが、ある程度考えていたのか方向性を示す。
「まあ、店の運営って結構難しいのです。仕入れをしたり客単価考えたり、そこに情報収集をしたり裏ギルドの対応をしたりすると、茶店経営や開店もままならなくて。」
とミアンがため息混じりに言い、
「ティア姉さんが、このグランドキャットに夢中になったりしなければもう少しマシな運営ができたかもしれないけど…。」
と言ってミヤンが長姉を横目でにらむ。
「なによ、このメムちゃんに目をつけたから、こうやってニシキさんという方が釣れたのじゃない。私の眼力にも敬意を払ってよね。」
いや、どっか間違っている。というか俺は魚か。
昼食を終えて後片付けも済ませて、また夕食までこの冒険日誌と絵と変わった石をかたわらに置いて、さらに調べを進めようとすると、玄関をノックする者が現れる。
「おい、あたいだ。開けろ。様子を見にきたぞ。」
ディマックの師匠がやってきたのだった。